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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編
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第204話 第7階層①







作った料理は結構な量があったが空になり、水場で鍋を洗った。ティリオが側に来て手伝う。


「最初は胡散臭い仮面野郎って思ったけど案外器用なんだな」


思ったことを正直に言うリーグットに動きを止める少女。


────胡散臭い……か。はっきり言うか普通?


彼は皿を洗うと布で拭き少女に渡していった。作業が済むと、アイラとカイザックが床に座ってのんびりと過ごしているのが見えた。


ティリオがそれを見て背中を叩き真ん中に地図を置いた。


クラウディも輪に入り今後のことを話す。


「────で、今日は8階層のセーフポイントまで行けたらと思うんだけど、なんか意見ある?」


「7階層はモンスターは避けれるか?」


「いや、7階層はデータが少ないから完全に避けるのは無理。統計的に少ないルートは行こうと思うけど、最低でも2回は当たる」


「うし、いいじゃん。そろそろ手応えあるやつ来るんじゃねーの?」


「俺はここまで潜ったことはないから主観じゃ言えないけど。危険なのはドゥラクラッカーってモンスター」


「ドゥラクラッカー?」


「要するにカニだよカニ」


ティリオは両手の人差し指と中指で(はさみ)を表した。


────カニと言えば蟹鍋だな……


元の世界であれば高級食材だ。クラウディが想像すると口内に唾液が滲んだ。長らく口にしていない食材なので、食べれそうなら回収したい。


「鋏に気をつけてくれ。なんか衝撃波を飛ばして来るらしい」


「カニかぁ……テンション上がんねーな」


一行はルートを再確認すると荷物をまとめセーフポイントを出た。


再び狭い洞窟の通路を降りて行き、やがて少し広めの洞窟へと到着する。


「ここか?」


「ああ、第7階層だ」


広いと言っても先程と比べての話で、実際のところ洞窟内は約直径2mとかなり狭い。十分な戦闘が出来るようなスペースとはとても言えなかった。


クラウディはシミターは一旦収めて、短刀を腰に下げた。狭いところで戦うにはそれ用に合わせなければならない。アイラも少女に習い手斧を腰に下げる。


ポーターが用意ができたメンバーを確認すると、行くぞと進み出した。


洞窟内は他の光はなく、ランタンの明かりが届かないところは真っ暗であった。予備はあるというが失いたくはない。


敵に関しては足音が反響するので現れてもあらかじめ知ることは出来そうだった。


いくつか分岐を進んでいくと、何かの影が正面に見え、ティリオが身構える。


少女は敵の気配は感じ取れず、よく目を凝らすと箱のような輪郭が見えた。


「宝箱……?」


ランタンの光が当たって金の装飾が目に入る。


「まじ?!開けようぜ!」


アイラがティリオを押し退けて宝箱に触れようとした。


「おい!また喰われるぞ!」


────こいつ学ばないな!


クラウディが叫ぶと思い出したのかピタリと手を止める。


「こんなところにあるなんてどう見てもミミックだな」


今度はティリオがアイラを押し退けて宝箱を観察した。ランタンを彼女に預けて宝箱を少し触り、鍵穴を除いたりするとすんなりと蓋を開ける。


「あれ、何にも起こんないじゃん」


「こいつは既に死んでるよ。中も…………ガラクタしか残ってないな」


半ば宝箱に頭を突っ込みながらいうティリオ。絵面がミミックに喰われる子供だ。


「先に誰か来たか……」


カイザックが呟く。ミミックが死んでいるならそうだろう。先に誰かが来て討伐して中身を取っていったのだ。


「みたいだね。この綺麗な感じは状態異常魔法かな」


ティリオはミミックから頭を出すと蓋を閉じた。


「前は宝の山だったのに……」


アイラはがっかりしたようにうなだれ、宝箱をポンポンと叩いた。


「流石にどんな魔法とか、誰がとかまではわかんないけど」


────逆にわかる奴がいるのか?


クラウディは何となくカイザックの方を見た。興味なさそうに欠伸をしているが視線に気づくとなんだと首を傾げた。


「魔法の中には調べ物をしたりするものがあるのか?」


「あるさ。だが、そのミミックは魔法じゃない。アイテムかなんかだろ」


少女が聞くとカイザックはそう答える。


「へぇ、もしかしてマナの動きが見えるのか?」


リーグットは驚いた。カイザックがマナを扱えるのはクラウディも知っていたのできっとマナの『動き』というのもわかるのだろう。


当の本人はさあなと濁した。ティリオは訝しむような目つきをしたがそれ以上は追求しなかった。


「ここからCランク級のモンスターというし、先にいるパーティもCランク以上だろうし。あんまり問題起こすなよ……特にアイラ」


「へいへい」


小人に言われてアイラは口を尖らせた。


一行は再び進み出した。


10分ほど進んでリーグットの言う通りモンスターと遭遇した。


体高1.5mの巨大な蟹だ。ただし二足歩行である。蟹の外骨格を纏った人間の足に蟹がそのまま乗っかったような外見。右手に半身ほどの大きなハサミを持ち、左手は鉤爪のような鋭い手をしている。全体的に赤茶色で甲羅はトゲトゲしていた。


小さな目が忙しなく動き、一行を見るや否や左手を振り上げて突進してきた。


先頭のティリオが驚いて逃げるが追いつかれそうになる。クラウディが短刀で鉤爪を弾き、顔面を足で押さえつけた。


その間にアイラがティリオの襟を掴んで後列に放り、抑えられている敵の顔面を蹴り飛ばした。


蟹は壁に激突してひっくり返るもすぐに起き上がり右の鋏を一行に向けた。


「伏せろ!」


カイザックが突進しようとしたアイラに向かって警告の声を上げた。


全員その場に伏せると、ちょうど敵が鋏を打ち鳴らす。すると目の前の空間が揺らぎ、見えない何かが頭上を掠め、対壁が爆発した。


「ひぇぇ~……」


円形に抉れた壁を見たティリオが腰を抜かす。


────まるでデカいシャコみたいだな


クラウディは彼の事はカイザックに任せ、蟹に向かって走った。再び蟹砲を放とうとするので蹴り飛ばして照準を誰もいない対壁に向けさせる。


空気砲が発射され爆発する。少女は蟹の股を抜けて、膝裏の関節に短刀を突き刺した。


動きが制限され頭から地面に突っ伏す蟹。


「アイラ!」


「あいよー!」


女戦士を呼ぶと手斧を投げつけ、それは蟹の顔面に埋まった。彼女は近づくと埋まった手斧を掴み、横薙ぎに壁に叩きつけた。


泡を吹く蟹の顔面が完全に割れて謎の液体が溢れ出す。敵はまだ少し動いていたが、アイラが顔面を蹴り上げると動かなくなった。


「倒したのか?」


ティリオがカイザックの後ろから顔を覗かせた。


カイザックがうざったそうに彼を前に押しやる。ズルズルと前に出るティリオは蟹に近づくと足でつついた。


その様子にアイラがニヤリと笑い、つつくのに合わせてピクリと蟹の鋏を動かした。


悲鳴をあげて飛び退くリーグットは今度はクラウディの後ろに隠れた。


「あははは!」


女戦士は指差して笑った。


「おい!ふざけんなよ!むかつくこいつ!」


────楽しそうだな


少女は蟹の膝裏から短刀を回収し、剥ぎ取る素材がないか聞いた。


「ったく……あ?素材なら鋏とその鉤爪くらいだぞ」


「……?身は?」


「いやいや、やめとけって……蟹の身は毒らしいぞ」


────そんな馬鹿な


そう思うが、『アストロ』は地球とは違うのだ。毒を持ったモンスターなのだろう。


少女は仕方なくティリオが素材を剥ぎ取るのを見ていたが、壁際に取れたであろう蟹の足の1本が落ちているのが目に入った。


「…………」





────蟹、カニ!

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