図々しくても
北の関所からさらに半日。石畳と建物が増え、空気が変わる。
人は多い。だが、活気ではない。
皆、どこか余裕がない。
彼らの後を着いてしばらく歩く。
「ここが、孤児院です」
ピエールが立ち止まった。
古いが、手入れはされている建物。中には、すでに多くの子どもがいた。
——嫌だ。
胸の奥が、強く拒否する。
孤児院に入れば、母が、子どもたちが二度と見つからない気がした。
「……俺は」
言葉が、震える。
「ここに残るのは、嫌です」
昨夜聞いた話は覚えている。希望は無いのかもしれない。それでも。
「正気か?」
マルセルが、片眉を上げた。
「ここなら、生きられるぜ?」
「生きるだけじゃ……。」
言葉が、続かない。
「荷物持ちでも、囮でもいい。何でもします。連れてってください。」
即座に、ロランが首を振った。
「無理だ。俺たちは冒険者だ。子どもを連れて歩く場所じゃない。」
ピエールが、一歩前に出る。
「……お気持ちは分かります。」
「ですが、今は休むべき時です。」
その敬語が、逆に突き刺さる。
「……一人に、なりたくないんです。」
ロランは、黙った。
「今日は、ここだ。」
「話は、それからだ。」
ロランは孤児院の院長に事情を説明し、俺を引き取るよう依頼している。
院長は困った様子だが、ヴァンサンから寄付として金銭と夕食の食材の引渡しが提案されると、依頼を受け入れたようだ。
俺は孤児院の中へと案内され、ロラン達はダンジョンでの活動を報告しにギルドへ行き、夕方頃に帰ってきた。
夕食はロラン達が持ち込んだ食材で、パンとスープが出された。他の孤児たちが喜んでいる様子から、普段はもう少し具材が少ないか、パンが少ないか、あるいは両方か。
食事を終わり、俺は孤児たちと共に大部屋で寝る事となった。
ロラン達は宿が空いて居なかったとの事で孤児院の敷地にテントを張り、そこで寝るようだった。
寝床の中で俺は置いていかれるのではないかと耳を傍立てて居た。
頭の中には父の手の感触、母の叫びが残る。
俺は、一人声を殺して泣いた。




