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第131話 ダークエルフ②







ダークエルフたちは3人が森に中に入ったあと不思議と追っては来ているが深くまでは来なかった。


しかし隙を見せると矢が飛んでくる。クラウディは矢を弾くと、地面に刺さったそれを引き抜いた。矢尻には毒などはなさそうだ。


アイラは一瞬意識が戻ったので何とかポーションを飲ませて傷は塞いだが出血が激しかったのか再び気を失ってしまった。少女もポーションを飲んで傷を塞ぐ。


「くっ、この筋肉女重い……」


戦士であるアイラは筋肉量が多く、少女よりも重い。カイザックはずっと背負っているので息を上げていた。斧は重いのでカイザックが持って来ていたインベントリに入れていた。


空を切る音と共に再び後方から矢が飛んでくる。


今度もクラウディは反応して剣ではたき落とした。


「いつまで追ってくる……」


「ダークエルフは執念深い……もっと奥に行かないとダメか」


カイザックとクラウディは追っ手の射線上に出来るだけ木が重なるようジグザグに走っていく。


雨が降り仕切ってはいるが木々が雨除けとなってそこまで体力は奪われない。


そのまま進み振り切れるかと思った矢先に、1人のダークエルフが目の前に降り立った。長い銀髪を背中まで伸ばしている、長身の男だった。肌は浅黒く、顔立ちは整っている。


「木々の上から伝って来たのか、流石エルフだな」


カイザックは言いながら後ずさった。


「これ以上は進ませン。ここで貴様らは殺す」


敵は両腰に下げていたシミターを両手に構えた。


────二刀流か……


戦うしかないかとクラウディも同じく両手にシミターを構える。


それを見て敵は片眉を上げた。同種の武器に手数、何か感じるものがあるのか。


じりじりと距離を詰め、間合に入った瞬間にお互い剣を振る。


お互い初撃の一撃を弾くと、クラウディは敵の左薙の攻撃を下がって避け、追撃しようと踏み出した敵の足を頭を下げながら斬りつけた。痛みに敵の顔が歪み、一度下がると連続で突きを繰り出してくる。


少女は上体を横にすると左右に揺らし全て回避し、一際右を深く突き出した時に体を外側に半回転させ、返す手で敵の首元に斬りつけた。


相手はすんでのところで頭を下げて回避し、慌てて横に体移動させ距離を取ろうとする。


少女はそうはさせじと崩れた体勢の敵に食いつき、左右の手を別々に動かした。不規則な軌道の剣に敵は翻弄され防御が間に合わずいくつも傷が出来る。


そして相手が苦し紛れに蹴りを繰り出した。危うく軸足を取られそうだったが少女は自ら飛んで回避し、身体を回転させるとそのままの勢いで袈裟斬りを繰り出した。


相手が剣で防いで火花が散るがあまりの威力に防ぎきれずそのまま吹き飛んだ。


「くっ……うっ」


ダークエルフは息を切らしながら切り裂かれた肩を抑えた。


クラウディは止めを刺そうと前に足を踏み出したが、カイザックに肩を掴まれた。


「もういいクロー、ここまでだ」


敵は動きを止めたクラウディたちをみて辺りを見渡すと歯軋りし、よろめきながら何処かへ去っていった。他の敵の気配も消える。


しかしその直後にいくつもの別の気配がクラウディたちを取り囲んだ。


「カイザック……」


「抵抗するなよ」


少女は剣の血を拭うと鞘に納め手を上げた。


辺りから感じていた気配の正体が姿を現し、取り囲んだ。


数は十数人。身綺麗な衣服に身を包んだ男女。どれも透き通るような肌に金髪、長い耳をもち容姿端麗だった。


エルフだ。


彼らは侵入してきた者に剣を抜き近づいてくる。木の上にもエルフがおり矢をつがえていた。


「手を頭の後ろで組んで膝をつけ、人間」


他と少し衣装のちがうリーダーらしき男エルフが剣を突きつけながらいった。顔はフードを被っておりよく見えない。


カイザックはアイラを濡れた地面に横たえ、命令通りにした。クラウディも右に習い無抵抗を示す。


すでにずぶ濡れであったが膝から浸透する水は余計に冷たい。


リーダーエルフが仲間に目配せするとクラウディたちは後ろ手に縛られ拘束された。意識のないアイラもロープで縛られ担がれる。武器や荷物も取り上げられた。


さらに命令を受けたのか何人かのエルフがどこかへ行き、リーダーエルフと他のエルフは侵入者を従えて森の奥へと歩き出した。


エルフの森はやはり雨が降っているのにも関わらず少し明るい。森であるのに辺りに何があるのか分かりやすかった。


ただ、カイザックとクラウディは疲弊しており時折躓いてしまう。それに加えて歩みが遅いので後ろからせっつかれ何度か転けた。


カイザックは特に会話はしなかった。少女も彼に習いしなかった。エルフは全く油断しておらず、隙をついて逃げ出しても森の狩人である彼らからは逃げられないだろう。


余計な体力を使うよりは帰り道を覚えておくほうがいい。


エルフたちは時折何か話す場面が見られたがうまく少女は聞き取ることはできなかった。


それから20分くらい歩いただろうか、気づけば整備された小道を歩いており、何か通り抜けるような感覚に顔を上げるとかなり広い空間に入った。


大木がいくつも並び、大きな枝の上や幹の中に居住がいくつもあった。大木間は縄橋で行き来できるようになっており、エルフたちが雨をなるべく避けようと足早に行き来していた。


少女が眺めているとグイッと縄を引っ張られ大木に連れられていく。その中でも細い方の大木へと向かうようだ。


辺りのエルフがクラウディたちに気づいて視線が集まるのを感じ、出来るだけ気にしないよう俯いて歩いた。


大木の下まで来るとその壮大さに感嘆する。ここまで大きな木は元男の世界には存在しない。


リーダーエルフは入り口にいるエルフが頭を下げると手を上げ、侵入者に入るよう促した。


大木の根元には上下へ行く階段があり、クラウディたちは下の階段に連れられていった。


階段は光が入った小さなランタンが均等な距離を保って壁にかけてあり、階段は螺旋階段となっている。


階段を降りると薄暗い牢屋が目に入った。いくつも牢屋が並ぶ中の1番手前の牢にクラウディとカイザックが入れられ、正面に気絶したアイラが横たえられた。


「侵入者であるお前たちの処理は上の判断を仰ぐ」


リーダーエルフはそれだけ言うと別のエルフを待機させ階段を上がっていった。


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