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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第6章 娯楽と快楽の街ベルフルーシュ
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第91話 犬猿の仲







アイラはその日の夜は珍しく酒は控えめに飲んでいた。


宿の外を時折見ては酒をちびちび煽っていた。


同居者は心配ないと言っていたが、どうしても気になるのだ。2人は何度もシミュレーションして対策していたがそうでなくても相手はあのギャンブラーカイザックなのだ。


もし負けて身ぐるみ剥がされたら慰み者になるのではと気が気でなかった。


すでに小一時間経ち、そろそろ様子を見に行った方がいいとベッドから降りたときドアがガチャリと開いた。


「クロー!良かった無事────」


最初に少女の姿が見えて安堵したが、その後ろに続く男にアイラの全身が凍りついた。


「か、カイザック?!」


「ここがお前の宿……げ、筋肉女!」


同居者は彼らの顔を交互に見た。2人の関係をよくわかっていなかったが取り敢えず彼を中に押し入れドアを閉めた。







「おいおいどういうことだよ!カイザック連れてきたのか?!」


「ああ」


「俺も聞いてないぞ……美人がいるって聞いてたが」


「ん?アイラは美人だろ?」


カイザックは一緒に来る条件に『美人を紹介しろ』を付け加えたのだ。しかしそれが既知のしかも嫌っている人間だと分かり見るからに機嫌が悪くなった。


クラウディの方は言われて当然アイラを紹介しようとしたのだった。彼女は性格は少し難があるが容姿はかなり良いと思っていたのだ。


カイザックとの勝負の結果や決めたことの説明を彼女にして、『美人』ワードに一瞬笑みが浮かんだもののまたすぐに不機嫌となる。


「こいつが、お前のいう紹介相手なら俺は帰るぞ」


そう言うカイザックはタバコに火をつけた。しかし素早くアイラがそれを取り上げた。


「外で吸え。なに?こんな女ったらしのダメ男、私だってごめんだね」


お互いそっぽを向き、一触即発状態だった。クラウディは2人を見て困ったなと頭を掻いた。一体2人に何があったというのか。


このままでは情報屋は帰ってしまうだろう。少女はアイラに何とかしてもらおうと目を向けたが、ぷいと目も合わせてくれなかった。


「カイザック……なんか他に条件ないか?」


「そいつを外すか…………そうだな基本的に一緒に行動するが俺の行動の邪魔をしないこと。娯楽も自由にさせろ。金はパーティ分配の他に定期的に払うこと。これなら呑んでもいい」


「クロー、こいつはやめた方がいい。勝ったんならさっさと情報聞いて帰せよ」


────まあ初日で仲良くできるわけもないか……


「カイザック……ちょっと」


少女はカイザックを手招きし一緒に外に出た。


そのまま宿の外に出るとカイザックはタバコに火をつけ一口吸った。


「アイラは説得するから一旦戻ってくれ……また迎えにいく」


「あいつを弾いた方が早いと思うぜ?……まあいい、今日は一応負けたし大人しく帰るとする」


そういうと手を差し出した。クラウディは握手かと思い握ったが、ちがうと振り払われる。


「あのカードゲームのやつ寄越せ」


少女は荷物からカードを取り出して彼に渡した。もういらないものだ。ただ本物のトランプのようにマーク入りの54枚入りだ。本当はこちらを使うつもりだったが長引きそうだったので急遽新たにショートの方作って使用したのだった。


カイザックはカードの入った袋を受け取るとニヤつき、じゃあなと手をヒラヒラさせて帰っていった。


クラウディは見送った後にアイラのいる宿を見上げた。


────どうするかな……







カイザックは正直、現れた仮面の男に情報を与えようが、それがどう影響しようがどうでも良かった。


ただあの賭博場での話を聞き単純に興味が湧いたのだ。イカサマ師ナナイロを完封した頭がどんなものか。


カイザックの原動力は遊びであり、それはリスクを伴うほど興奮する。ただ最近は雑魚ばかりで退屈な日々を過ごしていた。なんの捻りもない雑魚ばかりだったのだ。


彼はテントに帰り、テーブルについた。気づいた遊女のリニアとナキがそばに来るが1人になりたかったため休んでいるよう追いやる。


不満そうではあったが彼女たちは自分のテントへと入っていった。


────クローって言ったかあの男……。


仮面の男の名前を頭で呟く。始めは女かと思ったが仕草、声、言動全てが男だったのでおそらくそうなのだろう。


しかし触れた手はタコが出来ていたものの、他の部分は女のように柔らかかった。


彼は首を振った。


────今はそんなことはどうでもいい。 


問題なのは非常にスリルのあった戦いだったと言うことだ。


イカサマにイカサマで返すなんてとんでもないやつだった。


だが、最後のゲームでは傷を見つけてダミーを作ったまでは良かったが相手の爪が甘かった。


────傷は2箇所つけてたんだよなぁ、はは


もっと早めに気づいていれば分からなかっただろうなと笑うカイザック。


「まあいいか」


楽しめればそれで良いのだ。退屈ほど苦しいものはない。


カイザックはもらった袋を開け中身を取り出した。


「?!」


それは例のカードとは少し異なり、12種の絵柄、4つのマークと2つの色で分かれた1〜10までのカードが4枚ずつあり全く同じカードがない。枚数は52枚。例の『joker』も2枚あり全部で54枚だ。


────やってくれたな


このカードの扱い方が気になりどうしてもあの男に会わなければならない理由が出来た。


しかし自分の発言故にこちらから動くわけには行かず、退屈を紛らわすように酒を仰いだ。






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