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第138話 カイザックとアルディシエ①







歩いているとふとタバコの臭いが漂って来て、その臭いがする方向へ向かうと大きな切り株の上でカイザックがタバコをふかしていた。ちゃっかりワインを持って来ており時折瓶に口をつける姿が目に入る。


クラウディは気配を完全に消しておりまだ気づかれていない。そのまま近くの木の影まで近づく。


カイザックもエルフの客人用の衣装なのか、脇のばっくり開いた服を着ていた。馬子にも衣装というのだろうか、容姿と相まって映える。


少女は案外早く発見できたことに安堵しつつも同時にそのゆったりとした様子に少し腹が立ってもきた。


「何をしている」


クラウディは姿を現してカイザックの目の前に姿を見せた。彼は驚いたように目を見開き優しく微笑んだ。


「これはこれはお嬢さん。こんな夜更けにどうした?道にでも迷ったか?」


────ん?なんか


「ここはお嬢さんが気軽に足を踏み入れるところじゃない」


────もしかして気づいていないのか?


少女は仮面を返してもらって居らず素顔だった。カイザックはどうやら気づいていないようで話し方も柔らかい。


丁度その彼に腹が立っていた少女はほんの出来心でイタズラしてやろうと思考を回転させた。


当然だ、牢屋では彼を呼んだのにアルディシエと話にいってくれなかったし姿を見せないし、こんなところでくつろいでいるのだから。


クラウディはフロレンスとの淑女としての特訓を思い出し口を開いた。


「夜分遅くに申し訳ありません。あなたはこの森に住んでいる人ですか?綺麗な森があったものでちょっと足を踏み入れただけだったのですけど、ここはどこでしょう?」


────言っててなんだが、気持ち悪いな


自分の女性の喋り方に嫌悪感を覚える元男の少女。しかし散々フロレンスに鍛えられたので多少なら耐えれた。


「へぇ……こんな夜更けに?こんな奥まで?」


「森の外で野営をしてまして。ちょっとのつもりだったのですが、どうやら道に迷ってしまったようです。長く歩いたので少し疲れました」


「それはそれは……」


彼は少し休むといいと言って自分の隣に座るよう切り株を叩いた。


クラウディは小股で歩き、服の裾を押さえて切り株の縁に座った。そしてわざとらしく息を吐く。


「……助かりました。こんなところに人がいるなんて」


「ここはエルフの森だ。下手をしたら捕まってしまうぞ」


「そうなのですか?よろしければ出口を教えて頂けませんか?」


そういうとカイザックは少女を上から下まで眺めニコリと笑った。


「なんなら送って差し上げようと思ったが、今日はもう遅い。静かで休める所を知っているからそっちの方へ案内しよう」


言いながらカイザックが少女の肩に手を回して引き寄せる。


────なるほどこうやって連れ込むのか


クラウディは自然に連れ込もうとする男に感心した。もちろん肯定はしないが。


「仲間が待ってますのですぐに帰りたいのです。よろしければ出口を教えて頂けませんか?」


少女は肩に置かれた手を払うと1人分距離を取った。残念そうに苦笑いするカイザック。


「それは残念。そこまでとは……ちなみにどんな仲間だ?」


「そうですね……1人は酒好きな女の子で、もう1人は女好きな困った男です。あっちこっちでヤるもんだから猿かと思ってまして……あなたみたいな?」


────お前の事だカイザック


カイザックを指差してふと流石にバレるかと焦る少女。しかしカイザックは微笑んだ。


と思えば力強く少女の腕を掴まえ、切り株の上に引き倒す。


「痛っ」


クラウディは肩をさすり、文句を言うため起きあがろうとしたがカイザックは少女の肩を掴んで押し倒した。そのまま馬乗りになる。


「か、カイザック……?」


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