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第157話 クールポーション・ホットポーション






トロント町は割と人通りが多く大体店は揃っているが冒険者ギルドはなく、宿屋と酒場は一つずつしかない。あとは他に目ぼしい建物はなく民家が並んでいた。


クラウディは端まで歩くと唯一ある酒場まで戻り、情報を集めようと中に入った。


酒場は1番大きい建物で、中もかなり広い。正面にはカウンターがあり、カウンターの後ろには酒樽がいくつ重ねられていた。


席も大小のテーブルが20くらいあるが、半分以上埋まっている。客の格好は冒険者が多いように思えた。


当然だが酒場の真ん中ではアイラが冒険者と酒をかっくらって騒いでいた。


クラウディはそれを無視し、正面のカウンター席が空いていたので座った。右隣には格好的には女の魔法使いがそのさらに反対側の男と話している。


「酒以外のおすすめの飲み物一つ」


店主らしき小太りの男が近づいてきたのでそう注文した。


「酒以外って……果実ミルクでいいか?500ユーンだぞ」


「ああ」


店主はメニュー見て注文しろなど、ぶつぶつ文句を言っていたが手早く飲み物を作ると目の前に置いた。


ピンク色に濁ったミルクを飲んでみるとイチゴの味がした。


ついでにおすすめ料理も注文する。


店主の他に料理人らしき者がいて、注文を聞くと作り置きしていたのか軽く火を通すとすぐに出しきた。


匂いはいいが、何の肉かわからない不揃いのものとトカゲの足やカエルのような足が混ざっておりなかなかフォークが口に進まない。匂い的には焼肉の香りだが、少し皮膚が焦げたような変な匂いもする。


「トロント名物『ごった返し焼き』だよ。知らねーのか坊主。さては田舎もんか?」


何の肉かと(つつ)いていると、左に座る色黒の男が覗き込んできた。


「最近冒険者になったんだ。ここら辺のことはよく知らなくてな」


「なるほど、まあ食ってみなよ案外美味いから」


よく見ると彼も同じものを食べている最中のようだ。


クラウディは仮面をずらしてまともそうな肉を口に入れた。


────味は普通に焼肉の味だな……牛っぽい


次にボロボロ崩れる謎肉。これはレバーのような癖のある味だが嫌いではないので問題はない。しかし問題は生き物の足の形を残した肉だ。


恐る恐る食べると、舌でなぞる触感は最悪だったが思い切って噛んでみるとこりこりとして軟骨みたいで意外と美味かった。


「美味いだろ、1番人気なんだぜ?安いし」


店主がガツガツ食べる仮面の冒険者をみて笑った。


「美味かった。安いならお前のそれ奢るぞ」


ペロリと平らげるとクラウディは隣の男の皿を指差した。


「お、マジで?悪いな、駆け出しなんだろ?」


「ついでと言ったらなんだが、この町とこの先にあるものを教えてくれ」


なるどねと店主と目を合わせ肩をすくめた。


「ちゃっかりしてるな。ちなみにランクは?俺はBだが」


「Cだな」


「あー……仕方ねーな────」


トロント町────

通称『救い谷の町トロント』。トロント町は随分前からある町で、この先にあるアーベルへと続くまでの最後の町である。トロント町のすぐ後ろの谷を抜けると数百キロ㎡の干ばつ区域が広がっている。

道具屋にはクーラーポーションとホットポーションが多く売っており谷の先に進むには必須アイテムとなっている。


「────こんな感じかな」


────なるほど、だから『救い』か


冒険者にとって休む所と道具の補給ができる場所があるのはまさしく『救い』だろう。


「あとちょいちょいモンスターもいるから気をつけろよ」


「どんなモンスターだ?」


「厄介なのはブラバーダとかパーバードぐらいかな。主もいるが滅多に出ないし」


少女は説明がそこで終わるので男の前に銀貨を5枚置いた。だが店主がそれを戻す。


「こんな情報にそこまでやる必要はないさ」


男は舌打ちし、今度は店主が丁寧に教えてくれる。


ブラバーダー────

赤黒い大トカゲ。身の危険を感じたり、狩りをするときに噴射穴から結晶化された血液を飛ばすことが出来る。倒した後はレア素材の眼球が宝石になる。ただ難易度はBランク。


パーバード────

頭が禿げた鳥で群でいることが多い。嘴と鉤爪が鋭く、基本は臆病であるが飢餓状態になると空中から生き物を裂いて食い荒らす気性を持つ。肉が美味い。


「助かる」


軽く会釈すると店主は美味いデザートがあるぞとメニューを見せた。情報を教えてもらった手前であるため1番高いやつを頼んだ。


料理人に指示してすぐに作らせると、ものの10分で目の前に置かれる。


正直にいうとただの果物盛りだ。ただ量が半端ではなく5人分はあるのではないだろうか。


クラウディはいくらか食べるが流石に食事の後なので先程の男と食べ、さらに皿にとりわけて反対側の女魔法使いとその話している男に分けた。


「あら、奢り?ありがとーボク。ほらこれ奢りだってー」


彼女と話している男がクラウディに気づくと軽く感謝の手を振った。少女も軽く会釈しデザートを捌くと金を払って席をたった。


「気をつけろよ」


色々教えてくれた男がポンと少女の尻を叩く。


「あ、ああ……」


────最近よく尻を触られるな……


少女は気にせず、酒場の真ん中で酒を喰らっているアイラの肩を叩いてほどほどにするよう伝え、外に出た。


外に出ると先程の情報をもとに道具屋へ向かう。すでに見つけていたので迷いなく進み、到着するとすぐに中に入った。


意外と店は大きく、やはりクール・ホットポーションの棚がずらりと並んでいた。それでもかなり売れてしまったのだろう半分以上空になっている。


ポーションは丸い透明なフラスコ瓶に詰められており容量も結構ある。


道具屋の店主に尋ねると1本飲みきりで1時間程効果があるそうだ。


────これだけ飲んで1時間……


ポーション系で注意するべきはやはり摂りすぎである。胃に入るとすぐに吸収されて効果が現れるが、水分も体に入ってしまうので水中毒になるらしい。


1日に5リットルも6リットルも飲むとすぐに水中毒になってしまう。見たところフラスコ内の水分量は300ml。


一気に飲むにはかなりの量だ。クール状態で歩くならそこまで汗もかかないはずで、もし仮に夜もホットポーションを飲むなら多飲は出来ない。


クラウディはポーションを手に見つめたまま小一時間唸った。


その間にも他の冒険者や行商人が来店し徐々に商品が減っていく。


焦った少女は取り敢えず1人それぞれ5本ずつ計30本購入した。締めて22500ユーンだった。大袋に詰めてもらう。


それと店主から移動手段を聞かれて馬用のものも勧められ小瓶をいくらか買った。


重いので一旦抱えて外に出ると店の裏でインベントリに全て突っ込み、再び中に入った。


次に回復ポーションを中級1人5本ずつとハイポーションがあったのでそれも1本ずつ購入した。


効果を聞くと致命傷でなければ取れた腕などもくっつくそうだ。値段は1本10万ユーン。


跳ね上がりすぎだと思うが、元男の世界なら時間がかなりかかるし完全に元通りには戻らない。この値段で治るなら安い方だろう。


あとは雨のスクロールというのが気になり、説明を聞いて5枚購入し外に出た。


他にも武器屋や雑貨屋に寄って色々買い足すと気付けば夕方になっていた。


「しまった!宿取ってない……」


目先の目的の為にまたやらかしたと頭を抱えるクラウディ。


仲間の2人にどやされるかもしれないと思うと過去の自分を殴りたくなった。


しかしまだそうと決まったわけではない。クラウディは急足で宿屋へと向かった。

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