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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編

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第306話 失ったもの







クラウディは顔を上げ、改めて辺りを見渡した。


現在居る、かなり広大なフロア。谷の底なのだろうか、その地面には夥しい数のモンスターの死体が転がっている。


────なんて数だ……


最後にはっきりと覚えているのは力を使い果たして落下する浮遊感だ。それからのことは覚えておらず、あとはカイザックと戦った時の情景が画像のように頭に張り付いているだけだ。


『またね』


「……?」


一瞬どこかで聞いたような声が頭に響いたが、よくは思い出せず。


その後、クラウディは思ったよりかなり消費はしてしまっていたものの、まだアイラから貰った生命力のおかげで余裕で動けた。なので、モンスターが蠢いていた場所からやや離れた岩棚に移動し、比較的隠れることが出来そうな窪みを見つけたので、そこに2人を横たえた。


カイザックの方はもう安定していて問題はない。


アイラの方が今は1番深刻だった。失った寿命がどれほど影響を及ぼすのか、それをどうしたらいいのかわからない。今ある力を全て返そうとも思ったが、そうするとこの階層で生きながらえるのはきついものがある。


それに今の少女の力を戻したとしても2割も戻らないだろう。生命力の大きさからして、アイラの寿命があと長くて80年としたら、約半分奪ってしまったと考えられる。


それでも少女はアイラの額に手をやると僅かだが力を返した。やつれた表情が少し和らぎ、目を開けた。


「クロー……?」


「起こしたか……」


「良かった……上手くいったんだな」


「ああ、助かった……」


「…………」


アイラは笑って少女に手を伸ばした。クラウディは頭を下げ触らせると、導かれるままに唇を重ねた。


今の少女にはそれくらいしかできなかった。


「へへっ……少し、寝るわ」


やがて離れると女戦士は目を閉じて眠ってしまった。


「ああ」


1人少女は呟き、2人が起きるまで見張りをすることにした。


────さて、どうやって帰るか……







少女は2人が起きるまで辺りに敵の気配がないか気を配っていた。本来ならスライムでも見張りに立てたかったが生憎どこにいるのか分からない。


インベントリも失ったので野営も何もできなかった。


せいぜいカイザックのインベントリからランタンを取り出して灯りをともすくらいだった。他にも魔道具かガラクタかわからないが色々な物はあったが、生憎使い方が分からず。


幸いモンスターの影も気配も全くなく、体感的に丸1日経ってからカイザックが目を覚ました。


「…………」


「起きたか」


ゆっくりと起き上がった情報屋に少女は声をかけた。視線が合い、少しの間沈黙が流れる。


「記憶が曖昧だが……お前が助けてくれたのか?」


少しして彼は口を開いた。少女は首を振り、横になっているアイラを顎で示した。


「力は俺のだが、アイラのおかげだ」


元男の少女はカイザックに彼が意識を失ってからのことを話した。唇を重ねたことは言わない。


「ちっ……俺としたことがこいつに助けられるとはな」


彼はアイラの側に行き鼻を突いた。今はアイラの様子もいつも通りでうざったそうに寝返りを打った。


「お前自身は大丈夫か?」


不意にカイザックが少女の方を向きそう尋ねた。


「ああ、その節は迷惑をかけ────いや、たす……ありがとう」


「ははっ。わかってるじゃないか」


クラウディが丁寧な口調に替えると彼はニヤリと笑い、インベントリから水を取り出した。続けてパンや干し肉も取り出す。


それを少女にも渡し、アイラの側にも置いた。


「食料はあまりないようだが?俺のインベントリはなくしてしまったし」


「あー、それは痛いな……まあ帰る算段もあるし大丈夫だろ」


「……そうか。……………………あるのか?!」


さらりと帰る手立てのあることを言う彼の言葉を、危うく聞き流そうとしてしまった少女は叫んだ。


正直どうやって帰るかずっと考えていたのだ。


少女の妖刀の力で作った円盤は乗ったりすることもできるので、それを駆使して落ちてきた穴まで登っていこうかと考えていたのだ。ただ、円盤は砕くと力が少し漏れるのでいちいち回収しなければならないし、上に着く頃には大分消費してしまう。


それか別の道がないか辺りを散策することも考えたが、残りの食料を勘案するに難しいだろうと思った。


そうやってあとの2人が気を失っている間に色々思考を巡らしていたのだが、先程の彼の言葉に、その行為は無駄になってしまったと悟る少女。


「俺が渡したアーティファクトはあるか?」


「え、ああ────あれか?ん?アーティファクト?」


「説明が出来てなかったが、あれはアーティファクトを探すアーティファクトなんだ。誰にも言うなよ」


さらりととんでもないことを言いだすカイザック。アーティファクトを探すアーティファクトなどダンジョン攻略を根底から覆すようなものだ。


それがあれば真っ直ぐ、最短距離で手に入れることも出来るだろう。独り占めにして一生安泰な暮らしができる。


少女は渡されたアーティファクトを懐から取り出した。手のひらに収まるガラスの玉は針が浮いており、どこかを指している。


「その針の方向にアーティファクトがある」


一行の現在地はわからないが針は水平で、今いる空間の外をついている。


────場所がわかる……か


それにしてはカイザックはしっかりとどの階層にあるのかも知っていた。正直これだけではそこまではわからないのではないか?


それを情報屋に伝えると、やれやれと首を振った。


「そこに気づくとは流石だが……そのアーティファクトだけでも禁則事項なんだぜ?教えれないな」


「…………」


もうこの際教えて欲しいものだが、クラウディはそれ以上は追及しなかった。


「それで帰る算段とは?」


「ん?わからないか……まぁそれは大丈夫だろうから、取り敢えずこいつが起きるのを待つ。アーティファクトを探してもいいが流石に置いてはいけないからな」


「……了解」

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