不穏
七歳を過ぎた頃から、俺たちは「子ども」から「数」になった。
俺たちの世代は開拓村の第一世代。
この村が続くかどうかを決める、労働力の予備。
荷運び。見張りの補助。畑仕事の本格的な手伝い。
俺は、特別に優秀というわけじゃない。
力も、速さも、並。
魔力は少ない。これは、生まれつきだ。
貴族の子が持つような量は、平民にはほとんどない。
だが、出来ないわけでもない。
手順を覚えるのは早い。一度見た作業は、忘れにくい。
《残す》力が、静かに役に立っていた。
前世と同じだ。
突出はしない。だが、足を引っ張らない。
前世の俺は、それでシルバーまで行った。
今世でも、同じだった。
村は、安定しつつある。
「次の子どもを考えてもいい頃だな」
そんな話を、大人たちがする。
だが同時に、
噂も増えた。
「南の村が、やられたらしい」
「ヴァルカーン諸邦だ」
「古律教徒の軍だって」
英雄の話も出る。
「祝福持ちがいるらしい」
「軍を率いてるとか」
俺は、黙って聞いていた。
嫌な予感は、ある。
だが、それはまだ輪郭のない不安だ。
この村は小さい。目立たない。
通り過ぎるだけなら、何も起きない。
そう、思っていた。
* * * * * * *
十歳になる年。父が、いつもより長く槍を磨いていた。
母は、祈りの回数を増やした。
子どもたちも、どこか落ち着かない。
この村が、危うい均衡の上にあることを、
俺だけが理解しているわけじゃなかった。
ただ。
誰も、それを口にしなかった。




