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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第10章 アーベル地下ダンジョン編
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第185話 ハニマークス娼館









「『ハニマークス』娼館……ここか」


結局クラウディは待ち時間が惜しく、1人で教えられた娼館に来てしまった。


娼館は本通りのとある路地裏の細い階段を降りて行ったところにあった。客引きの女性が何人かおり近くを通る男性に声をかけている。


少女はミラージュクロスを被って気配も消しているので全く気づかれずに店内へと侵入した。


中は広く、ピンクな灯りにベンチがいくらかとカウンターが見えた。カウンターでは男の人が書類らしき冊子をめくっている。


他にも中に客はいくらかおり、進行形で、客引きの女性とそれに捕まった男性の1組が中の通路に入って行った。


クラウディもそのまま気づかれずに通路に入っていく。


────302なら3階か


階段を行くまでに何部屋かあり、その部屋から喘ぎ声やら妖しい音が聞こえてくる。


音を頭から締め出し階段まで来ると3階層まて上がった。途中乱れた服の女性とすれ違い、壁に寄ってやり過ごした。


────302号……302……302……302……


何故手前からでなく奥からの番号順の並びにしたのか疑問に思いながらも該当の302号室へと到着するクラウディ。


ドアの取手に手をかけるがその前にと、そっとドアに耳を当てた。何か如何わしい声や音が聞こえないかと集中する。


他の部屋からの音などは聞こえるが、目の前の部屋からは物音はしなかった。


安堵の息を吐き、ドアをノックした。


少し待つが特に何の反応もない。取手に手をかけて押してみるとすんなりと開く。


少女は辺りを見渡し、誰もいないことを確認するとミラージュクロスをしまいスルリと中に入った。


後ろ手にドアを閉めてまず感じたのは強烈な生臭さだ。イカのようなものと青臭さが混じったような男性のアレの臭いだ。


続けてタバコの煙の臭いや女性の香水だろうものの臭いが混ざり、クラウディは思わず口元を覆った。


部屋はワンルーム二つ分くらい広く、風呂と仕切りが角にあり、いろんな服がかけてあるドレッサーや真ん中には脚の高いテーブルと椅子が2脚。


そして1番奥の角には大きなベッドがありその上に裸のカイザックの姿があった。身体を起こしてタバコをふかしている。


彼はクラウディに気づくとニヤリと笑って顎で側に来るよう指示した。


少女は正直近づきたくなく、躊躇ったがいつまでもそうしている訳にもいかず、荷物をドアの側に置くとベッドへ足を向けた。


その際に足が滑り転倒してしまう。


「っ……」


手を床につくと何かぬるりとするものが手に付着する。その正体気づくと慌てて手を振り払った。


よく見ると床の至る所にソレがありゾッとする少女。


────どんだけヤってんだ……


笑い声がし、カイザックの方を見るとケラケラと笑っていた。


「悪い悪い!まあこっち来いよ」


クラウディは足元見ながら何とかベッドまで行くと端に座り、足を上げた。


服にアレが付着してないかと首を回す。


「ヤリ部屋にようこそクロー」


「……勘弁してくれ」


立ち込める臭いのオンパレードにグロッキーな少女は冗談に付き合ってられなかった。


カイザックは辺りを見渡し片眉を上げた。


「てっきりあいつも来るかと思ったが……1人か?」


「アイラは嫌がったから置いてきた」


実際はじゃんけんで決めた事を言うと不機嫌になるかもしれないので黙っておく。そもそもアイラがこの現場を見たら殺しにかかりそうで怖い。


「…………」


カイザックは目を細めて少女を見つめ黙ってしまった。もしかしたら何か察したのかもしれない。


「で、急に何の用だ?すぐどこかに行ったやつが」


クラウディは何か咎められる前に話題を変えなければと催促した。カイザックはやれやれとため息をつくと肩をすくめた。


「ダンジョンはどうだったかと思ってな」


────何故それを知っている?


ダンジョンに1人で潜った事はアイラにしか言ってない。


「……どこまで知ってる?」


「さぁ……?どうだろうな」


────クソ、こいつ……


先程のような情報屋の仲間が他にも多くいるに違いない。そこら中に張り巡らされて行動のほとんどが筒抜けになっていると考えた方がいいかもしれない。


カイザックはもう少し近くに寄るように手招きした。しかしクラウディは警戒してこれ以上は近づこうと思わずその場からは動かなかった。


すると彼はニヤリと笑う。


「ダンジョンはソロじゃ無理だった。暇なら今から一緒に来てくれ」


一刻もはやくこの場所から立ち去りたく、端的に感想と少女の要件を伝える。


「ん~?『来てくれ』?頼み方を教えたはずなんだがなぁ」


「っ……来てください」


「『カイザック様』」


「…………カイザック様」


クラウディが復唱すると満足したのかカラカラと笑い、その場で少し待つように言うカイザック。


彼はベッドから降りると風呂の方へと向かった。


クラウディは全裸の男を見て思わず、あの妖艶な顔の下にはどんなものが付いているのだろうかと下半身を凝視してしまう。


すぐ(のち)に彼に気づかれてはいけないと慌てて顔を背けた。


────さすがというかなんというか


カイザックが風呂を浴びる間、手に付着したモノを拭くものはないかインベントリを探して布で拭き取った。


同じ姿勢だったので崩して別の場所に手をつくと冷たく湿った部分に触れる。


「冷たっ」


────今度はなんだ?


少し濡れた手を嗅いでみると、嗅いだことのあるよろしくない臭いが僅かにした。誰か漏らしたのかと引きながら手を拭くクラウディ。


どうやら似たような跡がベッドの至る所に見られた。


────何人相手にしたんだ?


口笛を吹きながら風呂に浸かるカイザックは上機嫌のようだ。性に貪欲であるが、それがこちらに向かわないよう祈るしかない。


その後は静かに待った。


風呂から上がると彼はほんの気持ち程度の布を腰に巻き、頭を拭きながら出てきた。局部が見えそうになり目を逸らした。


「見たいならみせようか、ん?」


彼はそんな様子のクラウディの目の前に来てしゃがみ目線を合わせた。妖艶な顔つきに加えて風呂上がりで余計に色っぽい。あまりの光景に少女の心臓が一瞬跳ねる。


カイザックはニヤリと笑い冗談だと着替え始める。


いつものよれたシャツにダボっとしたズボン姿になるのを見て安堵するクラウディ。


「俺様は今気分が良い。まあダンジョンくらい付き合ってやるよ」


頭の隅に何か要求されるのではないかと思っていたクラウディは驚いた。()()()()を持ってまで来ていたのだが、どうやら使う必要はなさそうだった。


「さて、さっそく行くか────何を驚いてる?期限があるんだろ?」


────こいつ……本当に全部知ってるな







クラウディはカイザックを連れルーベニア魔法商店へと戻った。向かう途中にマティアスの件も伝えておく。やはり知っているのか大して驚きもしないし、レイドに嫌がりもしなかった。


中に入るといらっしゃいーとボサボサ髪のルーベが出てくるが、クラウディの側にいる男を見て息を呑む声が聞こえた。


「仮面はどうだ?」


「え、あ、あオッケーオッケーよ。中入って」


カウンターの奥へ再び入るとアイラが謎の生き物と遊んでいた。動く手のひら大の毛玉のような、顔見えない生物だ。


彼女はクラウディたちに気づくと手を振った。ただカイザックを見ると嫌な顔をする。


少女が、カイザックに見惚れるルーベに仮面は?と聞くと我に返ったのか、あたふたと手足を動かし机に置いてある仮面を指差した。


仮面は魔法陣の描かれた二回り大きい羊皮紙の中心に置かれていた。


少女はそれを手に取り顔につけた。試しに変声機能を使ってみるが特に問題は無さそうだった。が、なにか匂いが違うし、感触も似せてあるが違う気がした。


────まあいいか……


使えるのならなんでもいいかと気にしないでおく。


「なんだ解呪したのか?」


カイザックのその発言にピタリと動きを止めるクラウディ。


「…………は?お前もしかして知ってたのか?」


「んー?てっきり敢えて呪いを残してるのかと思ったが……違ったか」


少女は呆気に取られて言葉を失った。誰が好き好んでモンスターのヘイトを取るというのだろうか。しかもスキルも持たない『無職』の人間がだ。


そんなことをしたら生存率を著しく下げることになるというのに。


────絶対面白がってたな……こいつ


少女は彼を睨んだ。


「あ、あのそちらの方は……?」


「気にしなくて良い。置き物と思ってくれ。それより金を払おう」


おずおずと話しかけるルーベに、情報屋を雑に脇に押しやり、あらかじめ用意していた金貨袋を魔法師へと渡した。


「どうも……あ、せめて名前だけでも」


アイラに声をかけて外に出ようとした時にルーベがカイザックに駆け寄った。一体どこが良いのやら。中身は女たらしのクソ野郎だぞと頭の中で毒づいた。


「こいつはガイアックだ。じゃあ世話になった」


「ガイアックさん……」


何かを思い胸に抱く魔法師を残しクラウディたちは魔法商店を後にした。







「おい、相棒が不機嫌だぞ。なんとかしろ」


「知らねーよガイアック……またなんかしたんだろ?懲りねーな……」


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