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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編
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第216話 紳士のティリオ







ティリオは遅くまで他の男2人とチェスに熱中しており、いつの間にか寝てしまっていた。


「げっ……」


目が覚めて目を瞬くと目の前に仮面の男の姿があった。仮面の男が寝ぼけて抱きついてきたのかわからないが、寄り添うように横になっている。


────男と抱き合う趣味は無いぞ、クソ


離れようと仮面の男の胸を押しやるが、柔らかい感触に違和感を覚える。


「…………ん?」


はだけた服から紐の解けた黒い胸サポーターが見え、よく見れば本来あるはずのない大きな膨らみが目に入った。


触っている胸を再度揉むと柔らかい弾力が返ってきた。


「うわぁ?!」


慌てて手を引っ込めるティリオ。その声に仮面の男は目が覚めたのか頭を上げ、身体を起こした。


その際に付けていた仮面が外れて落ち、素顔が目に入る。女の子らしい端麗な顔が。


「あ、あ、お、おま、お前!女だったのかよ!?」


ティリオは指差しながら後ずさった。思った以上に綺麗な顔に気圧される。


少女はなんとも無いという風に欠伸をし伸びをし出した。


「おい!無視すんなよ!」


「……別に隠してるわけじゃなかったが」


「声も変えてんのか!」


いつもの低い男の声でなく、高い女の子の声に変声にも気づく。


「わざわざ言うこともないと」


それだけ言い彼女は落ちた仮面を再び装着した。


「いや言えよ……ていうか前隠せって!」


揺れる胸に慌てて目を逸らすティリオ。顔が熱くなっているのを感じた。


「ああ、悪い」


布擦れの音がし、それが止むと再び少女に目をやった。いつものゆったりした服の見慣れた格好であるが、女だとわかってもう男としては見れなかった。


────そういえばカイザックが口説くとかどうとか


カイザックと少女のやり取りでそんな場面があったと思い出したティリオは、おそらく自分だけが知らなかったのだと気づいた。


そうとわかって憤りと彼女に対して尻を叩いたりデリカシーの無い行動をしてしまったと自責の念に駆られる。


「何で男装なんか?」


「…………まあ色々あってな」


少しの沈黙の後小さい声で返ってくる返答。その様子に何かを悟る。


────馬鹿か俺は!


そうまでして隠していたのだから並々ならない理由があったのだ。それを責めるのは紳士としてやってはいけない事だと瞬時に理解する。


「ん、んんっ!まあ、何だ……取り敢えず今後は寝る時はアイラのとこで寝てくれよ」


咳払いするとそう伝えた。


「わかった」


と、少女の後ろからケラケラと笑う声がした。カイザックだ。


「てめー!聞いてたな!お前も人前でこいつ口説いてんじゃねーよ!ふざけんな!」


ティリオは腕を振り上げて少女の脇をすり抜けると殴りかかりに行った。当然カイザックには片手で制されることになるのだが。







そんなこんなで時間が経ちスライム少女が起こしに来たことで野営は終了し、一行は片付けると円になって今後の予定を話し合った。


「ここら辺のマッピングは終わったからあとはどこを目指していくかなんだよな……どうするクロー?」


ティリオが横にいるクラウディに顔を向けた。先程の件もあり物理的に少し距離が開いていた。


少女はこの広大な空間をどう期間内に攻略していくか皆目検討つかなかった。カイザックなら何か知っているかもしれないが、聞くのは最終手段としておくほうがいい。


クラウディは正面にいる女戦士に目を向けた。


「アイラはどう思う?」


こういう時は野生の勘に頼るのが良いだろう。何となくそんな気がした。


「え、私か?え~?うーん……取り敢えずど真ん中突っ切って行こうぜ!」


「…………安直だなぁお前」


洞窟から真っ直ぐの方向を示す戦士にティリオは苦笑いした。


「それで行こう」


「まじかよ」


少女が賛成の意を示すと驚きの表情に変わるガイドポーター。慎重な彼にとってはあり得ないことかもしれない。筋道を立てて堅実に攻略していく、そんなイメージが小さなガイドポーターにあった。


「進まなければ始まらない」


「そうだけどさ……もっとこう作戦とか……はぁ」


ティリオは諦めたようにため息をついた。彼自身も特に何も浮かばないのだろう。


一行は荷物を確認し、文字通りど真ん中を突っ切って進み出した。


平原の丘を下った後の川は岩が幾らか飛び出しているのでそれを伝って行った。途中ティリオが転けそうになるがクラウディが手を伸ばして手首を掴んで防いだ。


「あぶねー!サンキュー!」


川を渡ると背の高い草が一面に生え、それをかき分けて進んでいく。ティリオは頭しか出ていなく、草が顔に当たるため悪態をつきながら進んでいた。


それを超えると木々の間隔の広い森へと入る。6階層のような大木はないし見晴らしも割と良い。


枯れ葉が時折パラパラと落ちてきて、地面にはその葉が重なってクッションのような感触である。クラウディが足で葉を退けると黒い腐葉土が出てきた。


────一体どうなってるのやら……


今だに広大な空間が信じられない少女は仕切りに辺りを見回していた。空は相変わらず晴れており、雲も移動している。


「ここら辺で一旦マッピングしても良いか?」


「了解」


少女が頷くとティリオが荷物を置きマッピングを開始した。羊皮紙を取り出して歩きながら辺りを見回て筆を走らせ、書き足していく。


クラウディは後の2人にはその場に待機させ、リーグットの護衛としてついて行った。


「悪かったな……さっきは取り乱して」


筆を動かしながら謝るティリオ。


「なんのことだ?」


「いや女だ男だで騒いだことだよ!」


────その件はもう終わっただろ……


「女と気づかずに尻とか叩いちゃったし……デリカシーなかったよ」


「別になんとも思ってないが……」


少女は確かに隠してるわけではなかったが、敢えて伝える必要もないと思う部分はあった。


今思えば女扱いして欲しくなかったという思いもあったのだろう。魂は男であるのでティリオに男扱いしてもらうのが少し嬉しかったように思える。


そうする事で自分はより男なのだと自覚しようとしていたのかもしれない。


2人はそれ以上は話さず黙々とマッピングをこなしていった。


「出来た!よし戻ろう」


ティリオが羊皮紙を掲げるのでどんなものかと少女が覗こうとしたら隠される。


「見んなよ!恥ずかしいだろ!後で清書するんだから!」


「そうか……」


少し残念に思いながらも仕方ないなと待たせていた2人の所へと戻った。


「待たせた、行こう」


「うい!カイザックと待つのはキチィぜ!」 


アイラが戻って来た2人の姿を見るとポニーテールを跳ねらせながら側に来た。カイザックの方は木に寄りかかってタバコを吸っていた。


一行は森の奥の方へ進んでいき、次のマッピング地点へと到着した。今度はティリオは1人で行くというので任せていたが、10分ほどして悲鳴が聞こえてきた。

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