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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編

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第319話 マティアスの処遇








数日後、カイザックは結局その後も姿を現すことはなかった。


ただある日、宿のテーブルに彼からであろう手紙が置いてあった。いつの間に侵入したのか、首を傾げながら封を開ける。


────────


アーティファクトは王都に運んでおく。俺は一緒に行けないから王都に着いたら『カルクレジオン』という所を頼れ。


────────


という内容で、何かの指輪が一緒に入っていた。


何の変哲もない指輪だが、取り敢えず手紙と一緒にそのままインベントリにしまった。


「そうか……ここまでか……」


貴重な情報源のカイザック。どうやら彼との旅はここまでという事らしい。


『転移』のアーティファクトも手に入ったし、最低限目的は達成したので問題はないが。


「はぁ……」


クラウディはベッドサイドに座った。ここ数日未だに無気力が続く。


アイラやティリオは酒場にもおらず、宴の日からも全く姿を見せないし、さっきの手紙からしてカイザックはもうどこかに行ってしまったに違いない。


それでも次への手がかりも残してくれたので感謝しかないのだが。


それに加えて今までの集大成であるインベントリも無くしてしまったのでそれも相俟って何もする気が起きなかった。


それでも金は減っていくのでそろそろ動かなくてはいけない。


「…………はぁ」


────アイラはどこに行ったんだ


せめて彼女がいれば反面教師として活動意欲も涌くがそれもないので、少女はベッドにゴロリと横になった。


と、その時ドアをノックする音が聞こえた。


もしかしてアイラが帰ってきたのかと飛び起きてドアに向かう。


「ギルドのものです。クローさんいらっしゃいますか?」


「…………あぁ」


違うとわかり肩を落としてゆっくりドアを開けた。そこにはメガネをかけた長い茶髪の女性が立っていた。


服装からして事務員のように見える。


「朝早くからすみません。マティアスさんの件で参りました。よろしければ牢の方に行けたらと思うのですが……」


────来たか……


「……了解した」







少女は牢はギルドの方にあるのかと思ったが、ギルド員の女性は全く別の薄暗い施設へと向かった。


施設はアーベルの端の方にあり、警備が厳重に敷かれていた。


それらの視線が気になるが、ギルド員の女性はシャキシャキと歩き、施設内に入ると地下の独房へと向かった。


独房はどの程度あるのかわからないが、地下を降りると6つ見えた。そのどれにも囚人がいる。さらに地下があるのでもっと居るのだろう。うめき声や言い争う声なども聞こえてくる。


「お、美人なねーちんじゃん♫何しにここへ~」


「ひゅー♫」


側を通る際にはそんな声が聞こえてきた。


ギルド員は無視して正面の受付のようなところに向かった。そこにいる警備兵と幾らか話し、さらに奥へと通される。


そこの部屋は半分個別の鉄格子となっており、格子の向かいの空間には椅子が1脚ある。そこにマティアスが拘束されて座っていた。


クラウディはギルド員に促され彼の前にある椅子に座った。


「……久しぶりだなクロー君」


「ああ、少しやつれたなマティアス」


仮面越しに見える彼の顔は頬がこけており、髭も無精に生えてくたびれたように見えた。


「他の、ラミーとかは?」


「多分……みんな別々で拘留されてるんじゃないかな」


マティアスがそこでチラリとギルド員を見る。


彼女はメガネを触り、書類に目を落とした。


「『アンサンブル』メンバーは別の、同じ独房で拘留中です。安心して下さい衣食住はキチンとしてますので」


「そうか……良かった」


初めて仲間の状態を聞いたのか彼は穏やかに笑った。


「さて、マティアスさん。最後の尋問を始めます」


咳払いし、書類を捲りながら続ける。


「Aランク冒険者、マティアス。あなたは目の前のCランク────おほんっ!Bランクになったのでしたね。Bランク冒険者クローのパーティとレイドを組んだにも関わらず────彼らを14階層ボス、アースドラゴン戦にて意図的に囮として利用したことに間違いありませんか?」


「……ああ、間違いない。俺が画策し、仲間を脅して実行した」


マティアスは真っ直ぐギルド員に目を向けてそう返答した。


『脅した』という点は間違いなのではないかと思うが、彼は全て自分のせいにしたいのだろう。仲間のために。


「言質はとれました。では、クロー殿」


今度はギルド員が、座る少女に向き直る。


「他、メンバーにも確認しましたが、彼の処罰はあなたに委ねられます。いかが致しましょうか」


────俺に委ねられてもな……


クラウディはチラリとマティアスを見た。全てを受け入れるのだろう、悟ったような表情だ。


────罪ってなんだろうな


ふと少女は考えた。『罪』とは結局は人がどう感じるかによる。その人にとっては何でもないことでも、別の人にとっては悪いことだったりする。


逆も然り。


もちろん、今回彼が取った行動は誰が見ても『罪』だ。しかし結果的には誰も死ぬことはなかったし全員無事に帰還できた。


ダンジョンも攻略出来たし、さらに奥があるという情報も手に入れた。


『結果オーライ』。その言葉で解決するのはどうかと思うが、元男の少女にとっては正直そうなのだ。


それよりかはカイザックを殺そうとし、アイラの寿命を半分奪った少女の方が圧倒的に『罪』だろう。


そんな者が誰かを罰するなど片腹痛い。


「ギルドの見解は?」


「……彼の背景とその後の行動で情状酌量の余地がアリと。そうですね……1年の活動停止というのが妥当ですかね」


────処刑は流石にないか


クラウディはもし見解が処刑であるなら口を出そうかと思ったが、そうでないなら何もいうことはなかった。


しかし1年も稼げないのは少しきついようにも思える。


「アーベルからの即刻追放と1年の接近禁止とかでどうだ?」


少し考えて少女は言った。


その言葉にマティアスが目を見開く。


『即刻追放』とは聞こえは悪いが、内容全体で言えば冒険活動は出来る。デメリットといえばアーベルでの活動は出来なくなり、ダンジョンについての情報が手に入らなくなる程度だろう。


マティアスはもう遺品も回収しただろうし、目的のアーティファクトもないのだから大してダメージもないはずだ。『追放』というワードがもし広まってしまえばそれなりにダメージは喰らうかもしれないが。


「クローさんがそれで良いなら、ギルドにそう伝えますが」


「ああ、頼む」


クラウディは終わったのなら帰ると席を立った。


「クロー!」


ギルド員に引き止められる事もなく、そのまま出ようと出口に立つとマティアスが叫んだ。


「本当に申し訳なかった!この恩は一生忘れない!」


「…………」


彼はおそらく少女に向かって頭を深く下げているだろう。しかしクラウディは振り返ることなくそのまま独房を出た。







聞いた話によるとその後マティアスたちは釈放され、すぐにアーベルを発ったようだ。


これでアーベルダンジョンの最前線はレオナスとクラウディたちだけとなった。


もっとも、クラウディたち『レゾナンス』は活動の息をしていなかったが。

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