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第148話 歓迎の儀③







「あなたラルフ様の何?」


「へ?」


「この人アレじゃない?ラルフ様に剣で勝ったっていう仮面の客人」


「あ~なるほど。勝ったからって調子に乗って言い寄った感じ?」


「いやこの服じゃない?見てこれエッロ!」


女エルフの1人がクラウディの胸を後ろから鷲掴みにした。


「?!」


「え?胸当てしないこの娘。下品すぎ!」


「このケツ、パンツ透けてんじゃないの?よくこれ選んだわね。上とか殆ど裸じゃない?」


別の女エルフが少女の尻を叩いてむんずと掴んだ。


ビクリと身体を跳ねらせ何が起こっているのか混乱する少女。先程まで興味すら示さなかったエルフたちが何を考えてるのか分からず身体が硬直してしまう。


「ラルフ様みた?この人族の胸チラチラ見てなかった?」


「確かに~、へ~?こんなのが好きなのかなぁ」


「馬鹿言わないでよ!ラルフ様はこんな猿相手にするわけないでしょ!」


痛いくらいに胸と尻を揉まれ、彼女らの会話を聞いて何となく理解した。おそらくラルフが少女を気に掛けたのが気に入らなかったのだろう。


徐々にエスカレートする触り方に流石に叩きのめそうかと考えが頭に浮かぶが、ここで問題を起こすとまた牢屋にぶちこまれかねない。かと言って男がこの程度で助けを呼ぶのは嫌で、下手に抵抗せずやり過ごすしかなかった。


「なんか息荒くない?」


「え、感じてんの?気持ち悪~っ!」


「おいっ。何してる?」


ふと低い声がして顔を上げると髪の短い男のエルフが見下ろしていた。


彼を見て顔が青ざめる女エルフたちは慌てて少女から離れた。


「この方は大事な客人だぞ……お前たちわかってるのか?」


乱れた格好のクラウディを見て片眉を上げる。


「い、嫌ですわー。ちょっと遊んでただけです」


「そ、そうそう。ねー?えーと……客人さん?」


────こいつら……


白々しい態度にクラウディは1人ずつ殴りたくなったが何とか堪える。


男エルフはため息をついてクラウディに手を差し出した。


「大丈夫ですか?よろしければこちらにいらして下さい。男どもでアレですが……」


「あ、ああ……助かった」


少女は彼の手を取り立ち上がると他の所へと向かった。後ろからは悪態をつく声が聞こえる。


「オホンっ。クロー殿。服を正してもらってよろしいかな?」


「へ……?あっ」


言われて改めて自分の格好を見ると胸が溢れそうになっており、タイツもズリ下がってショーツが見えていた。


慌てて着直すと隠すように仁王立ちする男エルフの背中に声をかけた。


「悪いな……変なもの見せた」


「いえいえ、素晴らしい身体をお持ち────いや早く気づかず申し訳ない」


クラウディは彼に連れられ、男エルフたちがワイワイやっている所へ案内された。


途中アイラの姿を探すとまた別のところに行っており酒を煽ってクネクネと踊っていた。周りのエルフも笑って楽しんでいるようだ。


────ダメだな俺は……


自分の今の状態に嫌気がさしてため息をつく少女。


「あ、どうでしたか?無事でした?」


近くまで行くと男エルフの1人がやや不安そうな表情をして話す。


「お前の言った通りいびられてたよ、フェリオス。連れてきたけど良かったか?」


「もちろん!話したかったですし」


クラウディは促されて席に座った。男エルフたちは5人で今度は蔑視線は感じない。


どれも美形で他の女性が見たら目が眩むのではないだろうか。


先程のフェリオスと呼ばれていた男エルフに視線を向けるとどこか見たことがある気がした。目元の優しげな長髪のエルフだ。


「お前は洞窟に行く時の……」


ダークエルフ撃退作戦で話しかけてきたエルフで、その時は髪を後ろで束ねていたが、今はサイドに流している。


「あ、覚えてくれてました?改めましてフェリオスと言います。えーとクローさん?で良かったですかね?」


堅苦しい言い方に少女は敬語は使わなくていいと伝える。


「あは、わかったよ。大丈夫だった?あのグループ陰湿だからさ」


「まあ、エルフのイメージが少し変わったか……みんなお淑やかな者かと思ってた」


「はは……大体はそうなんだけど。流石に全員ではないかな?特にラルフ様は人気だからね」


彼は立ち上がるとすでにいた男エルフを押し退けクラウディの隣に座った。


押し退けられたエルフはおいおいと小突くもおどけており笑いながら応じた。


「ご飯は食べた?良かったら食べてよ。テーブルごとに少し違うからさ」


言われて確認すると確かに目の前の切り株テーブルにはサラダ類と、飲み物や果物が多かった。


「仮面邪魔じゃない?」


飲み物を飲んでいると別の男エルフが言う。さっき聞いたなと思い、同じ説明をすると残念そうに口を尖らせた。


「クローさんこれも美味いよ、知ってる?ラオマっていう果物なんだけど」


また別の男エルフが卵大の殻に覆われた実を叩いて割りそれをよこした。受け取って見てみると中には白くて丸いツヤツヤしたものが入っている。この前食べた果物だった。


────改めて思ったが……ほぼライチだな


迷わず口に入れて噛むと汁が溢れて口内を満たした。甘く少し酸っぱい。


「クローさんはどこで剣術を?ラルフ様はここでは1番に強いんだけど」


「え、この娘がラルフ様を?」


「そうそう強いんだこの娘。洞窟でもすごかったし」


「へぇ……」


再び少女に視線が集まる。


「剣は……あー、え~……」


「はは、答えにくかったらいいよ」


どもっているとフェリオスが苦笑いしそう言ってくれる。


剣術に関してはあくまで体が覚えているという感覚で、詳しく思い出そうとすると頭痛が走るのであまり考えたくはない。適当に誤魔化そうとしていたので彼の発言には助かった。


「じゃあ、そうだな……ラルフ様は強かったかい?」


────また答えづらい質問だな……


おそらくラルフというエルフは他のエルフの反応を見るにかなり位の高い人物だろう。アルディシエに意見をするぐらいなのだから当然だが。


剣の腕に関しては、少女にしてみれば大した事はなかった。先のダークエルフと良い勝負だろう。


地上での戦いでもあったので下手したら不利なダークエルフの方が、剣ではラルフより本来なら強いのかもしれない。


ただ尊敬されているような人物を下に見るような発言はしたくはなかった。


「その感じだと大した事なかったかな」


首を捻っている姿を見てフェリオスが言う。


「おいおい2人で喋ってんなよ。混ぜろよー」


クラウディの隣に座っているエルフが少女の肩に腕を回した。それを見てあとの3人も近くへ来る。


「俺はアルヴァンよろしくクロー!」


馴れ馴れしいなと思いながらも頷く少女。


「僕はミリアス。よろしく!」


ポニーテールのエルフが目の前に座ろうとするのでクラウディは少し後ろにズレた。その際に後ろに座るエルフにぶつかる。


「あ、悪い」


「大丈夫。クローはお酒飲めるの?」


「いや酒は苦手で……」


「甘いのならいける?割と弱いのもあるよ」


後ろのエルフがミリアスに声をかけて木製のコップに飲み物を用意させてクラウディに渡す。


赤い飲み物でブドウのような甘い匂いがした。


────酒は苦手なんだがな


そう思い少し口をつけてみるが、殆どジュースのようで味もブドウであり飲みやすい。


「あ、飲める?良かったー」


後ろから安堵する声が聞こえた。


「ね、どこから来たの?」


「歳はいくつなの?」


「彼氏はいる?」


「好きなタイプは?」


酒の件を皮切りにエルフたちは距離を詰めて質問攻めにする。少女は顔も見えないのによくそんなことが聞けるなと思いながら酒をちびちび飲んだ。


よくみればフェリオス含め酒を飲んでおり酔っているようだった。


質問には適当に答え、少女は薄い酒を飲んでいった。

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