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第60話 見張り……








「見張りは1人3時間だ、交代で行う」


冒険者男2人と元男の少女は火を囲って見張りについて話していた。


ブレッドが言うには依頼者と女性は基本的に見張りさせず休んでもらうとの事だった。特に女性には色々とやる事があったりして大変なのだとか。


何かトラブルがあったのか聞いたが苦笑いしただけでAランク冒険者は答えなかった。


今は執事は個人のテントを張り、ローレッタは荷車で休んでいた。ラントルは荷車の外でこちらを眺めている。


「最初に俺、アラウ、クローの順番でいいか?」


「ああ」


「わかりました」


日本でいうじゃんけんはなく、ここではコインを投げて表が出た回数の多い順から決めた。運の良さというので縁起を良くするらしい。


「ちょっと……」


テントに向かおうとするとラントルが近づいて肩を掴んだ。クラウディがなんだと振り返ると片眉を上げる。


「なんだじゃないでしょ。男どもと寝るつもり?」


「?」


「いやいや、あなたはいくら強くてもか弱い女の子!あいつらはケモノ!」


首を傾げているとラントルは鼻息を荒くした。


「忘れたの?酷い目にあったでしょ?!」


思い出させないでくれと思いながらも男たちを見た。ブレッドは武器の手入れを始め、アラウは荷物をまとめている。特に少女を気にしている様子も見られない。


それにあの時の状況は相手がいかにもやりそうな敵だっただけで、今みたいに仲間ではない。


「大丈夫だろ」


なんてことはない風に言うとラントルは呆れた顔をした。続いて表情が険しくなる。


「ダメ!いいから中で寝ない事!こっそり抜け出してこっちに来て」


「いやそれだとブレッドに怪しまれるだろ」


「私も見張り手伝うから」


食い下がるラントルに仕方なく頷いた。アラウにもそう話すよう言われ少女はテントに入った。


アラウは既に寝袋を敷いて横になるところだった。少女は側までいき、先程のことを話すとアラウはハッとして顔を赤くした。


「そ、そうですよね。女の子ですもんね……すみません気が回らず」


「俺も別に気にしないんだが、ラントルがうるさくてな」


「いやダメですよさすがに……」


「ん?別に興味ないだろ……」


「…………」


アラウは急に黙った。顔を背けており、耳が赤くなっていたが、元男は気づかなかった。


────なんで黙る?否定して欲しいんだが


「その、理解はしたので……ちらっと顔を見てもいいですか?」


「なぜ?」


「顔を見ておかないと忘れそうで……」


────よくわからんやつだな


クラウディは特に躊躇する事なく仮面を外した。


「もう行くぞ」


男の低い声から本来の少女の声に戻る。じいっとアラウは見ているが何も言わない。仕方なく顔を近づけてもう一度言う。


「もう行くからな」


「は、はい」


アラウは掠れる声で返事をすると寝袋の中へ潜った。


クラウディは仮面を付け直し、寝袋のダミーをおくとテントの反対側から気配を殺して出た。


ブレッドは火を眺めており気づいた様子はない。


そのまま遠回りして荷車へと向かい中を覗いた。


ラントルは身体を起こしておりクラウディに気づくと口元に人差し指を立てて手招きした。


音を立てずに近づき中を覗くとローレッタは既に眠っているようだった。


ラントルはそのまま待つようにいい、袋を持ってきて地面に降りた。そして少女の手を取って何処かへ行こうとする。


「どこに行くんだ?」


「水浴び」


月明かりを頼りにラントルは近くの小川へ行き、少し下流の方へ歩いていった。やや広くなった小川が目に入ってくる。幅3m位で少し深くなっているようだった。


辺りを見渡してラントルは服を脱ぎだした。慌ててクラウディは目を逸らし背を向ける。


「冷たーい」


チャプチャプと水に入る音がきこえる。


「ごめんね。入るって言ってなかったから着替え持ってきてないよね?あれだったら私の貸すけど」


少女は背を向けたまま首を振った。


「そう?じゃ見張りお願いね!」


────見張り


なんだか利用されてるなと感じながら言われた通り辺りを警戒した。小川からは、わずかに焚き火の火が見える。


ブレッドは動く気配はなくこちらのことはバレてなさそうだった。


林は静かで時折遠くから何かの鳴き声がした。


しばらくラントルは水浴びをし、気が澄むと着替えて荷車へと一緒に戻った。


クラウディも中に乗り込んで壁にもたれて座った。ローレッタを見ると静かに寝息を立ており起きる気配はない。


「お嬢様は執事がお湯を沸かしてそれで身体を拭いてたわ」


ラントルが貴族を見つめる少女に言うとあくびをして毛布に包まる。そしておやすみというとすぐに寝息を立て始めた。

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