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第70話 道すがら







ベルフルーシュまでは分岐点から徒歩で7日かかると言っていたが、クラウディは小川を見つけるとそれを辿って街道から外れ、広い河原にしばらく休む事にした。


分岐点からまだ1日も進んでないが、自身の体調と相談してのことだった。


月経がまだ終わってなく、辛かったのだ。


────あと3日くらいか?


ラントルたちの話では大体月経は1ヶ月周期で来るものらしい。しかしクラウディはおそらく不順らしく次来るのが1ヶ月後か3ヶ月後か半年後かわからない。


フロレンスの袋に入っていた薬には痛みや気持ち悪さを和らげる効果があり、まだ数があったが耐えられるようになってからは使ってなかった。貴重な薬に違いなくできるだけ使いたくはなかったのだ。


結局体調が戻るのに5日かかってしまい、ようやくクラウディは出発した。その間モンスターに遭遇しないかヒヤヒヤしたがそんなことはなかった。


街道まで戻ってそのまま進んでいく。


「…………」


辺りは静かでモンスターの気配もない。街道を歩く少女の足音だけが聞こえていた。


いつもなら荷馬車に揺られながらラントルたちが談笑する声が聞こえて来たものだ。


「…………静かだな」







1日かけて森を出たところでクラウディは野営する事にした。


いつからか出来なかった鍛錬もそこそこに行い、焚き火を消し、迷彩になるミラージュクロスを被って眠りについた。


翌日は日が昇ると軽く食事をとって出発した。


森は抜けてしばらく眺めのいい草原が続く。途中に丁度いい岩がありそこに座って休んだ。


その際にふと『プリムスライム』のことが思い浮かんでインベントリから取り出した。前回は様子がおかしかったのでそれ以降は出してなかった。


スライムは変わらず半透明でいくつも気泡を浮かべていた。今は異様に震えたりはしていない。


少女は瓶の蓋を開けてスライムを地面に落とした。


スライムはアメーバのようにウネウネと蠢いている。簡単な指示を出すとそちらの方向へと向かう。


草を食べるかと思ってそちらの方へ誘導すると体内に取り込みながら移動していった。


その様子をなんとなく眺めながら岩に寝そべる。


アラウたちはもうエイギレストへ到着しただろうか、モンスターに襲われていないだろうか等頭をグルグルと巡った。


────ラントルはきっと良い魔法使いになるんだろうな


そうやって姿を思い浮かべたりしていると、『プリムスライム』が何か形取ろうとしているのが目に入った。


「もしかして……」


少女はいつかのイメージトレーニングで思い浮かべていた元男の姿を頭に思い浮かべ、スライムにその姿になるよう命令した。


するとスライムが激しく蠢きやがてその元男の姿を模った。ただ緑色の半透明なのは変わらない。 


クラウディは剣を片手に握らせ自分を襲うように命令する。するとスライムは動き出しイメージ通りに剣を振るった。しかしそのスライム剣を受けると弾けて身体にスライムの液体が飛び散った。


────さ、最悪


ボダボタと身体からしたたるスライムにグロッキーになる少女。


スライムに元に戻るように命令し飛び散った液体も回収させる。


まだまだ試行錯誤が必要だなとスライムを瓶に戻してインベントリにしまった。


そして剣を拾おうとした時、ブラッドと戦った時のことを思い出した。


Aランク冒険者を圧倒した力。もしかしたら火事場の馬鹿力というものなのかもしれないが、しかし刀身は確かに光っていた。


あの力を扱える事が出来ればこの先きっと役に立つはずだ。


────剣に何かいるのか?


剣のつかを握り目を閉じて意識を刀身に集中する。


────刃を白く……いや


少しの間刀身を白くするイメージをしたが、そうではないと深呼吸した。


────力だ……力を欲する


見えない力の流れを刀から腕に、腕から体幹、全身へと巡るイメージをした。


耳鳴りがし、何かが全身を巡る。クラウディは湧き上がる力に目を見開いた。


剣を見るとシミターの刀身が白く光っていた。


『反射で使え』


確かに聞こえた声。クラウディはその場で飛び上がった。ざっと5mは飛び上がり、確かに身体能力は向上しているようだった。剣の振り、斬り返しも驚くほどに早い。


元男の時から使えていたのだろうかと少女は記憶を探ろうとした。しかしやはり頭痛が邪魔をし、剣の力が解けた。刀身が輝きを失い倦怠感が押し寄せる。


────この疲労感やばいな……


少女は息を切らし、まともに動けなくなる力に多用は出来そうになかった。最後の手段として使うのがいいだろう。


切り札はあればあるほど心強い。剣を鞘に納めると岩にもたれてしばらく休んだ。


そしてクラウディは体力が戻り、休憩が終わると再び歩き出した。

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