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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編

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第303話 生命エネルギー







「あ……え、か、カイザック?」


何が起こっているのか理解できないクラウディは刀を抜き、脱力する彼の身体を支えた。


よく見ると少女の身体は妖刀の刀身のように全身蒼白になっていた。身に纏っている物も元男の時によく羽織っていた外套によく似ている。


────なにがどうなってる?!


少女は慌てて乗っていた円盤を消すとアイラのいる地面に降り立った。ゆっくりとカイザックの身体を横たえる。


「クロー?だよな?」


おずおずと女戦士が近づいてくる。


「あ、ああ……一体何が────いやそんなことより……」


状況が飲み込めていない少女であるが、取り敢えず先にカイザックの状態を確かめた。身体の至る所に斬り傷があり出血が激しい。


特に先程少女が刺したであろう胸は肺を裂いている可能性がある。その証拠に彼の呼吸からヒューという音と水音が聞こえる。


クラウディは自分の腰に手をやりインベントリを探ろうとした。


「!!」


しかしそこには何もない。きっと戦っているうちにどこかに落としてしまったのだ。


「アイラ、回復ポーションはあるか?」


「いや……さっきモンスター倒したときに全部使っちまった」


アイラは申し訳なさそうに返答する。それは仕方のないことで責めようがないだろう。


ならばカイザック自身のインベントリを探るしかない。


少女は彼の身体を探りインベントリを探し出した。しかし不意に腕を掴まれる。


カイザックが意識を取り戻したのか、咳き込み呻いた。


「おれの、ことはいい……」


「何を言ってる?離せ、回復ポーションくらいあるだろ」


「もう……ないさ……」


────ない?そんな馬鹿な……


彼は少女の手を離すと自身でインベントリを探った。そしてとあるものを取り出す。直径5cmくらいのガラスの玉だ。中に尖った針のようなものが浮いており、揺れている。


「ここに……このフロアにアーティファクトが、ある……こいつを、持って行け」


弱々しく震える手を少女の手に重ねて魔道具を渡す。


「冗談はやめろ……回復ポーション、あるんだろ!」


クラウディは手をインベントリに突っ込み、ごちゃごちゃした中、細長い瓶を探した。


────どこだ……クソ……物が多い!


「がふっ、ごほっ……ヒュ-……ははっ、ないって……」


カイザックは咳き込んで口端を歪めた。いつもの冗談じみた感じが一切なく、目も虚だった。


このままでは彼は死んでしまうだろう。


「俺が……やったのか?」


「…………」


彼は答えない。少女が側にいるアイラに視線をやると彼女はバツが悪そうに目を逸らした。


────記憶が……ない


しかし状況的にクラウディが彼を刺したのは間違いないのだろう。何らかの理由で少女が刺してしまったのだ。


「痛っ」


一瞬、頭痛が襲い、その時の情景が蘇る。


────暴走……したのか


細かいところは分からないがそう理解した。何らかの理由で妖刀の力が暴走したのだ。


アイラとカイザックはそれを止めてくれたのだ。身を挺して。


「クソ!」


少女は止まらない血を止血しようと手で胸を押さえた。


────針と糸!いやそんな物ない!


「はは……」


どうにかしようと躍起になっている少女を見てカイザックは微笑んだ。


「何を笑ってる?何で俺なんか助けた……」


「さぁ、な」


「落ちたのなんか俺の油断だろうが!」


元男の少女は思わず声を荒げた。強く胸を押さえるがそんなもので血など止まらない。


「……そう、かもな」


────このままでは俺のせいで……


必死に頭を回すが、解決策が見当たらない。やがてさらに記憶を探ろうとして強い頭痛が襲う。


似たような状況がなかったか、この状態からでも好転する何かがないか構わず探した。


「ぐぅっ!」


酷い頭痛に頭を抑え、顔を歪める。と、誰かの手が頬を触った。その手は大きいが冷たかった。


「……もう、いけ」


「…………カイザック」


少女は力無い彼の手を掴んだ。視界が滲みぼやける。


「かわいいな、お前は……」


「馬鹿なことを言うな……お前には借りがたくさんあるんだ……こんなことで死ぬな」


「相変わらず無茶言う……そうだな、……キスでもしてくれたら…………にして────」


「なにを────っ!」


────キス?


元男の少女はそこで古い記憶が一瞬脳裏によぎった。


いつか金髪黒ドレスの女が、元男を助けるために行ったとあることが浮かぶ。


────出来るのか?俺に……アレが


今や少女の身体には力が満ちており、何とも言えない全能感があった。何でも出来る、そんな感覚だ。


「クロー、カイザックはもう……」


アイラが硬直する少女を見て言葉をかける。それにクラウディははっと我に返り、カイザックを見下ろした。


すでに目を閉じてしまい、呼吸が徐々に緩慢になっていく。


もう時間がない。迷っている暇はない。


元男の少女は目を閉じて意識を身体にやった。力がグルグルと体を巡っており、それを出来るだけ細くし腹に持ってくる。


────よし、行ける……


元男の少女はカイザックに覆い被さり、顎を上げさせると彼の唇と自分の唇を重ねた。隣から息を呑む音が聞こえるが知ったことではない、それどころではない。


────く、タバコ臭い……


そのまま息を吹き込むように少女の力を、口を経由してカイザックの体内に移動させていく。


その瞬間、クラウディはあの真っ白な空間に来ていた。


『…………』


『……何をしている主よ』


元男の少女はうずくまっており、顔を上げた。


真っ白な地平線を背に例の奴が仁王立ちで立っている。()()()()簡易な狩衣を纏った女の姿だ。髪は白く獣の耳と二股の尾が揺れている。


『…………』


『それはやってはいけない』


『…………これしか、方法がない』


『我は主しか興味がない、他の物なぞどうでも良い』


『…………』


『寿命を削ってでも助ける命か?』


『あいつがいなければすでに死んでいた』


『…………主よ……後悔するぞ』

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