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第136話 アルディシエ④







アルディシエはそれを聞いて顔を輝かせた。


「感謝します……ところで」


「?」


「精霊関連のアイテムを他に持ってませんか?」


クラウディは言われて少し考えた後インベントリから精霊の森で手に入れた『ネグリジェ』と『プリムスライム』の瓶を置いた。


ネグリジェを見ると『まぁ』と驚いて手を口元に持っていく。持ち主の許可をとってそれに触ると光に透かした。


「え、透けてますけど……そういった趣味が?」


アルディシエの少女を見る目がジトリとしていた。確かに側から見るとただのエロ下着だ。


クラウディは誤解を解くためにどういったものかを説明した。


それを聞いて彼女はネグリジェの裏地に手を入れた。そして驚いて手を引っ込める。


「これは……」


「どうした?」


「驚くほど何もありません」


────えぇ……


少女はそれを聞いて肩を落とした。何もないならただのエロ下着であり、捨ててしまおうと思った。


「何もない、いえ、そうじゃないですね……内側に強力な結界が張ってあります。この張り方はまるで存在を固定するような……」


「存在を固定?」


「はい。見たところあなたは驚くほどにマナを感じません。『精霊の森』は逆にマナが溢れているのであなたのような方は本来なら存在出来ないのです」


「あぁ……なるほど」


────だから『脱ぐな』と言っていたのか


フィレンツェレナがネグリジェを脱ぐと弾かれてしまうと言っていたことを思い出し、1人納得する少女。


「外側から圧縮して?いや内と外から……?でもそんなこと……一体どうやって────」


何やらエロ下着を眺めながらぶつぶつと呟く族長の姿はかなり危ないイメージを受ける。クラウディは長くなりそうだと出したスライムを片付けようとした。が、素早くひったくられる。


「これも見せてください!」


彼女はネグリジェを少女に放ると今度はスライムを舐めるように眺めた。今度は許可なく瓶の蓋を開けてスライムを机にゆっくりと落とした。


「『プリムスライム』。これがあのS級のシャドウレインのコアから呼び出したという……」


「S級?」


「?シャドウレインはそちらでいうS級でしょう?天災級とも呼ばれていますが」


誰かに話すこともなかったので勝手に自分の中でランクづけして気にもしなかった。クラウディはS級モンスターを倒していたのだ。もっともその時の記憶はないが。


アルディシエがスライムを見て何か難しい表情をしていたがやがてため息をついた。


「やはり私ではダメですね。この子は何が出来るのですか?」


少女はスライムに簡単な指示をした後、その様子を見せ、全部見せるべきか迷ったが、今度は自分の姿を象らせた。


「生物を真似るスライムですか……これも興味深いですね」


彼女は立ち上がると旅人の服を着たクラウディを真似るスライムの前に立ち、ベタベタと触り出した。スライムは当然無反応だ。


そして少女が初めて見た時と同じく服を剥ぎ取り出す。


少しの間見ていたが全て剥がそうとするので慌てて止めに入る。


しかし思った以上にドタバタしてしまったのか、物音に反応したラルフが勢いよく入ってくる。


「どうしました?!やはり人族!私たち……を?」






クラウディはラルフと部屋に戻るところだった。アルディシエは少し取り乱しており、物品を回収するとすぐに出るようにラルフから言われたのだった。


「申し訳ない。アルディシエ様は魔法関連には目の色を変えてしまうので、少々迷惑をかけたようだ」


ラルフは鼻に綿を詰めながら謝った。その綿はすぐに血で赤く染まっていく。少しは警戒が解けたのだろうか、口調が柔らかい。


────変なもの見たせいか?


スライムではあるがほぼ裸のクラウディの姿を見たラルフはまともに少女の顔を見ない。


「別に構わない。それよりこの後はどうすれば良い?」


「私もおおよその話は検討がついてる。お前たちは明日まで休め。早朝には部屋に戻っていること、いいな?」


「了解────あ、ちょっと待ってくれ」


ラルフがクラウディたちが休む大木の下まで来ると足早に立ち去ろうとしたので呼び止める。


「なんだ?」


「カイザック……一緒に捕まった男がいただろ?そいつはどこにいるんだ?」


「あの男ならお前らのすぐ上の部屋だ。ではな。明日せいぜい死なないように」


物騒なことを言い残してラルフはどこかへ歩いて行った。


クラウディは自分の部屋へ戻る前にカイザックの部屋へと向かう。


カイザックの部屋は垂れ幕ではなくドア付きとなっており、入ろうとしたが鍵がかかっているのか入れなかった。


いくらかドアを叩いてカイザックを呼ぶが反応はない。


仕方なく少女は部屋へ戻った。


「よ、おかえり!」


部屋へ戻るとアイラがインベントリから酒を取り出して飲んでいた。


「おい、この状況で酒飲むな」


取り上げようとしたが彼女はひょいとかわした。


「待ってくれよ!あんま酒ないし程々にすっから!いいだろ?!」


「……その1本だけにしとけ」


「へいへい」


クラウディは用意されているベッドに腰掛けた。マットは柔らかく、布団はどうやら羽毛が入っているのかフワフワとしていた。


少女はカイザックのことを同室者に聞いてみたが彼女は部屋から出ておらず知らないと答えた。


色々聞きたいことがあったがいないなら仕方がなく、クラウディは明日に向けて道具やらを手荷物に支度し始めた。


準備しながらアイラにも先程のアルディシエとの決まりごとを話した。少し驚いたようだったがとくに否定することもなく、ついてきてくれるようだった。


「クローがいくなら私も行く。『ライアク』持ってけば多少戦えるっしょ」


そう言って彼女も手早く準備すると再びちびちびと、酒を煽り始める。


────理解がいいのか……そこまで考えていないのか


楽観的な性格の仲間を見て助かった反面心配になる少女であった。


────カイザックどこ行ったんだ?















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