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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編

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第300話 2匹の化け物







結局、いくらか滑ってしまいながらも何とか降りていく2人。その間も、間違いであってくれとカイザックは何度も『探知』スキルを使用した。


しかしそんな間違いなどあるはずもなく、下層から夥しいほどの気配が伝わってくる。


「止まれアイラ!」


「ええ?!止まるったって────いいっ?!」


勢いよく降りて行った彼女は急に止まれるはずもなく、行く先が急に途切れて地面がなくなっているのを確認し短く悲鳴を上げた。


慌てて大斧を抜くと壁にガリガリと当てていった。徐々にスピードダウンし、わずかに反り返った地面のギリギリ端で止まる。


「ふぅ……って離れろよ!」


カイザックも止まるためにアイラの腰に手を回していた。振り払われて両手を上げる。


2人は滑らないよう注意しながら端から頭を出し、暗い眼下を見下ろした。下のフロアは広大な広さでランタンの火がなくても僅かに灰色の輪郭が見えた。


そして息を呑む光景に出くわす。


一体何匹いるのか、何百、いや下手したら何千といるのではないというモンスターが波のように蠢いていた。呻き声が合唱のように聞こえてくる。


「こ、これ全部モンスターかよ……」


「そう……みたいだな」


────モンスターハウス……というレベルじゃないな……これはもう……


カイザックとアイラは首を引っ込めてへたれ込んだ。


クラウディの姿が近くには見られない。経過している時間からして、下に落ちていたとしたらもう遅いのでないか。


このモンスターの数は無理だろう。


カイザックはタバコを取り出して火をつけた。ゆっくりと吸って煙を吐く。


「…………」


「…………まだ……まだだよな」


アイラはよろよろと再び端から下をのぞいた。今更何をするのか、取り敢えず降りようとするのなら全力で止めなければとカイザックは身構えた。


「クロおおおおぉおおぉおお!!!」


彼女はなんと大声をあげ名前を呼び出した。近くにいたカイザックはその大きさに思わず耳を塞いだ。


アイラは声が枯れるまで何度も何度も叫んだ。


いくらか眼下のモンスターが気づいて下に集まるが流石にここまでは来れない。よく見れば上層階のボスモンスターの姿もちらほら見えた。


やがて彼女の声は嗄れ、崩れるように膝をついた。


当然辺りからは他に何の反応もない。仮に少女が戦っていたとしても下を見るにそんな様子はない。


つまりすでに死んでいる。


「…………」


「…………」


2人はしばらくモンスターの大群を眺めていた。体力の回復も兼ねてだったが、もしかしたらという希望もあったのかもしれない。


しかしクラウディはいなかった。何度『探知』を発動してもこの数を見分けることは出来ない。


カイザックはタバコを吸い終わるごろに啜り泣いているアイラの肩に手をかけた。


「かえ────」


『帰ろう』と口を開こうとしたが閉じた。どこかで大地を揺るがすような振動を感じたのだ。


一旦収まったが、再び振動がし、徐々に近づいてきている。


「ぐすっ……ん、なに?なんだ?」


アイラも感じ取ったのか眼下に視線を落とした。カイザックも注視していると、モンスターの大群がより集まっている所から何か光る物体と、別の黒い影が飛び出してきた。


その二つは空中で何度かぶつかると地面に着地する。


光る物体はどうやら細長い生き物のようで、しかしその面には目がたくさんあり、ぎょろぎょろと化け物のようだ。


もう1匹は黒い翼の生えた、真っ黒なオーガのような風貌だった。どちらもかなり大きい。


その2匹は睨み合っていたが、群がってくるモンスターがうざったいのか薙ぎ払ったり斬り刻んだりし始めた。


その最中にも2匹はぶつかり合い、やがてお互い口を開けると白と黒の円盤を出して波動砲を放った。


その絵面はこの世の物とは思えないほど壮絶で、絵物語で見たドラゴン同士の争いのようであった。


辺りにいたモンスターは波動砲同士がぶつかり合う衝撃で軒並み弾け飛んだ。


やがて2匹の攻撃は互角なのか弾けるように霧散し、再び睨み合う。そしてお互いの様子を窺うかのようにゆっくりと動き始めた。


と、ふと黒い方が上を向き、カイザックたちと目が合った。


その瞬間に波動のようなものが吹き抜ける。


同時に上から見ていた2人の背中にどうしようもない恐怖と絶望感がのしかかった。


14階層で感じたアースドラゴンを凌駕するほどに強く、息すら出来ないほどである。


────気づかれた?!……死


その感情だけが支配する。2人は殺されると分かっていても威圧感でその場を動けず。心臓だけが張り裂けそうなほど脈打つ。


しかし黒い化け物は視線を逸らして目の前の化け物を一瞥し、翼を羽ばたかせて飛び立つと、下に通じるであろう巨大な穴に入って行った。


白い化け物の方はその場に残り、なおも襲ってくるモンスターに注意を引かれて切り刻んだりを再開した。


「く、クローだ……」


「は?」


────何を言ってる……


カイザックは早く逃げるぞ、とアイラの肩を掴んだ。さっきの黒い方はどこかに行き、白い方はモンスターの相手で忙しい。逃げるなら今だ。


しかしアイラはその手を振り払い指差した。


「クローだってあれ!」


そう言い指差すのは白い化け物だった。


────あれが……あいつだと?


「そんな馬鹿な……」


「さっきの円盤!あれクローのと一緒だった!それに────」


「…………」


「何となくクローって、最初見た時思ったんだ」


「何を────」


カイザックはそんな馬鹿なと一蹴しようとした。しかしアイラは真っ直ぐに彼を見た。その瞳はとても澄んでいて否応のないものを感じた。


戦士の職である彼女の特性として土壇場で当たる『勘』というのがある。


未だこの世界ではわからないことが多い。『戦士職』は一般的で大したものではない。しかしそれをここまで昇華した人物は他にいない。


カイザックは彼女のことが嫌いであるが、果てしない努力とその土壇場の勘は評価していた。


────だからと言ってあんな怪物……


彼は化け物をよく見た。あれがクラウディだと誰が思うだろうか。似ている部分などカケラもない。


共通するところなど、剣の力というもの、それが刀身が白いというのと、化け物が白いというかけ離れたものだ。


「…………」


カイザックはふと気になり、望遠の魔道具を取り出して白い化け物を覗いた。


望遠の魔道具はハッキリ見える所で使えば最大30倍まで拡大ができる。


動き回る化け物でなかなか捉えるのが難しいが、彼は何とか確認した。


「はは……まじかよ」


「なんだよ、何があったんだよ」


「お前の勘は当たりだ」


「え?」


カイザックは口端を上げた。化け物の二股の尾の先にある剣。


あればクラウディのものだった。

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