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第58話 南方街道①







クラウディたちを乗せた荷馬車はレイボストンを出た後、執事のクルメルが御者となり南方街道を進んでいった。


ブレッドの膝裏の傷はアラウが『ヒール』で治した。ブレッドは無愛想な輩かと思ったが意外とキチンと礼は言うし無口というわけではなかった。


────俺のが無口だな……


話すのが苦手なクラウディは貴族と話すAランク冒険者を眺めていた。


「クラウディさん、ここではクローさんって呼んだ方良いんですかね?」


アラウが声を抑えクラウディに言う。


元男の少女としてはその方がありがたくそうしてくれと頼んだ。ラントルにも伝えてくれたようで2人とも少し慣れないようだったが合わせてくれた。


ブレッドが貴族と話し終えてクラウディ達の正面に座った。荷馬車はガタガタと揺れているが、彼は体幹が強いのかほとんどブレずに歩いている。


「クローだったか?お前はCランクか?」


不意に話しかけられ、クラウディは驚いて顔を上げた。


「俺はDランクだ」


ギルドカードをサッと出して色を確認してもらうと、ブレッドはほおっと目を見開いた。


「小さいのによくやる男だ。これから上がっていくだろう。なんなら推薦してやろうか?」


「推薦?」


「冒険者のランク、Dランクから上に上がるには試験を受ける必要があるんですけど、推薦があれば免除されるんですよ」


首を傾げていると隣に座るアラウが耳打ちした。


────じゃあ2人とも試験を受けたってことか


2人を見つめていると今度はラントルが口を開いた。


「試験は職によって違うのよ。私なら攻撃魔法の威力、アラウは僧侶だからヒールの回復量と回数だったかな?」


それを聞いてアラウは苦笑いする。


「そうですね。モンスターを生捕りにして傷つけて回復させるのを繰り返すんですけど……苦痛でしたね」


想像したら確かに精神的に来る人はいるだろうなとクラウディは思った。


────俺は『無職』なんだが大丈夫か?


少女は冒険者登録の際も受け付け嬢のルビアにはお勧めしないと言われた事を思い出した。


「せっかくだから推薦してもらったら?少し時間かかるけど自動的に上がるよ?」


確かにそうかも知れなかったが、『無職』でもあるし、目もつけられたくないので悩んだ末に少女は丁重に断った。理由も自分の力で上がりたいと適当に誤魔化す。


「そうか……ふ。いいぞ、そういう奴は。嫌いじゃない」


ブレッドは言われて微笑した。


それからは時折談笑しながら時間が進んでいった。


クラウディはあまり会話には加わらなく外を眺めるか他者の会話する様を眺めて過ごした。本を読むにも揺れて落ち着かないし、インベントリに入れてたので取り出すわけにもいかなかった。


元男の世界では電車や車移動では携帯を眺めたりする人が多かったがこの世界ではそう言ったものがないので新鮮だった。


「そういえばいつ頃に着くんだ?」


ローレッタが近くに来た時にクラウディは聞いた。


「そうですね……替え馬もないですし。休憩入れて10日で分岐点。エイギレストまで15日ってところですかね」


クラウディは荷車の端に積まれた食料等を見た。見たところ確かに充分あるようには見える。ただ保存が効くのだろうか。


「ベルフルーシュに行くんでしたよね」


「ああ」


「おそらく別れてから徒歩だと1週間ほどかかるかと。食料等を少しなら分けれるかも知れません」


荷物を見ながらローレッタは言った。


「いや生き物を狩って食べるから心配は要らない。そっちのが万が一に備えておくほうがいい」


「わかりました……それと、この間はありがとうございました」


ローレッタは頭を下げた。これで何回目だろうか。


クラウディはふとローレッタが大事そうに抱えているカバンの膨らみを見て気になる事があった。


────アーティファクト……か


オークションで競り落とした特殊なアイテム。5億ユーンを出して取り戻したもの。


「そのアーティファクト?はどんなものなんだ?」


クラウディはカバンを指差した。すると大事そうにローレッタは抱きしめた。


「詳しくは言えませんが、オークションの人が言っていたものに近いとだけ言っておきます」


────オークション会場の司会は国を守るに適した能力と言っていたな


もし他にもあるならどんなものがあるのか少女は気になった。


「そういうものは他にもあるのか?」


「……どうでしょう。気にした事はありませんので」


「そうか……」


貴族の令嬢とはそれ以上話さず、また外の景色を見た。道幅の広い街道を道なりに進んでおり間隔の広い木々が所どころ見えた。

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