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第55話 好奇心旺盛ラントル③







「護衛依頼?」


「ああ、依頼があるかと思ってな」


次の日は『ヘイルスケーリン』ギルドに来ていた。アラウはすでに全快して帰ったそうだ。様子を聞こうとも思ったが少女はなんとなくやめた。


「ベルフルーシュまでか?ないなぁ……しかも3日後て無理あるだろ」


クロックは唸って頭を掻いた。依頼書をペラペラとめくっていく。


「なんなら近くでもいいんだが」


「近くか……お?あぁまあ近くには行くか?これなんかどうだ?」


クロックはとある依頼書を出した。


護衛依頼────────


内容 エイギレスト関所までの馬車の護衛

募集人数 2~4人 揃い次第出発

適切ランク C

推奨ランク C-A

報酬 5万~要相談

※同行者あり


────────


依頼内容に何か既視感を覚えながらも、報酬や人数もちょうどいいなクラウディは手に取って眺めた。


「エイギレストまで行くなら受けましょ!王都に向かうのにちょうどいいし。私のランクなら受けれるし」


ラントルが少女の肩越しに依頼書を覗き顔を輝かせた。


「ベルフルーシュの方には向かうのか?」


「半分くらい向かうんじゃない?そこまで馬車ならかなりいいと思う」


────報酬もいいしな


「じゃあこれを頼む。また明日でも来たらいいか?」


「ん?いや人数揃うし3日後の朝だっけ?門の外で待機してもらうよう手配するから。いいな?」


「了解」





翌日────


「じゃあワシは行くぞ」


レイボストンの門の手前でドワーフは振り返った。クラウディとラントルは見送りに来ていた。


スコットは心強く一緒に旅について来て欲しかったが、そんな事を言っても仕方ないとクラウディは諦めた。


「ああ、色々助かった。俺が護衛しなくて大丈夫か?」


「ふん、ワシを甘く見るな女子が」


少女が言うとドワーフはふんと鼻を鳴らした。


「小娘、途中までらしいがこいつを頼むぞ!」


少女の後ろにいるラントルに彼は叫んだ。あまりの声の大きさに寝起きの彼女は耳を塞いだ。


「声デカ……わかってるって」


「道中気をつけて」


ドワーフは踵を返すと大きな荷物をヒョイと背負い歩き出した。霧が相変わらず立ち込めているのですぐに彼の姿は消えていった。


「店、買い占めに行くからな!」


クラウディが叫ぶと霧の先から笑い声が聞こえた。


────そんなにツボに入ったのか?


やがて笑い声が消えると彼女らは宿に戻った。その間も少女はドワーフの笑い声がまだ聞こえるのではないかと耳をそば立てていた。







「ね、お風呂どうしてるの?」


ドワーフが去った次の日の夜にラントルが言った。


「風呂なら川沿いにあるだろ」


てっきりラントルは毎回風呂に入っていると思った少女は地図を取り出して場所を教えようとした。


「いや私じゃなくてクラウディのことなんだけど」


言われてギクリと手を止めるクラウディ。


「まさか男装してるからどちらも無理だって入ってないの?」


「いや水浴びはしてる」


「出発は明日なんでしょ?思い切り綺麗にしとかないと……行くよ!」


もう就寝するつもりだった少女は慌てて男装しようとしたが、もたもたしてるとラントルが外套だけ着せてそのまま連れ出した。


レイボストンの『湯浴び場』はローランドルと違い夜も人が多く出入りしているのだ。なので今までどちらにも入れなかった。


「いや、やっぱり水浴びする」


「は?ダメってこっちきなさい!」


クラウディはグイグイと腕を引っ張られて番台のカウンターを掴んだ。元男の少女はとても他の女性の裸を見れなかった。


「はい、喧嘩しないでね。1人500ユーンね」


そんな様子をあらあらと見ながら恰幅の良い番台の女性が笑った。


「ほらお金だしてクラウディ」


言われて少女は一旦銀貨を10枚取り出すが、その隙を狙ってラントルは中に引きずっていった。コインがバラバラと落ちていきそれを見た番台がやれやれと拾っていった。


中は広く女性だらけでそこかしこに女性の裸が見えてきた元男は顔を伏せた。


脱衣所もきちんとあり、棚に自分の荷物を置くといそいそと脱ぎ出す。


だが隣に別の女性が上がって来てそのまま行動停止した。


────む、無理……


入る用意ができたラントルが側まで来て、固まってる少女を見るとため息をつき、手を引いて椅子に座らせた。


ようやくギクシャクとクラウディは身体を洗い大きな桶湯に入った。


周りが女性だらけでとても顔を上げられなかった。少ししてラントルが側まで来た。


「大丈夫?なんか止まってたけど」


「う……悪い」


「無理につれて来ちゃったし、別にいいんだけど」


「その、慣れてなくて、女性に」


「?自分も女でしょ?変なの」


元男である少女は裸のラントルが見えて慌てて背中を向けた。


ラントルはそんな彼女の背中に抱きつき胸を鷲掴んだ。両手から溢れそうな胸をムニムニと揉む。


「ひっ」


「お嬢さん立派なものをお持ちで。こりゃ襲われますな」


「や、やめろ」


「じゃあこっち向いてよ」


クラウディは逃れるためにラントルの方を向く。するとラントルは少女の膝の上に乗った。小ぶりながら形のいい胸が目の前にくる。


「あ……」


「うらやましーなこの胸ー」


湯気と垂れる雫で色っぽく見える魔法使いは少女の頭に手を回すとグイッと抱きしめた。


「おらおら!私の大胸筋を喰らえ!」


「っ!」


ラントルがそうやって遊んでいると少女は最初は抵抗していたが、少しして反応しなくなった。


「え、あれクラウディ?」


クラウディは鼻から血が垂れ、目を回して上せていた。







「調子に乗りすぎたごめん」


「…………」


風呂のあと河原で夜風に2人は当たった。涼しい風が流れているがいまだに霧は無くならない。


「ごめんって」


「別に気にしてない」


「女なのに女性が苦手って変。まあ私の身体が誰かをノックアウトさせるくらい魅力があるのは嬉しいけど」


「…………」


目を細める少女に冗談冗談とラントルは笑った。


「でもなんで苦手なの?男装はまだわかるけど……男として育てられた的な?」


クラウディはフロレンス以外にはこの世界に来た成り立ちを話していなかった。


────いっそ話す方が手っ取り早いのか?


そうは思うが、結局言わないことにした。信じられないだろうし何かが発展するとも思えなかった。


「まあ、そうだな……そんな感じだ」


「ふーん……うぅ寒くなって来た!帰ろ!」


一層強い風が吹いてラントルは身体を震わせた。少女らは宿に帰って明日に向けて早くに休んだ。

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