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第49話 屈辱②








少女は剣を抜いたが、身体が痺れて来て思うように握ることが出来ずその場に落とした。


────麻痺か


麻痺が来るとわかっていれば『生命石』の魔法で風を纏うことで未然に緩和できるが、仮面内に麻痺毒を噴射されもろに呼吸してしまった。


「クソっ……」


悪態をつくが徐々に痺れが強くなり、壁にもたれる。そんな様子をみて近づくアラウ。


「ふー、危ない危ない。バレなくて良かった!」


「アラウは……どこだ」


「ほらぁ、もう大体バレてる感じじゃないか。普通そこは本人が実は悪者だったってパターンでしょ」


クラウディは目の前にいる人物と、グール討伐や浄化依頼で組んだアラウとは別人だと直感した。


思えば3回目に会った時から挙動がおかしかったように思えた。遠慮した話し方とは少し違った、話しの距離が近い感じがした。


────そうだ


あの彷徨う甲冑に使った魔法も『聖球』でなく、ただの『光球』ではなかったか。


彷徨う甲冑などのアンデットモンスターには聖なる光でないと効かない。僧侶である本人が、それが分からないはずがない。


「アラウは僕ですよ……なんてね」


「ふざ、けるなっ……」


────くそっ、完全に油断してた


知った顔なので違和感も気にせず、至近距離の接近も許してしまったことに悪態をつく。


「ま、いいんですけどね……あとは任せるだけなんで」


偽アラウが肩をすくめると背後から別の人影が出てきた。


「っ!」


「よお、久しぶりだなぁ」


暗がりから出てきたのは、鋭い目つきと黒髪の逆立った短髪が特徴の男。冒険者パーティ『神速夜行』の1人、シーフのラインだった。


「なんでお前が……」


偽アラウは後は任せましたよと彼の肩を叩き、霧に姿を消した。


男が近づいてくるのを見て、少女は何とか『生命石』に触れ意識を集中した。明らかな敵の出現に先手を。


────焼き尽くす


しかし、炎のイメージを連想するが、『生命石』は反応しない。


「なに……」


何故か不発の魔法に慌てふためいているとラインが少女の腕を掴んだ。力を入れ『生命石』が手から落ちるのを見てニヤリと笑う。


「それはもう空だ。気付かなかったか?光っているから使えると?バーカ、もうマナは抜き取られてんだよ」


その言葉にクラウディは理解して目を見開いた。


偽アラウはマナを込めると言って逆に抜き取っていたのだ。光魔法でそれらしく見せて。


当然少女は無駄にマナを使わないようにしていたので確認すらしなかった。


呆然としていると不意に顔に影がかかり仮面が剥ぎ取られる。クラウディは我に返り顔を背けた。


「せっかくの顔を隠すなよ」


ラインは掴んだ腕を壁に押し付け、露出したクラウディの首筋に顔を(うず)めた。深呼吸するように息を吸う。


その行為の気持ち悪さに元男の少女は背筋が凍った。


ラインは続けて胸を鷲掴んだ。


「ほら女じゃねえか」


「ひっ」


「包帯巻いて胸潰してたのか」


クラウディは占い屋で緩めたサラシを巻き直してなかったことに気づいて後悔した。


「クセェなぁ、雌クセェよお前……」 


鼻息荒く匂いを嗅ぎながら胸を揉みしだき、耳元で囁く。


「どうだ?完全に立場逆でだなぁ、ええ?」


「っ……」


クラウディは殺意の籠った眼で思い切り睨んだ。


それを見た男がいいねぇ……、と身体を震わせる。


「……ああぁ、ダメだぁ我慢ダァ……気張れおれぇ。ああでもキツイなぁ……メチャクチャに犯してーよぉ」


────こいつ……やばい


ラインの目は完全に据わっていた。何をしでかすか分かったものではない。


少女は必死に逃げようとするも痺れがより強くなり、立っている脚が震え始めていた。


「はっ!おいおい逃げんなって」


少女の身じろぎに我に返ったのか、彼はヒョイとクラウディを肩に担いだ。


「ふぅ……危ない危ない」


ラインはそのまま何処かに向かっていく。クラウディの身体はついに麻痺毒が完全に周りほとんど動かなくなっていた。


「どこ、に……」


「奴隷商だよ。そこでお前を売る手筈になっている。しばらく遊んで暮らせるぜ。この顔に能力もあるんなら」


『闇市』で見た奴隷を思い出し少女は何とか逃げ出そうともがいた。しかし僅かに動く手は、担ぐ男の背中を触る程度でとても押しのけられない。


麻痺して身体が動かず、『生命石』もマナ切れ、完全に詰んでいた。


強いて希望を言うなら奴隷商で麻痺が解ければ足に仕込んでいるナイフで脱出できる可能性があり、それにかけるしかなかった。


「奴隷は(もん)を刻んで契約すると晴れて奴隷なれるぜおめでとさん。いやぁお前がいてくれて良かったよ。こんな大金そうそうねぇぜ」


────言ってろ……クソが


すっかり勝ち誇っている男に心の中で悪態をつく少女。


「本当なら俺が買ってやっても良いが、いかんせん金が足りねぇ。かといって傷物にしたら価値が下がるから手も出せねぇんだよなぁ。死ぬほどヤりてぇのに……」


ラインは急にその場に止まった。


「待てよ?傷物にしたら価値が下がって俺でも買える?紋さえやってくれりゃいいからな……あぁそうかぁ、買ってくれりゃその金で価値が下がったこいつを買えるぞ」


────は?


ラインは興奮様に少女を、近くの大きな木箱の上に半ば投げつける様に転がした。クラウディは受け身も取れず倒れて呻いた。


「そうだぁそうしよう」


ラインは少女を仰向けにさせると肩を押さえつけて馬乗りになり、服をはだけさせた。下衣も片方だけズリ下げる。下は男物の薄いショートパンツを履いており、それを見た男はニヤニヤと笑った。


「ここは最後に取っておかないとなぁ」


「?!」


そうして男は少女のサラシの下に手を入れ直接触り出し始めた。


────勘弁してくれ……


「だれ、か……」


狭い路地に声にならない声を上げるが当然無意味だった。霧が立ち込めており、誰かが見つけてくれるのも期待ができそうにない。


荒い呼吸をしながら男は太ももの間に入ると、自身の腰を少女の股の間に密着させ擦り始めた。男のソレが硬く大きくなっているのが分かった。


────まずい、まずい


いつかのゴブリンに襲われた事が少女の頭をよぎり心臓が早鐘のように鳴る。


「ぐっ、うう!」


力を振り絞りなんとか抜け出そうと身体を弱々しく捻る。


「焦んな焦んなって……」


ラインはそんな少女の両腕を逃げられないよう捕まえた。


クラウディは抵抗するよう口の中に溜まった唾を男の顔面目掛けて吐きかけた。男の口元に唾がかかるが、彼はそれを何の抵抗もなく舌で舐めとった。


「はは、美味い美味い」


その行動に全身に鳥肌がたつ少女。


「男物の下着はやめといたほうがいいぜ?ほらこうやって────」


男のソレが下着の隙間から布を掻き分けるのが分かった。


「さあて、どこかなぁ……ははぁ?」


────まずいまずいまずい


最後の力を振り絞り逃れようと少女がもがくが、彼女の上半身を押さえつけるように男の上半身が体重を乗せてきて全くの身動きが出来なくなった。


クラウディはそこで力尽き、全くの抵抗をやめてしまった。


「ここか?ここかなぁあ?」


「あっ」


「せーの……」


クラウディは終わったと呆然としていたが、不意に何かを殴るような音がしたかと思えば男の身体が力を失ったようにダラリと動かなくなる。


「はっ……はっ……はっ」


圧迫から解放され荒い呼吸をしながら何が起こったのかと辺りに視線を送ると見知った顔が、動かない男の後ろに見えた。


小柄な髭を蓄えた中年のドワーフだ。そしてその隣には波打った赤髪を持つ魔法使いのラントルが杖を握りしめていた。


「す、すこ……と?」


「大丈夫?!」


ラントルは男を蹴飛ばしてどかし、ドワーフのスコットは何も言わずに毛布を取り出してクラウディに被せた。


そして別の複数の人影が彼らを囲う。


クラウディはそれがこの街の衛兵たちと分かり安堵した。


彼らは現場を見て幾らかあたりを調べると、気絶したラインを拘束し、何処かへと運んでいった。

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