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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編
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第191話 大樹の第6階層







苔が生えたなだらかな下り坂で50mほどで折り返して下に続いている。なんの変哲もない下り坂に見えるがかなり滑りやすくなっているようだった。


アイラやカイザックの履いている靴ならば多少踏ん張りが効くようだが、クラウディのものは割と滑りやすく少し降るとひっくり返ってしまう。


そしてそのまま滑っていき、茂みに突っ伏した。


「ぐっ」


「……大丈夫かクロー?」


女戦士が心配して体を引っ張って助け起こした。


彼女に礼を言い服についた葉っぱやら枝やらを叩き落とす少女。


「尻が痛い……」


「おいおい、いきなりそんなんじゃ先が思いやられるぜ。まだ下続いてるのに」


カイザックが言うので折り返しを見るとまだ下に続いていた。


そして今しがた気づいたが、転けた後をみると苔が剥げて木質の地面が現れ、どうやら土の地面ではなく巨大な大木を降っているのだと分かった。


おそらくエルフの森で見たようなあんな大木だろう。


一行はどんどん下へと降りていくが、やはり下層へ降りる道なのかモンスターが現れることはなかった。


ただし遠くの方からは何かの鳴き声や物音がしきりにしたので油断はできない。


警戒もしながら30分ほど降って行くと再び木の生い茂った森へと降り立った。森と言ってもただの森ではない。エルフの森で見たような大木がそこここに見え、間を埋めるように通常サイズの木が生えていた。


光る苔も生えているが全体的には明るい。と言っても雨天時と大差ない程だ。


クラウディは少し歩いて辺りを見渡した。鬱蒼とした森はかなりの広さを感じさせ、暗い木々の間は不安を駆り立てた。


────これは……無理だな


第6階層の地図がない状態で進むのは困難だと少女は見ただけで理解した。


構わず前を進もうとする2人に声をかけて引き返すことを提案する。


「えー?いいんじゃねーの?行こうぜ?あんまり時間もないんだろ?適当に進んでりゃいいだろ」


「バカだな筋肉女。迷子になったら抜けるのに何日かかるか分からんぞ」


カイザックはリーダーの判断に従うといい荷物を背負い直すと来た道を戻り始めた。アイラは文句を言うが、少女が帰って酒を飲んで良いことを言うと笑顔になる。


下層に着いた時は気づかなかったが、戻る時に大木の根元にぽっかりと穴が開いているのが目に入った。


気になった一行が警戒しながら近づき中を覗くとくり抜かれたような空間が広がっていた。


ランプに灯を灯して確認するとどうやら部屋のようだった。


5階層へと行く時の通路にあったものと同じようなものなのだろう。先人たちが残した休憩ポイントだ。


その証拠に切り出された寝台や机などが置いてある。そこまで埃も被っていないのでちょくちょく誰かしら使用するのだろう。


「今日はここで休憩して、明日一旦地上へ戻ろう」


少女が仲間にそう伝えると2人は頷き荷を解いた。


大木の洞は上で休んだ休憩所よりも広く同じように3部屋作ってあった。どの部屋も同じような作りでちょうど3人それぞれ休憩が出来る。ただ水飲み場はない。


アイラとカイザックはそれぞれ勝手に部屋に入っていき、残されたクラウディはやれやれとため息をつき最初の部屋で休むことにした。


ベットの近くに置いてある椅子に座り水分を摂る少女。続けて服が汚いので綺麗なものに着替える。


────今外は何時くらいなんだろうな?


体感的には夕方といったところだが実際のところは分からない。ダンジョン内では明るかったり暗かったりと時間の感覚が狂いそうだった。


少女はインベントリから砂時計を出してベットに置いた。少しずつ落ちる砂を見ながらこれからのことを考える。


まず上に戻ったら地図を購入するか、もう一度ポーターの空きがないか見に行かなければならない。


それに採取用の道具やらも買いに行くべきだろう。剥ぎ取れなかった素材もあるのだ。


────そういや見張り要るよな?


砂時計を見てふとそう思った少女はカイザックの部屋の前に行きドアをノックした。


プリムスライムを見張りに立たせるか、自分たちが立たなければならないだろう。


返事がないので入るぞと声をかけて中に入る。


部屋はベッドの横にあるランプで割と明るく、カイザックはすでに横になって休んでいるようだった。


────早いな……


まだ部屋に入って30分ほどだと思うが、余程疲れたのだろうか。


クラウディは上下する毛布を見ながら足音を立てずに近くへ寄った。ランプの明かりに照らされ顔が見える。瞼を閉じて眠っているようだ。


少女は肩を軽く揺さぶった。彼は少し目を開けた。


「……何だ?なにか用か?」


「見張り」


「ここはセーフポイントだ。見張りなんかいらないぞ」


「そうなのか?」


「怖いなら一緒に寝るか?」


カイザックはそう言うと来いよと毛布をはぐった。


「遠慮しておく。……そうだカイザック、昨日結構マナを使ったから補充してくれないか?」


クラウディは生命石を取り出しカイザックに見せた。それを受け取るが少し手の中で転がすと意地悪く笑った。


「タダでやると思ってるのか?見張りも必要ないのに」


「うっ……金なら────」


「わかるだろ?来いよ」


カイザックはベッドの奥へ行きスペースを開けた。


生命石にマナを込めて欲しい少女は、仕方なく出来るだけ端に腰掛けて横になった。


「アイラが探したら面倒だからスライム置いとけ」


カイザックがそう言い、クラウディはプリムスライムを出すと残りのマナを込めて自分の姿にさせ、先程の部屋で待機するよう命令した。


スライムは頷くと部屋を出て行く。


背後の男に、後ろ手に生命石を渡すと少ししてマナが満タンになった石が返ってくる。


────よし、これでまた魔法がある程度使える


と、同時に後ろに引き寄せられるクラウディ。


カイザックが腹部に腕を回して密着する。少し心音が大きくなるのがわかる。


「…………」


「…………風呂入ってないんだが」


汚れた服は着替えたとはいえ、いくらか汗はかいたので少し肌がベタつくし汗臭いだろう。背後の男からは嫌な匂いはしないが。


返事はなく少しの間そのままでいると寝息が聞こえてきた。


────早いな……


クラウディは身じろぎすると毛布を引っ張り目を閉じた。







翌日、少女は甲高い悲鳴で目が覚めた。何事かと飛び起き、寝ぼけているカイザックはそのままに急いで悲鳴が聞こえた部屋へと向かった。


クラウディの荷物が置いてある部屋にアイラがうずくまっているのが確認出来た。


「どうした?!」


少女が彼女の肩に手を置くと振り返る。そして驚いた表情をすると抱きついた。


「っ?!な、なにどうしたんだ?」


素早く辺りを見回すが特に敵の姿はない。


気配も感じないが、もしかしたらシャドウレインのような完全なステルス能力を持ったモンスターかもしれない。


警戒しながら何があったか小声でアイラに聞く。すると彼女は涙目になりながらその胸に抱くモノを見せた。


「クローが、クローが……スライムに……でも何がなんだか……」


「あ……」


アイラの手に抱かれているのはクラウディの変化が解けたプリムスライムだった。

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