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第45話 彷徨う甲冑







次の日続けて依頼を受けようとギルドへと向かった。依頼を受けて外に出ると、そこでバッタリとアラウと会う。流石に連日会うと思ってなかったクラウディは顔が引き攣った。


「やあまた会いましたね!」


クラウディは気づかなかったふりをしようとそばを通り抜けた。


が、彼は側に来て一緒に歩いた。


「何の依頼なんですか?」


アラウは手に持つクラウディの依頼書を指差した。少女はため息をついてそれを見せる。


ギルドクエスト────

依頼者 冒険者ギルド

討伐対象 彷徨う甲冑

場所 16番街廃墟

適正ランク D パーティ推奨

推奨ランク D-C

報酬 1万ユーン


────────


「彷徨う甲冑ですか……僕も行っていいですか?」


────ん?なんか……


少女自身、彼とは付き合いなんてほんの3日程度であったが、何か青年に違和感を感じた。


しかし何に違和感があるとは説明できず、ただ何となくだった。


クラウディは気のせいかと首を振った。


少女は最初パーティを断ったがどうしてもと言うので仕方なく一緒に行くことになった。


彷徨う甲冑────

兜のない、武装した中身がない甲冑。怨念や心残りが呪いとなって甲冑に宿り動き出したもの。


クラウディは向かいながらアラウから説明を受けた。


弱点は聖属性であり、アラウ自身も貢献できると彼は意気揚々と前を歩いた。


「僧侶は回復の他に聖属性の付与とかこの間の光魔法が得意なんですよ」


────光魔法……か


少し違和感を覚えつつも目的地に到着した。16番街のとある廃墟。もとは冒険者の家だったらしく、廃墟になってから何年も経っているらしい。


少女らがその廃墟の周りを観察していると、少し離れたところから犬の鳴き声がいくらか聞こえてきた。


静かに移動してそこの近くの物陰から覗いてみると、動く甲冑が皮膚が垂れた犬と対峙していた。


犬は複数匹おり、動く甲冑に飛びかかった。それを盾で弾いて剣で斬り伏せる甲冑。


「あれは『アシッドドッグ』とターゲットの『彷徨う甲冑』ですね」


クラウディの後ろから覗くアラウが説明する。


アシッドドッグ────

茶色の毛皮であるが皮膚が自らの酸で溶けている。噛みつかれると牙の穴から酸を注入され内側にダメージを食らう。


「モンスター同士が戦うこともあるんだな」


「そりゃそうですよ。ただこれはチャンスですよ。消耗したところでターゲットを倒しましょう」


クラウディは頷き、剣を抜いて成り行きを見守った。


彷徨う甲冑は中に人が入ってるかのように動いている。


彷徨う甲冑は甲冑を破壊するか、聖属性の光を中に入れれば倒せるとギルドで情報をもらっていた。犬相手に負けることはまずないだろう。


予想通り彷徨う甲冑が1匹ずつアシッドドッグを倒していく。


このまま行けば背後からの『聖球』で簡単に倒せそうだった。


────これで1万はボロいな……


そんなことを思っていた矢先、アラウが手をついていた壁が突然崩れて青年が躓き瓦礫が音を立てる。


その瞬間にモンスターが一斉に大きな音の方を向いた。


「っ……」


「す、すみません」


「俺が犬は相手するから甲冑は何とかしろ!」


向かってくるモンスターをみて少女は青年にそう言い剣を握って飛び出した。


────1、2、3……5匹か……


左右に視線を走らせ両脇から来る噛みつき攻撃に屈んで身体を回転させる。瞬く間にアシッドドッグ2匹を倒してさらに突っ込んでくる敵を鼻先から腹まで斬り裂いた。


残り2匹に眼をやるとビクリと動きを止めた。


クラウディはその隙に彷徨う甲冑の様子を伺う。霧がかって見えづらいが、ちょうどアラウが甲冑の中に光を入れていたところだった。


────よし、後は犬2匹


「だめです!効きません!!」


アラウは光魔法が効かないことに慌てて叫んだ。本来なら甲冑は人の形を崩してその場に転がるはずだった、しかしそうはならず剣を振り回し始めた。


危なげなく避けるアラウをみてクラウディは舌打ちし、そちらに向かった。後ろから敵が追ってくる気配がした。


少女は片方の剣を納め急いで『生命石』を取り出して握り意識を集中させた。


立ち止まり、追いかけてくる敵に手を向けた。その手の平から激しい炎が吹き出し2匹の『アシッドドッグ』を飲み込んだ。


続けて彷徨う甲冑に突進し同じく激しい炎を浴びせる。近づくまで炎を浴びせ続け、やや甲冑が赤熱したのをみると放射をやめ、『生命石』と剣を持ち替えた。


間合いに入って迫り来る剣を片方で受け流し、そのまま反対の剣で甲冑を叩き斬った。


彷徨う甲冑はなお剣を振り回し、少女はそれを回避しては甲冑を刻んでいく。やがて甲冑がボロボロになった頃に膝をつき、そのまま動かなくなった。


クラウディは肩で息をしその場にへたり込んだ。甲冑を軟化させたのは良かったが、徐々に冷えて硬くなっていくので斬るのにかなり体力を奪われたのだ。


「大丈夫ですか?!すぐに回復魔法かけますね!」


いつのまにかどこかに避難していたアラウが出てきて何か呟きながら少女の腕を触り、細かい傷を治していく。


「倒せましたね!さすがです!『生命石』を使えるなんてすごいです!」


「…………」


「あ、クローさん?」


────気のせいか?


また違和感を感じたがクラウディは気のせいだろうと頭を振る。


「あ、すみません!結構マナを使ったのでは?良ければ補充しますよ」


「まじか……助かる」


クラウディは『生命石』を取り出した。先程の威力の魔法をかなりの時間使ったのでマナの光が大分弱まっている。


少女はそれを渡した。アラウは受け取ると、聞こえないほど小さい声で呪文を呟いた。『生命石』のマナの光が少し強くなる。


────時間かかりそうだな


すぐに終わるものと思っていたが時間がかかりそうなので、少女は立ち上がって倒したモンスターを見に行った。彷徨う甲冑はいつの間にか地面にバラバラになっていた。彼女は壊れた甲冑の破片を討伐証明として拾った。


ついでに『アシッドドッグ』の素材を剥ぎ取ろうと思ったが、酸で自身を溶かしておりあまり使えそうな部分がなかったので仕方なく耳を切り取った。


「クローさん!はいっ」


剥取りをしているとアラウが駆け寄ってきて『生命石』を少女に返却した。マナの光が戻っている。


「助かった」


「魔法使えるんですね」


「ああ、これがないとダメだけどな」


クラウディは『生命石』を荷物袋にしまった。


「……では帰りましょう」


彼らはその場を後にし、濃い霧の中ギルドへと戻った。


帰る途中アラウはいくらか話したが少し口数が少なく感じた。


「どうかしましたか?」


視線を送りすぎたのかアラウが首を傾げる。


「いや別に……」


ギルドに到着すると中へ入ろうとするがアラウが前を遮った。


「あ、今日は僕が報告しておくので!それでは!」


そう言ってアラウは取り出していた依頼書を少女の手から取って持って行った。


その時またどこからか遠くの方から視線を感じた気がした。


────?


たまたまだろうかと頭を振り、クラウディはまあいいかとそのまま宿に帰った。


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