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第33話 霧の街レイボストン①







『霧の街』とはよくいったもので、辺りには霧が充満し、100m先はもう見えない。


空気も湿っており空は昼間だと言うのに陽が見えなかった。


もしかしたら見逃しているのかもしれないが、辺境の地ローランドルみたいに出店は見当たらず地図がない状態で右も左も分からない。


クラウディは取り敢えずギルドか酒場を探し、そこである程度情報収集しようと門から続く石畳の道をそのまま真っ直ぐに歩いた。


ローランドルでは木造の家が多かったが、レイボストンの街は四角い煉瓦(れんが)造りの家が目立ちお互いの間隔も狭くひしめき合っている。


視界が悪いせいか、暗いからよく見えないせいなのか聞いていたより人通りはない。時折路地裏に人影が見えるくらいだった。ただ何となく視線をいくらか感じる。


少女はそういえばと生命石を荷物へとしまい、顔に例の白い仮面を被った。小声で発声してみて声を変える機能に問題なかった。


犯罪が多い街というので自身の素性をあまり公にするべきではないだろう。視界がやや狭まるが他の感覚を鍛えれるのでちょうど良いかもしれない。


いくらか歩いたが同じところを歩いているような気がして、とある家の横で気怠げにタバコを吹かしているホームレスのような髭面の男に声をかけた。衣服もヨレヨレで汚い。


「この街の酒場やギルドはどこにある?」


男は仮面を被っているクラウディをジロジロとみるとニヤリと笑った。


「酒場ぁ?ギルドぉ?よくわからんなぁ~」


シラを切るような物言いに少女は片眉を上げた。


「明日を生きるのも大変でそんな事考えてる暇ないんだよ、坊主……へへ」


────なるほど。金をよこせと


明らかに金を払わそうとする男をナイフで脅してやろうかと思ったが、ギルドに知れたら面倒でやめた。しかしこのまま何時間も歩いてはいられず、少女はポケットから金を取り出した。


────……いくら出せばいいのか


取り敢えず銀貨10枚を差し出した。場所によるが宿1泊分だ。


「へへ、わかってるねぇ。ギルドは……ここから近いのは『ヘイルスケーリン』だ。酒場はその近くにある。場所はここから100mくらいこの道をまっすぐ行って2つ目の街灯の裏に路地がある。それに沿って行け」


男は金を受け取るとすんなりと言った。


「助かる……ところで、今お前を殺したら誰かが気づくのはいつくらいだ?」


「え?」


少女は不意にホームレス男の首元にナイフを突きつけた。話している間、背後に気配を感じたのだ。おそらく気絶でもさせて身ぐるみを剥がそうとでもしたのだろう。


「そ、そんな……はは旦那冗談ですよね」


「ああ、冗談だ」


そうは言ってもヒンヤリとしたナイフを首に押し当てる冒険者に、男は焦り後方に何か合図を送った。


気配が遠ざかっていくのを感じてクラウディはナイフを納めた。これが今度続くとなると常に警戒を怠っては行けないなとため息をつく少女。


「強いお(かた)だったんですね……」


男は冷や汗を拭い金を冒険者に返した。


「本当の道は?」


「いや案内は本当です、すみません」

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