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第140話 地下洞窟の調査2-①







次の日、早朝────


クラウディは目が覚めるとアイラを起こしすぐに戦闘の準備を再確認した。


いつもの男装をして首に『生命石』をかける。魔法衣は動きにくく繊細さに欠けるので、迷ったがインベントリにしまった。いつもの男装にアイラはがっかりしていたが動きやすい格好が1番である。


アイラもそれに習いいつもの薄着のビキニアーマーに着替えた。


「まあ気持ちは大事だよなぁ……」


背中に属性武器の大斧『ライアク』を背負う。 


そうこうしていると迎えにきたのか垂れ幕からリリウィスが顔を覗かせた。


その際に仮面を返却される。


「すみません返却を忘れていて」


「構わない」


クラウディは仮面を受け取ると装着した。いつもの視界に、落ち着いた気分になる。なにかに守られてるようなそんな気分だ。


『生命石』に触れた状態で仮面をつけて変声するとマナを消費してしまうが微々たるものなので大丈夫だろう。消費したらまた込めて貰えばいい。


アイラとクラウディはリリウィスの案内にて里の境界へと案内された。


外と里の境界には編成隊だろうエルフたちが集まっていた。ほとんどのものは剣や弓を装備し、2名ほど魔法使いらしき格好をしている。全部で数は10人。他にラルフとアルディシエの姿もあった。


カイザックも既に合流しておりやはりいつもの服装だった。荷物はなく、おそらくインベントリを持ち歩いているのだろう。アルディシエと話しているが2人に気づくと側に来て少女の肩に手を置いた。


「頑張れよ」


「は?」


クラウディたちが合流すると視線が集まる。カイザックの言葉に首を傾げていたがラルフが前に出てきて木剣を2本投げてよこした。地面に落ちたそれを拾って顔を上げると木剣を構えるラルフが目に入る。


他のエルフを見ると訝しむようなそんな表情が多く見られた。


────ああ、なるほど


おそらく認められてないのだろう。異種族が混ざるのだけでも嫌なのに、さらに前に出てくるというのだから尚更だ。強さを示すその確認の役にラルフが選ばれ、少女はこれを突破しなければならないようだ。


「悪いな、出発前に。どうも我々は人族を下に見てしまうもので」


「いいさ、どうでも……」


クラウディは鍔のない木剣を空中で回転させたり軽く素振りして具合を確かめ、剣先を下げて構えた。


ラルフはものは片手剣のような形で正中に構えた。基本に忠実な印象を受ける。


お互いギリギリ間合いの外でそれ以上近づかない。


────どう攻めるかな……


少女は相手の呼吸を見ながら相手のギリギリ間合いの外から左腕を振った。本来なら届くはずがないが、剣の柄の端を指で掴んで振ったために刃が届く。


相手は虚を突かれたものの反応して剣のヒラで弾いた。剣は指で掴んでいたために当然、威力や把握力はなく手から離れてその場で回転する。


クラウディは身体をそのまま回転させて反対の剣で斬りつけようとしたが、相手が屈む姿が目の端に映り急遽後ろに飛んで迫る剣を回避した。


敵の剣が脇腹を掠めるが、構わずさらに回転し空中を舞ったままの剣の柄を反対の剣先で捉えて飛ばした。


剣はラルフの鎖骨に直撃して鈍い音を立てる。彼が驚いて呻きバランスを崩した所で少女は着地し、すぐさま追い打ちをかけに突進する。落ちた剣を拾い上げそのまま斬り上げた。


ラルフは首元を抑えながら何とか必死にのけ反って躱し、続く左右から来る攻撃に何度か反応して弾くがいくつも防御をすり抜けてくる攻撃にあざが増えていく。たまらず下がろうとするが追撃が激しく逃げられず。


少女は相手が脱しようと力任せに横薙ぎに剣を振ると、相手の腹に剣先を軽く当てながら滑り込むように身を屈めて回避し、そのまま反対の手で前足を掬い上げて後ろに転倒させた。


呻く相手に馬乗りになり首に剣を突きつける。


ラルフの荒い息遣いだけが聞こえ、負けを認めたようにガクリと脱力する。


少しして、その様子に信じられないという声がそこここで聞こえた。人間風情がエルフに勝つとは思わなかったのだろう。


「そこまで!」


勝負はついたと誰もが認めたところでアルディシエが手を上げて声を上げた。


「改めてクローの剣術見たけどやべーな」


いつもこういった勝負にはヤジを飛ばすアイラだが、仲間の剣技に目を奪われて呆然と眺めて呟いた。


「闘神アイラ様も勝てないか?」


その様子にカイザックがニヤリと笑った。


「は、まさか!私のが強い!……けど、同じ土俵じゃ微妙だなぁ……」


クラウディはすぐさま攻撃をやめ木剣を捨てるとアイラたちの元へと戻った。


ラルフは僧侶のエルフに回復魔法をかけてもらい傷の手当てを受けた。傷を治し終わるとアルディシエが招集し、声を張り上げる。


「これで証明は出来たはず!つまらないいざこざは今は忘れて目の前の敵に集中せよ!」


『ハッ!』


エルフの編成隊は姿勢を正して声を張り上げて族長に返答し、彼女が目的地の方向へ手をかざすと進み出した。


「私は結界を保たねばなりませんので行けませんが、どうかご無事で」


アルディシエはクラウディたちが目の前を通ると一礼した。


クラウディは頷き、進むエルフたちについて行った。他2人も続く。


一行はエルフたちについて行ったが、まず驚いたのが音をほとんど立てないと言うことだ。


アイラの大きな足音と草をかき分ける音だけがはっきりとわかる。


森で住む者たちだからだろうか、気配も完全に消えていればそこら辺の動物も気づかないだろう。それほどに静かだった。


そして彼らは迷いなく進んでいく。


「なあ?今どこに向かってるんだ?」


アイラがクラウディの側に来て聞く。方向からしておそらく少女たちが脱出した洞窟だろう。アイラは気絶していたので分からなくても無理はない。


説明をすると理解したみたいで大人しく先程のカイザックの前の位置まで戻っていく。


エルフたちは訓練してきたかのように足並みを揃え迷いなく進んでいった。


問題なく進んでいたが、エルフのうちの1人が徐々にペースを落としてクラウディたちのところまで下がる。


その様子に少女は警戒して剣に手をかけた。先程まで不平の目を向けていたのだ。一体何を言いに来るのか。


「クロー……さん?でしたかね?お噂は予々聞いてます。あのラルフ氏を打ち負かすとは感服しました」


隣に移動しながら男エルフが言う。少女が剣に手をかけているのを見てフードを取り顔を晒す。身長は少女より高く、長い金髪は後ろで束ており、整った眉、左右対称のパーツ配分には流石というほどの美貌だ。ただ目元は優しく目に映る人間を見下す感じはない。


「噂とは?」


「あのダークエルフをも打ち負かしたと聞いています。見たのはラルフ氏だけとの話でしたが、先程の事で私もあなたが好きになりそうです」


「……はぁ。それはどうも」


元男の世界の小説では、エルフは剣技や魔法にかなり関心があると聞く。アルディシエも魔法具には目がないようではあった。彼もそういった口なのだろう。


ともあれ敵意がもうないのなら警戒する必要もない。クラウディは剣から手を離した。


それを見て彼は微笑んだ。


「また機会があればお話しさせてくださいね」


「え?ああ……」


名も知らぬエルフはラルフの視線を感じたのかいそいそと所定の位置まで戻って行った。


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