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第141話 地下洞窟の調査2-②



エルフたち一行は警戒しながら進み、例の洞窟が見えるところまで来て茂みに隠れた。洞窟の入り口は縦横2m小高い丘の足元にぽっかりと開いていた。苔か何かの根なのかわからないが垂れ幕のように下がっており雨上がりの雫がポタポタと落ちている。


出た時はハッキリと確認はしていなかったが、少女たちが脱出した出口だ。


ラルフが魔法使いに何か指示し、その魔法使いが詠唱を始めるとうっすらと足元に魔法陣が現れて消えた。


しばらく待機していたが、やがてその魔法使いがラルフに何か耳打ちする。


「彼らの領域の境界まで反応なし。行くぞ」


先程の魔法使いが先導し『ライト』魔法を唱え杖の上に小さな光球を浮かべた。


杖を掲げ足元に気をつけながら洞窟へエルフたちが次々と入っていく。


クラウディたちもそれに続いた。


洞窟内は入り口付近は『掘った穴』という荒削りなもので尖った岩などが突き出していて危なっかしい。


よくこんな危険なところを大した傷もなく脱出できたと今更ながらに少女は思った。


しかし奥に行くにつれて洞窟は広くなり少し歩きやすいよう整備されたような空間へと変わっていく。位置的には地上から100mほど降ったところだろうか。当然洞窟は下の方へと続いている。


一行は進んでいったが、ふと魔法使いの光魔法が突然消えた。


他エルフたちがざわつくが、ラルフが落ち着くよう伝えランタンを持ってきていたのかそれに火を灯した。


「ここから魔法が使えない。クロー殿、先頭を任せても?」


ランタンがあるなら最初から使えよと思っていたが、正確な魔法分離の位置把握のためだったかと頭を掻いた。


クラウディは他の2人に声をかけて先頭に立った。


カイザックも予備のランタンを取り出して灯りをつけた。


洞窟は縦横5mまで広がり、衛兵たちと入ってきた横穴を通り過ぎた。エルフの1人が横穴を指摘するがクラウディがラルフを経由して説明するとその穴からは離れた。


さらに進んでいくと再び洞窟が狭くなって行き、やがて一際広い空間に出た。縦横10mはあるだろうか。血の匂いと何か腐ったような腐敗臭がする。例のダークエルフと遭遇した場所だ。


床には赤い魔法陣が描かれており、中央には何かの肉塊のようなものが置いてあった。少女たちが襲われ始めた場所だ。


呪いの儀式でもやったのかと思うような画である。


エルフの魔法使い2人が何か話し合い、他のエルフたちも辺りを調べ出した。


「カイザック……どう思う?」


少女はカイザックに聞いた。元男はこの世界の魔法には詳しくないが、何の意味もないのにこんなことはしないだろう。軽んじてはいけない、そんな気がした。


「何処かで見たような気がしないでもないが……はっきりしないな」


ランタンを高く照らしながらカイザックは魔法陣を眺めて首を傾げた。続けて視線を送るのは中央の肉塊。鉄と膿が混ざったような臭いが微かに漂っている。


「クロー殿。奥に進もう」


近づこうかと迷った時ラルフに肩を叩かれ、一行は再び奥に進み出した。どうやら何かの術式の可能性があり近づかないようにするらしい。


奥に進むと先程よりやや狭い空間に出てそこで行き止まりだった。


エルフが何人か前に出てきて辺りを調べる。壁を叩いたり耳を澄ませたり。


やがてラルフは何人かの報告を受けて一同を見渡した。


「どうやらこの先は完全に塞いでいるみたいだ。ダークエルフたちは去った後らしい」


その言葉にそこかしこから安堵の息が聞こえた。


「これより洞窟にマーカーを付与する。少し待機してくれ」


「マーカー?」


「マーカー。地上からここ位置を確認出来るようにして、上から魔法で洞窟を完全に塞ぐと言うことだよ」


クラウディが呟くと近くにいた魔法師が聞こえたのか、説明してくれた。高い声で女性だとわかる。彼女は何か他に言いたげであったがラルフに呼ばれて作業に入った。


「俺たち来る必要あったか?」


「さあな。結果論だろ」


「なあ────」


「まあそうだが、魔法で埋めるなら適当に上からやれば良かったんじゃないのか?」


「なぁって────」


「エルフは大地を愛するっていうから荒らすことは極力したくないんだろ」


「聞けよ!」


クラウディとカイザックが話しているとアイラが口を挟んでいたが、無視されたと感じた彼女は声を荒げた。


「なんだ筋肉女?小便か?そこら辺でしてこい」


「殺すぞ!女ったらしが!────て、そうじゃなくて。これさ、何だと思う?」


アイラは地面の方を指差した。その方向を辿ると地面に薄っすら真っ直ぐな線が描いてあり、さらに線を辿って行くと天井へと続き、そこには魔法陣のような何か描いてあった。小さな円に複雑な模様があり円の中心から来た道の方へ1本の線が天井を伝って続いていた。


────さっきまで気づかなかったな


「…………筋肉女。それ、踏んだか?」


カイザックが何かに気づいたのか険しい表情となる。


「踏んだ」


「まずいぞ」


「何が?」


「思い出したんだよ。ダークエルフは得意な魔法に『召喚』があるんだが、これは敵を罠にはめるもの。通称『背壁の召喚』という────」


カイザックはそこで言葉を切った。何故なら地響きがし出したからだ。


一同が揺れに耐え揺れがおさまったかと思えば洞窟の入り口側から悲鳴が上がった。

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