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第158話 干ばつ地帯①





「悪いな坊主、部屋は満室だ」


「」


クラウディは荷馬車へと戻り、荷台に腰掛けると項垂れた。


プリムスライムが慰めるように肩をポンポンと叩く。精霊は別れてから全く同じ体勢を保っていたようだった。馬も当然無事である。


少女は自分に慰められる絵は笑えるんだろうなと思いながら他の人に見られないよう、スライムを元の姿に戻し、瓶に詰めるとインベントリにしまった。


せめて外で野営の設営は1人でやるかと見張りに許可を取って移動し、町の外でテントを2つ立てた。


料理もやっておこうとラルフから貰ったコンロに火をつけるた。やはりマナを消費しない魔道具は便利であり、インベントリにある薪も捨ててもいいかもしれない。


料理の下ごしらえはしておき2人が戻ってきたらすぐ作れるよう待機する。


しかし待てども待てども2人は戻ってこなかった。






「なんだ不機嫌か?」


カイザックが欠伸をしながら目の前の仮面の少女に尋ねた。


「別に……」


クラウディはそっぽを向き仮面の下で眉間に皺を寄せた。


結局2人は次の日の昼まで戻って来ず。アイラは酒場で泥酔して寝てしまい、カイザックに至ってはちゃっかり宿をとってしっかり休んだようだった。晩飯~昼飯まで食べて。


少女は待ち疲れて地面に横たわって眠ったのだった。


一行は昼過ぎにトロント町を抜けて谷の間で馬を歩かせていた。今は中間点というところだろう。


「そうだ、これをやろう」


カイザックは不機嫌な少女に謎の木の実を渡した。


なんの実かと訝しんでいると彼はこうやるんだと殻を歯で砕いて実を取り出すと口に放った。


真似して口に放ると栗のような風味が口内に広がる。


「気分を落ち着かせる効果があるぞ」


少女はそれを聞いて噛む前にぷっと吐き出した。口から出た実は遠くの地面で跳ねて転がった。


それを見ながら一拍置いてカイザックがやれやれと肩をすくめる。


「ふっ……相当だな。おい筋肉女!相棒が不機嫌だぞ!なんか笑えることしろ!」


彼が御者を務めるアイラに声をかける。


「え?なんで?またなんか言ったんじゃねーの?クソカイザックよー!」


2人の言い合いが始まり、クラウディはため息をついた。


────少し大人気なかったか……


後ろを過ぎていく谷を眺める。谷は高さ2、300mはあるだろうか。無機質な崖がそそり立っており落石があってもおかしくはない。


クラウディたちの他には人影はなく。そして出口ももうすぐ見えるところまで来ていた。その先は揺らいでおり高温なのがわかる。


地面も普通のものから徐々に乾燥したようなものに変わっていく。


「あー、ちょっとアチィなぁ……」


「一旦止めてくれ」


「おう」


一行は馬を一旦止め、クラウディは2人にクールポーションとホットポーションを渡しておく。


「さすが用意がいいぜ!」


少女とアイラは一気にクールポーションを飲み干し口元を拭った。かなりの量でこれはそう何度も飲めない。


ハッカのような味で口の中がスースーするとともに体も冷えていく。


「カイザックは飲まないのか?」


「俺はまだいい……」


少し汗をかいて暑そうだが体調管理はそれぞれの自由だろう。クラウディは特に何も言わなかった。


「さ、寒ぃ!早く行こうぜ!」


肩を抱いて震えるアイラはそそくさと御者に乗り込んだ。他の2人も荷台に乗り込む。進み出すが息を上げる馬を見て再び一旦止めると少女は思い出したように馬用のポーションを水に混ぜて飲ませる。


「用意周到じゃないか」


カイザックが感心してニヤリと笑った。


馬の呼吸が落ち着くと再び出発した。

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