第53話 好奇心旺盛ラントル①
「いや、あれどう聞いても『一緒に来て』って言ってるようなもんでしょ」
ラントルたちの宿に帰ったあとスコットと別れてクラウディは自身の宿に帰って来た。何故かラントルはついて来た。
クラウディは自身の宿を引き払って、ドワーフと一緒の宿に泊まろうと思ったが彼は拒否した。
「なぜだ?」
「え、本気で言ってる?」
アラウには直接は言わなかったぞと、なおも首を傾げる少女にラントルは呆れてため息をついた。
「もういいわ、ちょっとそっち寄って」
「お前帰らないのか?」
辺りはもう真夜中で、クラウディがベッドに横になるとラントルが上がってくる。
────女は無理だ……
元男の少女は女性との距離に慣れておらず、壁の方を向いて出来だけ壁にくっついた。ヒンヤリとした壁が少し苦痛である。
ラントルも布団に入ったようで、少しすると規則正しい呼吸が聞こえた。
寝たのだろうかとクラウディが静かに寝返りを打つとラントルと目が合った。
びくりと心臓が跳ね、目を逸らす。
「……あ……助かった。大した絡みもないのに来てくれて」
沈黙が耐えられなくなり、そういえば言ってなかったなとそう伝える。特に返答なく再び目をやるとラントルは目を閉じていた。
少女は息を吐くと壁の方向いた。少しするとラントルがにじり寄りピッタリと少女の背中に身体を合わせた。
「本当は私にも下心があってね」
すぐ背後でラントルは言いクラウディの胸の下に手を回した。
「あなたに会いたかったの」
「……俺に?」
「あなたの言葉で決心がついたから」
────ユーリの件か?
「だめね。違うの。男の、あなたに一目惚れだった」
やや声が掠れているのがわかる。
「ラインの計画を知った時ね、ここで助ければ恩が売れると思ってね。けど女の子だって知って……途中でやめようとしてね……けどやっぱりほっとけなくて……」
ラントルはごめんなさいと何度も言いながら啜り泣いた。
────ああ、そういうことか
魔法使いも自分の中の葛藤と戦っていたのだろう。どうりでやたら協力的だと少女は納得した。
彼女の胸の内を知った少女はいつまでも泣き止まないラントルにどうしたらいいのか困ったが、何となく自身の胸に彼女の手を持っていった。
それに気づいたラントルは少しの間グニグニと少女の胸を揉んだ。
「……っ」
クラウディは気が済むまで触られるのを我慢しようとしたが、乳房の中心に指がいくのを感じたのでそれはやめるよういった。
ラントルはいつの間にか泣き止み舌打ちした。
「なに?自分のほうが大きいって自慢したいわけ?」
「いや、そういうわけじゃ」
「はーあ!本当なら年下の男の子を今頃食べてたのになぁ」
────ショタコンってやつか
ラントルはクラウディから離れるとそっぽを向いた。
しばらくまた沈黙が流れ、うつらうつらとしているとラントルが不意に言う。
「もう、大丈夫なの?その……あれ」
心配しているようで言葉を濁すラントルに少女は身じろぎした。
「衝撃的ではあったが、俺もアラウも無事だったからな」
「ごめんなさい。……本当不謹慎なんだけどどこまでヤったの」
「…………」
────こいつまじか
「いやほら、今後私もなんかあった時に対策とか……ね?」
「別に、胸揉まれたぐらいだが」
「キスは?」
「……いやしてない」
「そ、そ挿入は?なんかやられてなかった?」
「っ……してない」
「ああいう時って濡れるの?」
「」
────勘弁してくれ……
当時のことが鮮明に呼び起こされる問いに我慢出来なくなったクラウディは頭から布団を被った。
その後はラントルがまた何度も謝ったが今度は少女は慰めなかった。2人はそうこうしているうちに眠りに落ちていった。




