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第8話 謎の老婆⑤





「今は1603年……だったと思うんだけど」


とある日の夜、クラウディが歴史について問うと老婆は曖昧な返答をした。


「……思う?」


「あ、いやしばらく外なんか出てないから。ほんとこの間出たのが久しぶりでね」


────俺が死にかけたときか……


本当に奇跡に近かったんだなと呟くと、老婆はあたふたした。


「ごめんね、嫌な事思い出させちゃうね」


────そのセリフがまた思い出させるんだが?


「……久しぶりっていつぐらいだ?」


クラウディはため息をついた。


「んー……10年くらい」


「…………」


「…………」


「え、飯とかはどうしてたんだ?」


「だって私魔法使いだから」


────いやなんでもできるわけじゃ…………出来るのか?


少女は今思えば確かに老婆はいつも家におり、どこかへ出かける姿は見た事がなかった。食料やらなにやらまで魔法で本当に何とかなるのだろう。


フロレンスは一体何者なんだろうか。少女の頭にふと疑問が湧く。チラリと老婆に目をやるとニコニコと苦笑していた。


────今は詮索はやめとくか……


「了解、今は1603年()()ね」


「ごめんね……」


「じゃあ貨幣の価値を教えてくれるか?」


クラウディはポケットからいくらか持ってきていた貨幣の一部をジャラジャラと出した。大小様々でどれがどれかわからない。


それを見た老婆が結構ありそうと指で並べながら数えた。


「全部で2万1109ユーンね」


「それはどのくらいの価値だ?」


老婆は紙とペンを持ってくると簡単に書き記した。


クラウディはそれを受け取ると声に出して読んだ。


銅色を1ユーン

銀色を100ユーン

金色を10000ユーン


銅硬貨50枚でリンゴが一つ買える。

宿は1000ユーンあれば1泊出来る。


────円換算で行けそうだな


「多分こう」


「……多分?」


「いや最近出てないから」







「最終的に目指すのは王都がいいと思うわ。色んな人がいるし資料も山のようにあるから」


ある日地理について聞いているとフロレンスはそう答えた。


目の前に広げられた世界地図の中心を指し示す。


「一気に向かうのは流石に距離があるから取り敢えずこのローランドルを経由して────」


フロレンスは事細かに経路を言い、少女は紙にメモしていく。字を書く際は日本語を書いたつもりが勝手にこちらの世界の言語となった。少女の身体の記憶とでバグってしまったのか、はたまた別の力が働いていたかはわからないが、ありがたいとは思ったが別段気にしなかった。


「あ、そうそうこれ」


一通り喋ると一息ついた時にフロレンスが思い出したように自室に行き、薄い手のひら大の薄い板を持ってきた。


「これは?」


「私の身分証の一つよ。貸したげる」


「……偽装か?」


「あら失礼ね!書いてある名前とかは違うけどちゃんと正規に作ったものよ」


薄い身分証はかなり年期が入っており、妙なマークと『ルーラル・クロー』と名前が入っている。


「それがあると通行料が安くなるし、何かと守ってくれたりするのよ」


────通行料取るのか……面倒だな


「助かる……いつか返しにくる」


「ええ……ゆっくりでいいわ」


彼女らはお互いすっかり打ち解けており、時折冗談を言ったり老婆がゲラゲラと笑ったり、少女が不機嫌になったりの日常をしばらく楽しんでいた。


いつか終わりが来る日を待ちながら。

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