第317話 ダンジョン攻略の宴③
宴は夜になると神殿の中央に大きな火がつけられて煌々と辺りを照らした。
クラウディはドワーフと別れた後は帰ろうかと思ったが、やはりアイラの姿がないかと歩いて回っていた。
そのうち、ダンジョン攻略者である少女が暇そうだと思ったのか、他の冒険者がこぞって殺到し、色々話すうちに時間が過ぎていってしまった。
ようやく解放され、神殿の端にある荷物置きのようなところで、長方形になるよう積まれた丸太の上に座って大きな篝火を見つめていた。
結局アイラの姿は見つからず。
「こんなところにいたか」
聞き慣れた声がし、後ろを振り向いて視線を下げるとカイザックがグラスを片手に丸太に腕を乗せていた。
「みんなさっさと何処かに行ってしまったからな」
少女はややぶっきらぼうに返答し前を向いた。彼は軽やかに地面を蹴って上がり、少女の隣に座った。
「なんだ?拗ねてるのか?てっきりアイラたちと過ごすと思ったんだが?」
「…………アイラには最近避けられている」
「ほぉ……それはまた何故?喧嘩でもしたか?」
カイザックはグラスを置き、タバコに火をつけて一口吸った。
「喧嘩以前の問題だろ……その……寿命のことで」
「んー?そんなはずは……」
彼は煙を吐きながら首を傾げた。何か考えるふうに少し黙ったがやがて肩をすくめた。
「あいつはそんなタマじゃないだろ。どうせ大したことないさ」
軽く言うが、クラウディにとってはそうは考えられなかった。寿命を失った者の気持ちがわかるとは言えないがかなりの決断だったはずだ。
「どうやって埋め合わせしたら良い?」
「失った寿命をか?……それは無理だろ。気にしすぎるなよ。楽しもうぜ宴をさ」
彼はそう言ってどこからともなく酒瓶と別のグラスを取り出して酒を注いだ。それを少女に差し出す。
「俺は酒は飲まない。そもそもお前が飲むなと言ったんだろ」
「かなり弱いやつを持ってきた。大丈夫俺がいるし」
「…………」
クラウディは訝しの目を向けながら取り敢えず受け取り、匂いを嗅いで一口飲んだ。
アルコールっぽさはなく、ライチのようなサッパリとした甘い香りが口内に広がっていく。
なかなか美味いのでちびちび飲んでいった。
「いい飲みっぷりだ」
カイザックが微笑む。
少女は目の前の光景に顔を向けた。
大きな篝火の前では誰かが踊っていたり、かと思えば喧嘩したりと様々な人の姿が見えた。
明日のダンジョン攻略はどうするかとか、何階層まで行くか、買い出しはどうするかなどなど話すものも多い。
「はは、お前らに感化されて火がついたんだな」
少女の見つめる先を辿ったのかカイザックがニヤリと笑った。
「アーティファクトはまた出たりするのか?」
「それはもちろん。でないとダンジョンじゃないだろ?それに他にも宝はあるしな」
「……なるほど」
ならば独り占めしても多少は許されるかと安堵する少女。
2人はそれからダンジョンについてや、現れた死星について話した。
「第5死星ユーランシア。あいつの能力は何だと思う?」
カイザックが少女に問う。直接戦闘した少女なら、確かにわかるだろう。
元男の少女は大体の予想はできていた。
「おそらく相手の能力を奪う能力。いや、『スキル』か……発動条件は相手に触れること。そして奪った能力は自身の力として使用可能」
「はは……流石。俺も同意見だ。せこい能力だ────もっとも、お前には効かなかったようだがな」
彼は少女の刀に軽く触れた。その瞬間にバチンと音がして弾かれる。
「おっと、妖刀とやらに嫌われたかな」
元男の少女は刀を剣帯から外し反対側へと置いた。
元の世界の力。これはおそらくこの『アストロ』では『スキル』に該当しないのだろう。
実質妖刀がなければ元男の少女はただの弱い人間なのだ。つまり『アイテム』に該当するのではないだろうか。だからユーランシアにも奪われなかったと思われる。
ちなみに、戻った記憶から妖刀や妖槍、妖杖などは総称して禍ツ器と呼び、触れていい相手を選ぶ。
────確か……そうだったはず
他にも色々と法則があったはずだが、流石に思い出せず。
手をさするカイザックにあまり触らないよう注意し、今度は少女から質問した。
「死星は何が目的なんだ?」
「……はっきりとした事はわからん。巷ではタチの悪い強盗集団だとか、愉快殺人集団だという噂もある」
「…………お前の見解は?」
さらに聞くと彼は黙り、チラリと少女を一瞥し肩をすくめた。
「誰にも言うなよ?まぁ、あくまで俺の見解だが────奴らは国家転覆を狙っていると踏んでいる」
「国家転覆……」
その考えが当たっていればとんでもない事だろう。
「それ、王様とかお偉いさんにでも伝えた方がいいんじゃないか?」
「はっ、こんな薄汚いやつのことをはいそうですかと信じると思っているのか?100%ないぜ」
「そうか……」
────まあ、俺には関係ない話だしな……
「『そうか』って、お前……はは、そんなもんだよな────ところでクロー、服屋に行ったそうだな────」
それからは他愛の無い話をし、夜が更けていった。




