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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編

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第314話 アーベルの領主







次の日────


クラウディたちは朝早くに少女の宿の下に集まった。


相変わらずのビキニアーマーであるが、アイラも来ている。


ティリオは肩から革の吊り帯を掛け、茶色のズボンを吊る、俗にいうサスペンダースタイルの服装。小綺麗でよく似合っていた。


カイザックは硬い生地のシャツに緑のベストを羽織っており、ズボンもよれたものでなくピッタリなズボンを穿いている。今までの印象とは違う服装に少女は感嘆の声が漏れた。


一行は、地図でいうダンジョンからやや南西方向の場所、少女の宿からさらに登った場所に向かった。


その頂上に領主の館があるらしい。


「こんなきつい勾配……領主はどうしてんのかな?」


ティリオが荒い息をしながら呟く。


「そりゃお前、魔法じゃねーの?」


と、アイラが反応する。


「そうなのか?」


クラウディは後ろを歩くカイザックを振り返った。


「さあ、興味ないな」


その返答につまんねえやつ、とアイラがため息を吐いた。


少女はチラリとアイラを見た。ここのところ一回も宿に帰ってきておらず、何処で過ごしているのか。


「アイラ、この後飯でも────」


「いや、私は用事あるから」


そして、気のせいかもしれないが話しかけても心なしか素っ気なく感じる。


一行は軽く話しながら────主にアイラとティリオが────歩き、やがて領主の屋敷に到着した。


立派な左右対称の大きな建物で、手前にアーチ型の大きな格子門があり門番が2人立っている。


一行が近づくと身分や用件を聞かれた。


「Aランクパーティの『レゾナンス』だ。ダンジョン攻略の件で参った」


少女が一応リーダーなので対応する。各々ギルドカードを見せると門番2人は頷き、少々待機するよう指示した。


10分ほどして壮年の執事が現れた。綺麗な白髪で片側に前髪を流している。


「お待たせいたしました。領主様がお待ちです。こちらへどうぞ」


ピシッとした姿勢で館を示す。


一行は一度、顔を見合わせ中へ入って行った。


屋敷は敷地内はかなり広く緑が多い。


屋敷の目の前まで来るがなかなか大きい。


執事の案内で両扉を開けて中に入る一行。広間の正面に幅の広い階段があるがそこは登らず、向かって左の客間に通される。


執事が扉を叩き、中から男性の入室を促す返答が聞こえた。


客間は中央に脚の高いテーブルがあり椅子がずらりと左右にある。1番奥にはもう一つ1人用のテーブルが設置してあった。そこに誰かが座っている。


ピシッとした茶色の礼装の中年の男性だ。ここの主人だろう。顔の堀は深く、整えられた口髭が印象深い。


「これはこれは『レゾナンス』の皆さん。ようこそ私、ソルノ・レイチェの屋敷へ」


屋敷の主であるレイチェは立ち上がると軽く一礼した。


それを見たティリオとカイザックが真っ先に深く頭を下げた。


────おぉ……カイザックが頭を下げている


「おい、おい!頭下げろ馬鹿2人!」


初めて見る仲間の姿勢に驚き、食い入るように見つめていると小声でティリオが注意した。


ティリオがアイラの腕を引っ張り頭を下げさせようとし、少女も慌てて頭を下げた。


「ははは!噂通りのパーティのようだね。良いよ、そんなに硬くならなくて」


領主はカラカラと笑うとソファに座って楽にするよう指示した。どうやらそこまで厳格な人物ではないようだ。


一行はそれぞれ向かい合って座り、楽な姿勢をとった。ティリオだけは肩が張っていて緊張しているようだ。


みんなが座ったタイミングで侍女たちが入室し、テキパキと食事を用意した。


ステーキらしきものやバゲットやサラダ、デザートにワインまで沢山おかれる。


待ってましたとばかりにアイラが手を擦り合わせてがっつこうとする。それを必死に止めるティリオ。


「さて────あぁ、はは、まぁ先に腹を満たしてもらおうか」


そんな様子のアイラを見て苦笑いするとレイチェは自ら食事に手をつけ出した。


ティリオもそれを見て掴んでいたアイラの手を離した。勢いよくがっつく女戦士。これがAランクの仲間だというので少し恥ずかしい。


少女も食べようとしたが、ふとカイザックやティリオが綺麗にナイフとフォークを使用しているのを見て手を止めた。真似しようとチラチラと観察する。


「ナイフは右手、フォークは左手だ。食べ物を食べるときはナイフで支えてフォークで口に運べ。音は立てるなよ」


カイザックが見かねたのか少女にだけ聞こえる声量で教えた。


────なるほど


少女は元々器用な方でありすぐに慣れた。ステーキは中まで火が通っており味付けもしっかりとしていた。


何の肉かわからないが、『アストロ』世界で食べた肉の中で1番美味いかもしれない。


「さて────そろそろ本題に入ろうか」


無心で味わっていると領主のレイチェが口元を綺麗にし口を開いた。


「まずはダンジョン攻略おめでとう」


果たしてダンジョンを攻略したと言えるのかクラウディは疑問に思った。


「喜びたいところだが、ダンジョンにはまだ下の階層があったように思えた」


「ダンジョンは最も高価であるアーティファクトを手に入れた時点で攻略と見なされるんだぜ」


「話には聞いていますよ。カイザック殿。他でもないあなたの部下から。まだ下層があったとか」


「ああ。だがアーティファクトは回収した。クロー?」


カイザックがクラウディにアーティファクトを出すように伝える。少女は懐から輝くアーティファクトを出した。


領主とその執事が息を呑む音が聞こえた。


「触っても?」


「構わない」


執事が綺麗なハンカチでそれを包んで領主に渡し、領主は手に取るとしげしげと眺めた。


「なるほど、これが『転移』のアーティファクト────どうされます?報酬として渡しましょうか?それとも報奨金で?」


先程のカイザックとの会話を聞くに、もうすでに色々報告を受けているのだろう。どんなものであるかも把握しているようだ。


「いや、俺はそれが欲しい」


クラウディは迷うことなくそう言った。大金を得ることも良いが、アーティファクトの獲得が目的だったのだ。使用回数があと1回なので大切にしなければならない。


「そうですか……ではコレを」


領主は残念がる事はなく、執事を介してアーティファクトを少女に返すと、それとは別にとある書類を2枚渡した。


受け取って、了解を得てその場で中身を改める。


────────────


冒険者クロー殿


領主の配慮より、ダンジョン攻略やその他多くの功績を称え、CランクからBランクへと無条件に昇格することとする。


なお特例故、昇格には本人の同意が必要であり本書類とギルドガードを持参の上、1度ギルドへ出向くよう。


────────冒険者ギルド


その内容はまさかの試験無しの無条件昇格だった。


驚いて目の前の男に顔を向けるとニコニコと笑っていた。


「アーティファクトを手にした君にはその資格は充分にあるよ」


おそらく彼が推薦してくれたのだろう。無条件でランクが上がるのは喜ばしいことだ。


少女は礼を言いもう一枚の書類を見た。宛先はアイラのようだ。


それを彼女に渡そうとしたが手を振って受け取らなかった。


「どうせSランクの打診だろ?いいよ面倒くさい」


「はぁ?!お前Sランクって一生安泰じゃねーかよ!なっとけよ!」


「えぇ……やだよ」


ティリオが興奮して説得するようだが、アイラの反応を見るにそれは難しいだろう。


領主は予想していたのか、それは残念だと苦笑いしていたが怒ってはいないようだ。


それから一行は少しダンジョン内の話を領主とし、一応死星が現れたことも話したが、カイザックから報告は聞いているのか大して驚いてはいなかった。


しばらくは街の警備を強めるそうだ。


「その件はこちらで対応するから、君たちは気にする必要はないよ。まあこれから慢心せずに頑張ってね」


それから一行は外まで見送られると解散となった。







「アイラ!」


屋敷の外に出ると、少女はすぐに何処かに行こうとする女戦士に声をかけた。


大通りに完全に出てしまうと追いかけられない。


彼女はティリオと何処か行くようだが、振り返らず立ち止まった。


「その……あのことは悪かった」


「…………行こうぜティリオ」


女戦士はティリオの手を引き、そのまま行ってしまった。何も答えないまま。


────やっぱり怒ってるよな……


一緒に宿に帰った後、寿命の件を再度謝ったが、彼女は気にするなと笑っていた。


しかしそれから宿に帰って来ないとなると原因はやはりそれしか思いつかない。


怒るという次元ではないかもしれない。


肩を落としているとカイザックが大きな手を少女の頭に乗せた。


「まあ元気出せよ。明日は宴だぜ?」


「宴?」


「おいおい俺たちを街のみんなが祝ってくれるって領主が言ってただろ?ダンジョン前でやるらしいから来いよ?」


「…………了解」


そういえばそんな事を言っていたなとクラウディはため息をついた。


「明日はエルフの衣装でしっかりめかし込んでこいよ」


「いや、だからあれは……」


「そしたら仮面をやるよ」


「…………了解」


2度と着ないと決めていたが、そう言われては着ないわけにはいかない。着るだけで無料で手に入るのならボロい。


少女が頷くとカイザックは上機嫌に笑い、足取り軽く去って行った。


「…………はぁ」


人混みに留まるのは苦手な元男は取り敢えず宿へと帰った。

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