第54話 好奇心旺盛ラントル②
クラウディは朝早くに目が覚めた。ラントルはまだ寝ており起こさないようベッドから降りた。
少女は男装し、宿の1Fに朝食を食べに行った。朝食はパンにバターと野菜多めのスープだった。それをさっさと食べてもう一食分を金を払って作ってもらい部屋に戻る。
ラントルはちょうど起きていて伸びをしていた。
「おはようクラウディー……あら、ご飯持って来てくれたの?うれしー」
ラントルはクラウディが机に食事を置くとよたよたと寝ぼけながら席に座った。
「もう男装してるの?勿体無いねー。ちゃんとショーツ穿いてる?」
「……穿いてる」
クラウディはノーパン見たいなものと言われて、客観的に見て確かにと思った。なので仕方なくショーツを穿いたのだった。正直、鼠径部にピッタリとしていて違和感がすごい。
少女はラントルがまだ眠たそうにしながら食事をするのを眺めた。時折机にスープを溢したりするのに布巾を渡す。
「この後どうするの?」
「この街にはもう用はないからな、次に行くために買い出しに行く」
「あ、私も行く」
ラントルは買い物について行くために食事を急いでかき込んだ。
「ここって本当に先が見えないよね……」
宿を出て路地を歩いているとラントルが言った。しきりに辺りを見渡している。
「だから霧の街なんだろ」
「え、だってずっと霧があるって変じゃない?考えてみてよ、ここから外は陽も出てるのに中はこんなになるなんておかしいよね?」
「まあ、そりゃ」
「なにかの魔法かな?それともここはそういう局所的な特別なところなのかな?」
「どうなんだろうな」
「……クラウディ反応薄い」
「そうか?あ、道具屋に着いた。今日は奢るから」
学術的な話に興味のない少女に頬を膨らませていたが、クラウディがそういうとラントルは目を輝かせた。
「買い占めいいの?」
「常識の範囲内で頼む」
「ちぇ」
道具屋に入るとラントルは店内をウロチョロし、あれやこれやとカウンターに品物を置き出した。
道具屋には店主の他に何人か人がいるがそんなラントルを見て注目している。
クラウディは彼女とは他人に見えるよう距離を開けて自分に必要なものを探した。
「ごめんねいっぱい買ってもらっちゃって」
両手に荷物を抱えたラントルは上機嫌である。
────8万ユーン消えた……
少女はやめておけばよかったと後悔した。
「あ!あそこに酒場があるよ行こう!」
「もう昼時か……行くか」
酒場は昼時なので人が盛んに出入りしている。
彼女らは中に入ると空いている席に座った。適当に飲み物と食べ物をウェイターに頼みしばらく待つ。
「そうだ、私パーティ組むって言ったけど……途中までね?」
「途中?どこかに行くのか?」
「うん、エイギレストから故郷が近いから一旦帰って、それから魔法学院に行こうと思って」
「魔法学院?」
「魔法の素質のある人が行くところで、王都にあるんだけど」
ラントルは手を組んで人差し指をクルクルと回した。
「きちんと学びたいと思って……ベルフルーシュには一緒に行けないけど……」
ラントルは少し申し訳なさそうに目を背けた。彼女も色々と苦労はして来ているのだろう。これからの人生だってあるのだ。それを縛ることは出来ない。
「ああ、了解した」
クラウディは頷いた。
「ま、まあまだ道のりは長いし、もし行って入れなかったらベルフルーシュに行くね」
ちょうど料理がきて彼女らは雑談しながら腹を満たした。
次の日、クラウディとラントルはドワーフの宿へと向かった。
ドワーフはすでに荷造りが完了しているみたいで大きな荷物が置いてあり、訪れると床に身を屈めてナイフを研いでいた。彼は2人に気づいたが構わず作業を続けた。
「もう今すぐ旅に出れる感じだな」
大きな荷物を見ながらクラウディが言った。
「お前さんたちに会ってから行こうと思ってな」
「…………え?もう行くのか?」
「ああ、店を放置して来たしやることが沢山ある。新作の武器と防具の作成に、ここまで来た過程で手に入れた素材の手入れと加工、工房の新調それから────」
ドワーフは指を折ってやることを数え出し、両の指では足りず足の指まで折った。
────まだ何も礼が出来てない
「なにか欲しいものがあるか?」
ここまでしてもらって何も礼が出来てないと少女は焦った。このまま別れると次はいつ会えるかわからない。
「ふん、欲しいものは自分で手に入れるわい。……いらんぞ礼なんて。そんなものが欲しくて来たわけではないぞ」
クラウディの胸の内を見透かしたようにジロリとドワーフは睨んだ。ラントルも頷いていたが、ふとニコリと笑った。
「じゃあクラウディ。出世したら武器と防具買い占めたら?」
その発言にドワーフの手がピタリと止まる。そして高らかに笑った。
「そりゃあええの!思い切りぼったくってやるわ!それでも買い占めれたら大したものだ」
ドワーフと魔法使いはゲラゲラと笑った。
────金、貯めとかないとな
ここまででかなり出費している少女は肩をすくめた。
「スコット、お前の鍛治道具ごと買い占めてやるからな……」
いつまでも笑っているのでクラウディはそういって腕組みした。




