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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編
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第192話 第5階層の影






朝一に珍しく目が覚めたアイラは外の空気を吸おうとしたが、クラウディが静かに椅子に座っているのを見て抱きついたりしていたらしい。


するとどんどん身体が崩れてしまいにはスライムになってしまったので驚いて悲鳴をあげたと言うことだった。


「いや、ホントにどうしようかと思ったぜ……まじで」


蠢くスライムは今はクラウディが抱いていた。カイザックも起きてきており壁にもたれてタバコを吸っていた。


全てマナを込めたと言っても半分ほどしかなかったので、おそらくいつもより変化時間が短くなってしまったのだ。


「悪かった……今まで黙ってて」


クラウディはプリムスライムについての能力をアイラに話した。スライムの存在はエルフの森で露見したはずだが、アイラは寝ていたので知らなかった。


彼女は黙って聞いていたが特に咎めるようなことはしなかった。それより安堵した表情に少女の胸にトゲを刺した。


いつかはアイラには見張りをさせて自分たちはゆっくり休んでいたのだ、本来なら少しは怒っていいモノだが……。


「まあいいよ、マナがいるんだろ?そんな使えるもんでないんだろし」


────いや使ってました……


カイザックがマナを込めてくれるのは伝えず、気まずい少女。


カイザックも察してか黙って見守っていた。


「それより私にも変身できんだろ?やってみせてくれよ」


「……それくらいなら」


────マナがなくてもいけるか


自分のイメージだけでは他人を模倣するのは難しいが、モデルが側にいるなら容易いだろう。


女戦士の要望にクラウディはスライムを床に置くと、仁王立ちする彼女と交互に見ながらイメージを固めて姿を模倣するよう命令した。


案の定マナ消費無しで姿をほぼ完璧に模倣するスライム。マナは使ってないので戦士の能力は使えないだろう。


それを見てアイラは感嘆の声を上げた。上から下まで舐めるように眺めると見た者全員の恒例なのか着けている装備を剥ごうとする。


クラウディは慌てて彼女を引き剥がしスライムを元の姿に戻した。


「ケチ!ちょっとくらいいいじゃん!」


────お前の装備露出激しいから少しもクソもない


口を尖らせて文句を言うが少女はスライムを瓶に戻してインベントリにしまった。


一行は一件が済むと軽い朝食を済ませて荷物をまとめ。セーフポイントを出発し、上の階層へと戻り始めた。


斜めに倒れた大木を登って行くのだが、これがまた滑りやすくクラウディは2人の手を借りて登って行った。


少し明るい5階層へと戻ると一旦休憩し、また歩き出す。


地図を見ながら進んでいくと、とあるパーティに出会した。


4~5階層へ降りる時にセーフポイントで見たパーティだ。木の陰で休んでおり、装備もボロボロになって満身創痍だった。


「あ、お前らは……」


側を通りかかるとリーダーらしき男が顔を上げて声を上げた。30代くらいの中年男性で顎髭を蓄えている。職業は抜き身の剣と盾を持っているので剣士だろう。その武器も刃こぼれしていて簡単に折れてしまいそうだ。


クラウディは無視しようとしたが、意外にもカイザックが引き止めて話を聞くよう促す。


「なあ少しポーションを分けてくれねーか?マナポーションもあると良いんだが」


「僧侶はいないのか?」


「いるが……あの状態だ。マナ切れで軽く枯渇状態だ」


中年男性は木陰で杖を握りしめて俯いている女性を顎で指した。息切れしていて汗が滴っている。傷はそこまで目立たないが相当疲弊しているように見えた。


「ポーションはあるがマナポーションはない」


少女は『生命石』を通してしか魔法は使えないため、マナポーションは買っていなかった。代わりに低級ポーションなら沢山ある。


人数分渡そうとするが、カイザックが手で制す。


「俺たちも大変なんだ。数があるとはいえタダでやるわけにはいかないぞ」


────流石というべきか、ちゃっかりとしているというべきか


パーティリーダーは苦い顔をするが、そうだなと頷き硬貨袋から金貨を1枚取り出した。


それを受け取ると、クラウディは低級ポーションを人数分渡す。渡された他メンバーも一気に飲み干した。


「助かった、これで上の階層に戻れそうだ」


低級では大して傷も回復しないだろうが、パーティリーダーは頭を下げた。


「俺たちはBランクパーティの『烈風旅団』。俺はリーダーのダンバール。あとは……まあいいか、他3人とポーターが1人だ」


バンバは紹介しようとしたが何か諦めたように首を振りやめた。


「お前たちはもしかして6階層まで行ったのか?」


「ああ、地図がないから戻ってきた」


彼はクラウディがそう答えると仮面の冒険者の背後に目をやった。


「……ポーターがいないのか?見た感じ僧侶もいなさそうだ、まるで自殺行為だが────」


と、アイラに目を止めて口をつぐんだ。


「まさか『闘神アイラ』?!」


バンバが大きい声で驚き、聞いた他メンバーも顔を上げた。先程まで死にそうな顔をしていたが生気が戻っている。


クラウディがアイラに視線をやると彼女は肩をすくめた。


「とすると、アンタがあの『ラゼン』に盾ついたっていうクローか!こりゃ気づかなかったぜ!珍しいのに遭遇した」


Bランクパーティリーダーは少女の手を取ると激しく振った。


────盾ついてはないんだが


クラウディたちの例の騒動は尾鰭がついて広がっているのだろう。


「おいおい、俺たちは暇じゃないんだ」


側から見ていたカイザックが、握手する2人の間に分け入る。


「あ、ああすまんすまん。有名人に会ったから興奮してしまった。お前たちも気をつけろよ、いるぞあいつが」


「あいつ?」


「5階層のボス『キラーマンティス』だ」







キラーマンティス────

第5階層のボス。Bランク。巨大なカマキリであるが、鎌が大きく鋭くなっている。外骨格は硬いが他昆虫モンスター同様関節や首、腹が弱点とされる。


「どうすんの?クロー、カマキリ狩る?」


地図を見ながら先頭を歩くクラウディの側でアイラが言う。


「いや一旦帰る。相手にしてる時間はない」


先程のバンバに地図に遭遇したボスの場所に印をつけてもらったが、一行は避けるように迂回していた。


彼らはキラーマンティスに遭遇して全滅しかけ、命からがら逃げたのだそうだ。


『少し様子がおかしかった』


別れ際に言われた言葉だ。カイザック曰くユニーク可している可能性があると言うことだ。それならばいっそう避けなければならない。


地図上では来た道に近い場所にボスマーキングがある。なので戻る時は反対側の道を進んでいた。


他モンスターは特に遭遇はしていない。時折マタンゴらしきモンスターなら目の前を通過したりするが。無害なのでノーカウントだ。


「あ、またマタンゴなんか多くね?捕まえねーのクロー?」


「まだ食べてもないぞ、乱獲してもハズレだったら処理が大変だろ」


「換金すればいいじゃん」


「あまりインベントリを見せびらかしたくない」


ボンズにインベントリ目的で羽交締めにされた件もあり、やはり公には出すべきではない。マタンゴを大量に乱獲したら必然的にインベントリを出さねばならないし、容量も圧迫する。


鬱蒼とした森を道半ばまできたところでまたバウトホッパーに遭遇する一行。


全員身構えたが、敵は彼らが見えていないかのように通り過ぎて行った。


続いてマタンゴや見たことない昆虫や、人の顔を持った蝶々などゾロゾロと現れ通り過ぎて行った。


「おおお?!な、なんだ、ええ?!」


アイラが通り過ぎるモンスターを攻撃しようかどうしようかと、握る大斧をふらふらとさせている。


「これは……」


この現象に見覚えがある少女。それはシャドウレインと遭遇した時と似ていた。生息する生物が圧倒的上位の存在から逃げようとする行動だ。


クラウディが仲間に警告の声を上げるより早くそれは姿を現した。


森の木々を紙を裂くように斬り倒して現れたのは蒼いオーラを纏った巨大な蟷螂だった。

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