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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編
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第213話 魔法弓①







第8階層────


また鍾乳洞のような洞窟へと戻る一行。足元には水が流れており歩くたびに誰かが踏んで水音を立てた。


「また下の階層に着くにはどれくらいかかる?」


少女は地図を見ながら歩くガイドポーターに尋ねた。


「うーん……また別のところから降りるほうが近いな。ここから大体20分くらいかな」


────まあその程度なら全然


しかし少女やカイザックはなんともなかったが、他の2人の腹からは仕切りに虫が鳴っていた。


時間的に昼は当に過ぎている時間である。


「腹減った~……クローの飯食いて~」


「俺も安心したら腹減ってきたなぁ……」


腹減りの2人が呟く。しかし休憩を取ろうにも何が出てくるかわからない場所ではゆっくりできないだろう。次のセーフポイントまで耐えてもらうしかない。


一行はモンスターに遭遇しないように願いながら先を進んでいった。


しかし不運は続くモノ。洞窟がやや縦長になって広くなった時にふと天井にぶら下がる大蝙蝠が目に入った。ざっと数えて5匹。


それを見て全員動きをピタリと止める。


「ブラッドバッターだな……」


カイザックが呟く。


「どうする迂回するか?」


「でもまた迂回するとなると1時間くらいかかるぜ?」


少女がティリオに尋ねるとそう返答が返ってきた。流石にまた長距離歩くのはしんどいものがある。


大蝙蝠は既にこちらに気づいており様子を伺っているようだった。彼らの下を通るといっても十中八九襲ってくるだろう。


となると先に先手を打ちたいが先程マナを消費したので魔法は使えない。アイラかカイザックに任せるしかないようだ。


アイラに目をやると意図を察したのか頷き手斧を取り出した。しかし彼女の隣にいるカイザックが手で制した。


「いい、筋肉女。俺がやる」


珍しくそう言うと別の弓をインベントリから取り出した。豪華な金縁の装飾のなされた白い弓だ。それを見てティリオの息を呑む声が聞こえた。


カイザックは矢を持っていないが、弓の蔓を引くと青白い矢が出現しそのまま狙いを定めた。


大蝙蝠はまだ動かず、彼がそのまま矢を射ると目にも止まらぬ早さで飛んでいき、スパンッと頭を貫通した。絶命した蝙蝠が地面にドタリと落ちる。


それを見た仲間の蝙蝠が襲い掛かろうと飛び立つが続け様に撃ち抜かれ次々と地面に落ちて行った。


「終わった」


彼は息をつくと弓をインベントリにしまった。


「は……はぁ?!それ、魔法弓じゃねーかよ!!」


あんぐりと口を開けたままのティリオだったが、時が動き出したように叫んだ。


「お前、そんなもの持ってたのか」


クラウディも驚きカイザックに言った。済ました顔のカイザックは企業秘密だと肩をすくめた。


「こいつは色んなの持ってんだよ……いちいち驚いてらんねーって」


やはり女戦士は情報屋と何かしら接点があるのだろう。アイラだけは驚いてはおらず口を尖らせてそう言った。


「属性武器と魔法武器は違うのか?」


「まあ似たようなもんだけど────」


魔法武器────

属性以外の特殊な物を指す。体内のマナを使用して効果を発動するものが多い。


簡単に説明するリーグット。


「カイザックのはどう言う物なんだ?」


「多分マナを使って矢を生成するんだ。込めるマナによって矢の威力も上がる、だろ?」


「概ね正解だな」


小人の見解にカイザックは口端を少し上げた。


「ちなみにいくらするんだ?」


ティリオが剥ぎ取り道具を取り出し始めた側で少女が小声で尋ねる。


「さぁ、モノによるけど……装飾もすごかったし取り敢えず3桁は行くんじゃない?」


────3桁?!


アイラはああいったモノを彼はいくつも持っているという風な発言をしていた。情報屋のインベントリを奪えばこの世界で一生暮らしていけるのではないか?


────元の世界に帰る時に持って帰れないか?


もしこのダンジョンで目的のアーティファクトを手に入れたら、元の世界に持って帰って売れば一財産になるだろう。


カイザックは抜け目ないので奪うのは一筋縄ではいかないが隙を見れば掠め取ることもできるはず。


────そもそも持って帰れるのかどうかが問題だが


「おい、おいって!行くぞ」


色んなことを悶々と考えているうちにブラッドバッドの剥ぎ取りが終わったようで、荷物を背負い直したティリオが反応の鈍い少女の足を突いた。


「あ、ああ……了解」


「しっかりしろよ!」


彼はクラウディの尻をパンッと叩き進み出した。


一行は再び進み出し、5分もすると下の階層に行く通路へと到着した。


その通路に入ろうとティリオが足を入れるがふと止め振り返った。


「セーフポイントはないから……どうする?適当に通路で休むか?通路は基本的に安全と思うけど……まあさっきみたいに追いかけられた時は別だけど」


「休めそうなところがあったら休もう」


クラウディが返答すると彼は頷き、通路へと入って行った。あとの2人も続く。


上がってきた通路よりは広く、背の高いカイザックもなんとか立ち上がれるが石筍が時折飛び出ているので注意が必要だった。


中程まで降りると割となだらかで、壁の窪みに水が溜まっている場所があり、そこで休憩することにした。


「クロー……メシ~」


アイラが壁に持たれて座ると空腹を訴えた。流石に現在の場所で何かを作る気にはなれず、どうするか、インベントリに何かあったかと思い出そうとする少女。


「ほらよ」


見ていたティリオが自分のインベントリからオーク串を取り出した。インベントリ内はほとんど入れた時の状態が保たれるのでまだ湯気が立っていた。


アイラが目を輝かせ受け取るとかぶりついた。その匂いと旨そうに食べるアイラの姿にゴクリと生唾を飲み込むクラウディ。


オーク肉の串焼きはこの世界で一番の好物である。


じっと見ているとほらよとティリオが同じモノを取り出して少女に渡した。


彼はカイザックにも渡し、足りないだろとそれぞれもう1本ずつ配ってくれる。


少女も肉にかぶりついた。肉汁が溢れ、塩味もいい塩梅に効いていてうまい。おそらく地上の出店で買ったのだろう、似た味付けであった。


「おい!酒は飲むなよ!」


ティリオが酒を取り出して開けようとする戦士に注意する。


「えー?!いいじゃん!串焼きはマジで酒に合うんだって!」


「酒飲むならもうやらないぞ!」


「ちぇ、ケチ!」


悪態をつきながらも酒を仕舞うアイラ。一気に肉を頬張る。


カイザックは特に何も言わずにもくもくと食べていた。


みんなの腹がある程度膨れ、体力も少し回復した所で荷物をまとめて下層に向けて出発した。5分ほどで第9階層へと到着し、広い洞窟へと出る。


ティリオに聞くところによると別ルートで行くので歩いて30分ほどで第10階層へと到着する予定だそうだ。何もなければ。


正直先程のフロントワームはボスなのでしばらくは出現しないだろうが、割と疲労があるのでモンスターに遭遇したくはない。


しかしそんな思いとは裏腹に起こるのがダンジョンである。


先頭を歩くクラウディは何かの気配を察知し、ピタリと動きを止めた。

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