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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編
202/210

第201話 女戦士の恋情







以前潜った場所とは違うが、クローたちと再びダンジョンに潜ったアイラ。第6階層で霧が出てきた時に散々言われた幻覚軽減ポーションをインベントリから探すのに時間がかかり、あっさりと幻覚に支配されてしまった。


しかし支配されたのはあくまでも五感のみ。頭では幻覚だと気づいていた。故にスキルでも使用していつでも抜け出せることは出来たはずだった。


それなのに目の前に仮面をしてない少女が現れたのだ。


服を乱していやらしく誘う少女が。彼女の大きな胸と下着が見え凝視するアイラ。


目の前の女の手招きに足が勝手に動いた。いや自ら進んだ。


理性が飛びそうになる光景に足が早まり、ついに追いついて幻覚である少女の元に行くと力強く押し倒した。アイラは目の前の女が偽物だろうと何だろうとどうでも良くなっていた。


唇を奪って服を脱がす。いつもの少女より力が強く逃れようと身体を動かすが、アイラはそうはさせじと上回る力で押さえつけた。


「はぁ…………はぁ!」







「────ぃぁ────ぁイラ、アイラ!」


呼ばれてアイラはハッと我に返った。


「うお?!」


先程まで少女だったモノがいつの間にか幅が人の身体ほどの緑の触手に変わっていた。ざらついたそれは目の前でうねうねと動いていた。


「そのまま抑えてろ!」


「え、ああ!」


仮面をした少女が叫び、アイラは言われるまま蠢く触手を締め上げた。


ギチギチとしなる触手は血管のようなモノが浮き出てのたうち回る。


そうしているうちに少女が巨大な魚のような植物に斬りかかり、焦げて露出したコアに剣を突き刺した。


コアはパリンと割れて粉々に砕け散った。すると辺りを蠢いていた触手は力をなくしたように脱力し、へたって地面に横たわった。


何がなんだか分からないうちに終わった戦闘。


少女はモンスターから飛び降り、アイラの元へ行く。


「大丈夫だったか?なんか様子が変だったが……」


肩で息をする少女は呆然とする女戦士を心配するように顔を覗き込んだ。


「へっ?あ、大丈夫大丈夫ー。ボスだったのか?」


「そう言っただろ?多分倒したはず」


「それじゃこれが……あ、アブラハム?」


「ドリムリフだ。なんかチョウチンアンコウみたいだな」


「え、チョウチ……?」


「いや、なんでも……」


────あーあ、やっぱりさっきのは幻覚だったか。まあそりゃクローがあんなことするわけないよなぁ……


少し惜しいなと思いながらアイラはため息をついた。


幻覚の霧はドリムリフの体のあちこちから開いた噴出口から出ていたようで、動かなくなった今は排出が止まっている。


徐々に霧が晴れてくる。よく見ればあとの2人の姿が見えない。


「あれ、ティリオとカイザックは?」


「はぐれた」


「え、何で?」


「俺ひとりでお前を追いかけたからだ」


────単身で来てくれたのか……


我が身顧みない行動はこれまでもあった。その動きにどれほど心が救われたか。


ポーションは飲んでいて幻覚は収まっていたものの、今度は必死に抑えていた『承認欲求』が再び熱を帯びる気配がした。







数十分前────


霧が現れた後、急に姿を消したアイラではあったものの、気配は遠くに行ってなく、クラウディが1人で追いかけてきたのだった。


フラフラと歩く戦士をすぐに叩き起こそうかと思ったが、もしかしたらこのままボスのところに行くのではと思い様子を見ていたのだ。


すると案の定ボスのところまで辿り着いた。緑がかった巨大な魚。言うなればチョウチンアンコウだろうか。たくさんの触手が辺りに蠢いている。


てっきりアイラは支配されていると思っていたが、彼女は触手を見ると襲いかかったので慌てて少女は加勢しに入った。


ボスの戦闘力はそこまで大したことはなかったものの、触手が多くやや厄介だった。なにせ斬っても斬っても再生するからだ。


しかしアイラが締め上げていた触手が大切な部分だったのだろう、動きが鈍くなったので『生命石』で顔面に3回ライトニングボルトを放ち────あらかじめティリオから弱点は聞いていた────コアを露出させて倒すことができた。


クラウディは辺りを見回して他に敵がいない事を確認し剣を鞘に納めた。


少し距離があるかもしれないが来た道をそのまま戻れば他の2人に合流出来るだろう。


少女は背後の女戦士について来るようにいい、歩き出そうとした。


しかし袖を掴まれて足を止める。


「……どうした?」


「なぁ、クローさ。私のこと好きか?」


「……?」


────なんだ?様子が変だ


よく見ればいつもより元気がないように見える。


「お前操られて────」


「いやいや、大丈夫だから!操られてないって!」


少女が慌てて手を振り払おうとするが、戦士が力強く抱きついた。


────まずい、今締め上げられたら終わる!!


Aランク冒険者の膂力を目の当たりにしてきたので捕まるとどうしようもない。身体が2つになって終わりだった。


「落ち着けって!違うって!ああもう!」


暴れるクラウディと抑えようとするアイラは足がもつれてその場に倒れ込んだ。


少女は何とか身体をうまく動かしてマウントを取り、相手の首にナイフを突きつけた。


「さ、さすがクロー……」


感心する言葉を他所に少女はアイラのインベントリに手を突っ込み、手探りで『ドゥロクエル』を探す。


────これか?


ポーションの瓶の形状が少し違うので手探りでもわかったが、取り出すと空だった。


「……ん?」


「もう飲んだって……言ったじゃん違うって」


「あ、わ、悪い……」


アイラがため息をつき勘違いだと悟った少女は慌てて退いた。ナイフをしまう。


「なんか変なこと言うから幻覚にかかってると思ったんだ……」


「…………クローは私のこと好きか?」


「え」


────聞き違いじゃなかったのか?


アイラは仰向けに寝そべったまま木の枝が絡み合う薄暗いダンジョンの上空を見つめていた。


「私は好きだ」


「…………いや嫌いではないが」


「その言い方ズルくね?私はラブなんだけど」


「っ……変なこと言うな。カイザックたちの所に戻るぞ」


「やだね。行きたければ1人で行けば?私はクローがお願い聞いてくれるまで行かない!」


手足を大の字にして意を示す女戦士。何故か頬を膨らませて拗ねてしまった。


────えぇ……


その大人気ない行動に引きながらも、しかし置いて行くわけにもいかず。


「……なんだ、お願いって?」


仕方なく大きくため息をつき、渋々尋ねる。


「チューして」


「」


「チューして」


仮面越しにこめかみを抑える少女。無理に決まってる。


「それは流石に────」


「してくれないともう行かないしパーティ抜ける!」


「は?お前、いい加減に…………」


おそらく声を荒げた所で意味はないだろう。カイザックといつも言い合っているのだ。迫力もない少女が声を上げた所でたかが知れていた。


それに今抜けられるとダンジョンの攻略など無理に決まっていたので、訴えが本気なら無下にはできない。


「なんで突然……、それに今じゃないとダメなのか?」


「理由は好きだから!詳しくは言わない!面倒くさいから!あと、今じゃないとダメ!」


「…………」


やはりまだ幻覚にでもかかっているのだろうか。もう一度ポーションを飲ませるべきでは。


「チューは嫌?」


「…………」


「やっぱりカイザックが好きなのか?」


「それはない」


即答するとニコリと笑うアイラ。じゃあチューしてくれと手足をばたつかせた。


「問題ないじゃねーか、女同士の遊びみたいなもんだって!」


────違う


流石に男女関係に疎い元男の少女でもわかる。キスは好きな人とやるものだと。そんな軽々しく出来るものではない。


「もしかして経験ない?」


「…………ある」


「ちぇ……じゃあ早くしてくれよ!」


『ある』と答えたもののキスをしたのは元男の時の話だ。名前が思い出せないが、金髪の女と────。


元男の少女は顔が熱くなるのを感じた。


────クソ、何で今?!


今では金髪の女の顔を思い出すのは容易になって来ていた。頭痛も大したことないのでキスする姿も容易に映像化できた。


「まだかよー」


行動が止まっている少女を見て呻くアイラ。


────うるさい、俺は男なんだぞ……


心中で思うが、男が女にキスすることは何ら可笑しいことではない。身体と心があべこべになっている少女は軽くパニックになっていた。


────落ち着け……そうだ、別にキスぐらいいいだろ……減るもんでもないし


そうは思うが例の女の顔が浮かび罪悪感が生じる。


そこで元男の少女にどこかで見たとある映像がふと浮かんだ。


元の世界の話で、とある男性が街中の女に声をかけてキスをしてもらうと言う企画を行っていたものだ。それを女は快く応じ、しかし指を使って回避していた。


────よし、それで行こう


クラウディは思いつくと顔の熱が引いていくのを感じ、アイラの方を見た。


「了解した」


「へ、へへ、じゃあ取り合えずこっち来いよ」


少女は言われた通り女戦士に馬乗りになり、頭の横に手をついた。すると相手の手が伸びてきて仮面を取る。


「んじゃ……」


アイラは静かに唇を突き出した。クラウディは自分の髪をかき上げると耳にかけ、顔を近づけていく。いいタイミングで指を挟めるよう薄目を開けて準備した。


「…………」


「…………」


「…………おい、目を瞑れよ」


ギリギリになっても見つめているアイラに堪らず声を上げる。


「え?クローの顔が見たいから」


「め、目を瞑るのマナーだろ」


「いいから早くしろよ」


────クソ


一旦離れたが再び顔を近づける。しかしアイラの目はパッチリと開いている。


────こいつほんとに目を瞑らない!


このままでは本当にキスをすることになる。そう思うと一気に顔が熱くなり、心臓の鼓動が徐々に早くなっていった。


────ああ、もう……


少女は仕方なくそのままゆっくり、指を挟む間もなくアイラの柔らかい唇に、自分の唇を重ねることになった。


「かわい……」


2秒くらいしたら直ぐに離れるが、返すようにアイラも頭を少し上げて唇を重ねた。


「も、もういいだろ!」


クラウディは唇を抑え、慌てて離れ立ち上がった。顔を隠すため仮面も装着する。チラリと振り返ると蕩けたような顔のアイラが触れた唇を舌で舐めていた。


「っ……もう、行くぞ!」


その光景を見ておられず前に向き直ると大股で歩きだす。


「へいへい♫」


かなり上機嫌となったアイラは素早く立ち上がるとスキップしながらついて行った。

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