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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編

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第310話 帰還






数日前


第??階層────


クラウディの周囲は激しい光が覆ったが、やがて収まり霧散して消えた。元の世界に帰ってきたのかと思ったが、そこは変わらずアーティファクトのあった空間だった。


「あ、れ?」


元男の少女は自分の身体を見回した。


────失敗……?


「クロー!」


「うぐっ!?」


アイラが飛びついた。泣きながら頬擦りする。


「うおぉぉ!良かったぁ!どこにも行かないで良かったぁぁ!」


クラウディは彼女を引き剥がしながらカイザックに顔を向けた。どういうことだと目で訴える。


「羽が散った。おそらく発動した証拠だが……ん~。わからん」


確かに少女が取った羽の内1枚は跡形もなく散り、新たに補充されているわけでもない。羽はあと2枚になっていた。アーティファクトの使い方は間違っていないはずである。頭に入って来た使用方法をそのまま再現したつもりだった。


────発動しても変化がないということは……


「俺は帰れない……ということか」


元男の少女は衝撃の事実にその場に立ち尽くした。


ここまでどれだけ時間を費やしたことか。たくさん助けてもらって、傷ついて。


カイザックを殺しかけるし、アイラなんて寿命を半分も失った。


────あんまりだろ……


そんな無表情の少女の肩をカイザックはポンポンと叩いた。


「まあ……その……元の世界には帰れなかったが……取り敢えず帰ろうぜ?」


「…………そう、だな」


少女は俯き手のひらのアーティファクトを眺めた。


────もう一度試すか……?


もしかしたら想像した場所が不味かったのかもしれない。記憶が完全に戻っているわけではないのだ。何かしら差異が生じているのかもしれない。


────だとしたら流石に不確かなことには使えないか


回数はあと2回。ここで往復分使えばあとの2人が安全に帰れないし、実質もう片道だ。そうすると2人には借りは返せなくなる。


ならば借りを返した後、もう少し記憶が戻ってから試すべきだろう。


────まだ……まだ希望はある


クラウディはそう信じて気を取り直し、仲間に近くへ寄るよう伝えた。


カイザックとアイラが少女の指示のもと近くに来て肩に手を置いた。


「忘れ物はないか?」


「クロー、インベントリとかいいのか?」


────あ~……


アイラに言われて一瞬どうしようかと揺らぐ。しかしもうそんな猶予はないし、探すにしてもモンスターの死体が消えるまで待たないといけない。


残念ながら諦めるしかない。


「いい……先に帰ろう」


少女はそう決めて『転移』のアーティファクトを掲げた。目を閉じて思い浮かべるのはダンジョンの外の魔法陣のような床。


再び目を開けると千切っていた羽を空に放った。すると眩い光が3人を包み、やがて球体となる。


そして縮んだかと思えば弾けるように消えた。


アーティファクトのあった空間には誰もおらず、何もない空間だけがポッカリと空いた状態となった。







ティリオたち一同は湖のショートカットを利用したりして出来るだけ早くダンジョンから出ようとした。


道中にモンスターがかなり出てくるが、Aランクレイドでもあり、難なく倒すことができ問題はなかった。マップも完成されていたので最短ルートで脱出することができた。しかしそれでもやはり外に出るのに4日はかかった。


マティアスたちのことは取り敢えず置いといて協力体制を取り、すぐに各パーティが備品を補充してその日の半日後には再びダンジョンの近くで合流した。


「よし、みんな準備はいいね!」


レオナスが指揮を取り辺りを見回した。新たに別チームも入れているのでティリオも入れて13人である。


全員顔を見合わせて頷き了解を示した。


「マティアスも……色々思いはあるのかもしれないけど今は協力して。いいね?」


「わかってる。甘んじて罰は受けるさ」


マティアスがそう返答するとレオナスはニコリと笑い、剣を掲げた。


「これより第15階層より下へ落ちた人命救助を開始する!」


「おおおお!!!!」


全員が拳を掲げ、小さなリーグットも張り切って拳を突き上げた。


────待ってろよ!!


と、その時、ダンジョン前の魔法陣から眩しいほどの光が発せられ、その場にいたティリオたち、その他多数の冒険者は悲鳴をあげ顔を覆った。


「ま、眩しい!」


「な、なんだ?!」


「何が起こっている?!」


「見ろ!誰かいるぞ!」


そんな声がそこら中から聞こえてきて、目が慣れてきた頃にすでに人だかりの出来ている場所にティリオたちも足早に向かった。


人混みを掻き分けていくと誰かが警戒したように辺りを見回していた。


「クロー……カイザック……アイラ」


ティリオは3人の名前を呟き、まだ状況が飲み込めていない3人の元へ駆け出した。


そのまま一番近くにいる少女に抱きつく。


「う、うおっ?!ティリオ?」


よろめきながら少女はティリオを受け止め地面に下ろした。


「泣いてるのか?」


「うるせー!馬鹿が!心配かけさせんなよ!馬鹿が!!」


悪態をつきながら泣くリーグットの拳を受け止めながら少女は悪かったと謝った。気が済むとカイザックにも殴りかかり、アイラにも同じようにしていく。


「クロー君……かな?……無事かい?」


レオナスが少女の前に来て見つめる。仮面もどこかに落としたか、壊れたかして今は素顔だった。


「ああ……心配かけたか?」


「いいや、君なら帰ってくると思ってたよ────ん?それは?」


彼は少女のもつ勾玉のような物を指差した。


「……悪いな。アーティファクトだ」


「アーティファクト?!2つ目があったのかい?!────あ!!」


思わず叫んでしまいしまったと自分で口を塞いだが遅かった。


「おい、聞いたか?!アーティファクトだってよ!」


「嘘だろ?!いやいや信じねーぞ!」


「馬鹿見てみろあの輝き!それにこいつら急に現れたぞ!」


「確かに!こいつら急に現れたもんな?!攻略した証拠だろ?!」


そんな声がそこかしこから聞こえ、やがて取り巻きが一斉に押し寄せて来た。


「?!」


クラウディたち冒険者に祝福の言葉をかけられながら激しく揉みくちゃにされた。


カイザックはグロッキーになり、アイラは何人か殴り倒し、少女はアーティファクトを落とすまいと縮こまっていた。


その日、ダンジョンの攻略者が出たことでダンジョン前は大賑わいになった。

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