位置
十五歳。
それは、区切りだった。
身体は、ようやく冒険者の端くれと言える程度には動く。
が、力はまだ足りない。
技も、未熟だ。
それでも——。
「今日は、お前も前寄りだ。」
ロランの一言で、隊列が変わった。
先頭は、マルセル。
二番目にロラン。
三番目に、俺。
後ろにピエール。
最後尾にヴァンサン。
いつもの隊列だが、一歩、前。
それだけなのに、背中が少し寒い。
(……前世でも、こうだったな)
シルバーに上がるかどうかのあの頃。
前に立つ機会が増えた時の、あの感覚。
ダンジョンの空気は、相変わらず冷たい。
マルセルが、歩きながら言った。
「坊主。」
「はい。」
「今日は、口出していい。ただし、判断はするな。」
分かる。
見る。
伝える。
決めるのは、上だ。
「了解です。」
少しだけ、大人扱いされた気がした。
奥から、気配。
「……足音、四。重い。」
マルセルの声。
俺は、すぐに続ける。
「通路、狭いです。横に出られる場所、三歩先」
ロランが、短く頷く。
「受ける。」
戦いは、連携だった。
ロランが受け、
ヴァンサンが焼き、
ピエールが支え、
マルセルが締める。
俺は、叫ばない。
ただ、見て、伝える。
「後ろ、一体。」
「確認した。」
声が重なる。
戦いは、無事に終わった。
「……悪くねぇ。」
マルセルが、ぽつりと言う。
「ガキじゃなくなってきたな。」
それは、褒め言葉だった。
ロランが、俺を見る。
「前には、まだ立たせない。」
「はい。」
「だが、背中は預けられる。」
胸の奥が、熱くなる。
ピエールが、静かに言った。
「責任が増える、ということですよ。」
ヴァンサンが、短く言う。
「……戻れる位置も、忘れるな。」
分かっている。
前に出ることと、引くことの、両方。
ダンジョンを出た後、空を見上げた。
灰色の雲。冷たい風。
(俺は、まだ未熟だ。……だが、)
並べる位置には、立てた。
灰鴉の背中は、まだ遠い。
それでも。
追いかけるだけの背中から、
後ろから支える背中へ。
それが、十五歳の俺の立ち位置だった。




