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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第2章 辺境の地ローランドル

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第19話 バッドラッター①







「生きてるか?」


ログナクは気がついたら床に大の字で倒れており、顔を覗き込む新人にようやく目を開いて見つめた。少年にしては綺麗な顔をしているなと思いながら彼はむくりと起き上がった。


「まだいたのかお前……」


痛みに呻きながら立ち上がり、近くの空いたテーブルの椅子に腰掛けた。


「へんなところ見せちまったな」


クラウディは結局小一時間過ごし、喧騒が止むのを待つ羽目になった。喧嘩していた男たちは気絶したり逃げて行ったりし、アーケインはログナクが気絶すると笑いながら出ていった。今はほとんど席が空いている状態だった。


店主曰くログナクとアーケインは仲が悪く度々喧嘩になっていたそう────ちなみに殴り合いの喧嘩ぐらいならギルドも介入しないとの事────で、いつもの事らしい。


「いやいつものことなんだろ」


「ははっ、そうだな」


少女が言うと乾いた返事をするログナク。結構殴られていて目元が内出血したり口の端を切っている。


「あ、そういやバッドラッターだっけ」


「情報は店主から聞いた」


「……そうか」


バッドラッター────

体長50~100センチの大型のネズミ。親個体は150センチを超えると言うが、なかなか姿は見せない。汚い場所に棲むため噛まれると毒にかかったりする可能性があるため解毒薬は必須。


しばらく沈黙が流れ、ログナクは呻くと緑色の液体が入った小瓶取り出して開け、飲み干す。とみるみるうちに傷が治っていく。1分もしないうちに腫れた顔が元通りとなった。


────これが効果か、便利だな


「あー……なんか迷惑かけたし。一緒にいくか?」


少女が回復にかかる時間を数えているとログナクが言った。







「パーティ?」


ログナクとクラウディは一緒にバッドラッターの生息地まで歩いて向かっていた。


「『パーティを組む』だよ。知らないのか?」


彼女が知らないと言うとログナクは説明した。


ギルド身分証には『パーティを組む』機能があり、それを使うとランクが勝手にパーティ内の最も高い位に引き上げられ、低ランク冒険者でも高ランククエストに行くことができる。


クエストはリーダーのみが受けられ、報酬は均一に分け合うのが一般的。1人の取り分は少なくなるがその分数がこなせてより安全のため、ほとんどがパーティを組んでいた。


「俺もパーティ組んでるから勝手にクローとは組めないが……今回は全面的にサポートという形で参加するよ」


「…………ん?それだと報酬が────」


「いいさ迷惑かけたし」


クラウディは報酬が総取りになるのではないと言おうとしたが、ログナクは首を振って遮った。


別にそこまで迷惑はしてないんだがと頭を掻いたが彼が────行こう────と進み出したので黙ってついていった。


しばらく歩いていると建物が少なくなってきて、レンガを積み重ねて作った人工的な川が見えた。さらに進むと階段があり地下へ繋がる通路が見えた。


「ラッター見当たらないから中に入るけど大丈夫か?結構臭うぞ」


「了解」


2つ返事をして暗い地下水路に足を踏み入れるがそう時間がたたないうちにドブのような刺激臭が漂ってきた。


────鼻を摘む魔法ないかな……ないよな


川はかなり下を流れているがそこに横から生活排水が流れ込み濁っている。


それをどうしているのか聞くと俺もよくわからないが────とログナクは口を開いた。


「魔法で綺麗にして元の森とかの川へ流してるらしい。自浄作用でさらに綺麗になって循環しているって話だったかな確か。魔法使いじゃないからよくわからん」


レンガ造の地下水路を進んでいた時にクラウディは何かが蠢く気配を感じ取った。


少し遅れてログナクが新人に止まるよう手で合図した。


「あれがバッドラッターだ」


少女に囁いて見えるように避けて指差す。


暗くて見えづらいが、巨大なネズミが4匹、何か死体を漁っていた。


確認した事を手で合図すると、何か別の合図をした。人差し指でそれぞれ自分達を指し、2本指で左右のラッターを指す。


おそらく左を少女が、右をログナクが片づけるという事だろうと考えたクラウディは頷いた。


指を折ってカウントし、ログナクが前に出ると少女も後に続いた。


ログナクは剣士スキルである『クイックスラッシュ』で素早く右手前の1匹を斬り伏せると『ストライク』というスキルで奥のネズミの頭を叩き割った。


彼が「次っ!」と振り返ると新人冒険者は、すでに斬り伏せて剣の血を拭っているところだった。


おぉ、期待の新人!と彼は笑い肩を叩いた。


「なんか叫んでなかったか?」


「ん?スキルのことか?」


各職業には『スキル』が存在し、基本的に技名を言う事で発動出来る。もっとも上位の冒険者は扱い慣れており、時折省略することもあるらしい。


「魔法使いで言う詠唱みたいなもんかな。まあ詠唱破棄を使う人は数える人しかいないらしいけど。俺はまだみたこもないしね」


────魔法に詠唱?


フロレンスは詠唱するとこなんて見た事ないなと不思議に思って少女は首をひねった。


「ともあれあと1匹だが……こっちに行ってみるか」


クエストはバッドラッターを5匹の討伐である。ログナクは今倒した4匹の耳を切り取って袋に入れ、水路を進んだ。


そして生活排水が流れる穴が並ぶところを見つめた。チョロチョロとどこも流れているが、1箇所だけ全く流れていない穴があった。大きな気配を感じる。


クラウディはそこに向かおうとするがログナクに後ろ襟を掴まれて連れ戻される。


「だめだ逃げよう」


理由を聞く前にログナクは踵を返すが、答えを出すように先ほどより巨大なネズミが穴の入り口を破壊しながら飛び出してきた。







先程のネズミより2回り大きいラッター。体毛は緑がかっており手足が異常に肥大している。口からは蛇の鳴き声のような音がし、緑の息が漏れていた。


「おい、これ親個体じゃないか?」


クラウディは言ったがログナクから返答がなく、チラリと振り返ると体を震わせていた。再度声をかけるとようやく震える声を出した。


「親個体のラッター……じゃない……これはユニーク個体……だ」


「何が違うんだ??」


「い、いから逃げ……いやダメだ。こいつは足が早い」


完全に戦意を失ったCランク冒険者はその場に釘付けになったように動けなくなった。


せめて情報を言って欲しいとクラウディは思ったが、仕方なく敵に向き直った。


────取り敢えず通常より強くて早いと言うことか?


片方にシミターを握り、もう片方に投げナイフを握る。


ユニークラッターも警戒していきなりは襲い掛からず様子を見ていたがジリジリと間合いを詰め出した。


少女は少しの間相手の呼吸で上下する身体を見ていたが、低くなったところで不意にナイフを投げた。そのまま追うように突進する。


ユニークラッターは虚を突かれてナイフは避けられず片目に刺さった。


と、敵がネズミの声とは思えない太い声で吠え、頬袋を膨らますと緑の霧状の息を大量に吹き出した。


クラウディは咄嗟に生命石のマナを操り身体に空気を纏った。


────これは、毒ブレスか


空気を纏っても少し吸い込んでしまい、若干身体が気だるくなった。


少女は慌ててログナクかいるところまで後退した。


「だ、ダメだこいつは!ユニーク個体は難易度が、跳ね上がる!逃げないと!」


ログナクがクラウディの手を引くが彼女は動かなかった。


「足が早いなら逃げられないだろ。戦うしかない」


巨大ネズミが突進してくる。少女はログナクの手を振り解き彼の背中を押した。


「時間を稼ぐから助けを」


ログナクは躊躇ったが襲いくるユニーク個体に恐怖し謝りながら逃げ出した。背後から毒ブレスがモクモクと迫る。

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