表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/216

第123話 小休止







アイラはカイザックをその場に残すと小道を引き返して荷車の所まで戻って来た。街道は滅多に他者とはすれ違わないので荷車や荷物はそのまま残っており、アイラは荷台にクラウディを横たえると自分の荷物から毛布を取り出してかけた。


「悪いな」


「良いって!何とか着替えれるか?」


「多分……」


少女はついでに隠していた荷物も荷台に乗せてもらった。


「じゃあ時間稼いでくっから着替えとけよー」


アイラはそう言い再び小道に入っていった。


少女は荷物からインベントリを取り出して替えの服と布と水筒を取り出した。


布に水を湿らせてある程度身体を拭く。あっという間に布は赤黒くぐちゃぐちゃになったが、絞って水を湿らせるのを繰り返した。絞るのに力が入らず苦労して大分時間を使ってしまった。


続けて替えの胸サポーターを何とか装着して、服の内側が汚れるのは嫌だったが仕方なく旅人の服を着た。


────一刻も早く水を浴びたい


インベントリには予備に5リットルほど水袋を入れているもののこんな事には使うわけにもいかず。カイザックのインベントリの水も使うわけにはいかなかった。


身体にまだ付着する血は乾いて皮膚を引っ張るし、臭いも生臭さが滲み出ている。


だがその気持ち悪さはどうにもならず耐えるしかなかった。


それから1時間ほど経過したところで大きな袋を持ったカイザックとアイラが小道から戻って来た。いつもの如く言い合いをしている。


どうやらマンドラゴラについてアイラが軽率な行動をとった件についてのことだ。


「────私は頑丈だからいんだよ」


「俺にまで危害が及ぶのはやめろと言っているんだ。いい加減分かれ筋肉ダルマ」


「大体てめーがあの化け物のこと言わないからだろ!」


「言わなくても俺に従ってればあんなことにはならなかった」


2人は少女の姿を見るとピタリと喧嘩はやめ、気の毒そうに苦笑いした。


「もう動けるか?」


カイザックは荷車に荷物を乗せた。袋の口から人の足のようなマンドラゴラの根が飛び出ている。


「多少は」


少女は自身の身体が臭うので出来るだけ端に移動した。正直すぐにでも出発して川でも池でも何でも良いから見つけ次第身体をキレイにしたい。だが、他の2人は疲れているはずでそんなことはとても言えなかった。


アイラも袋を置き居心地悪そうに身じろぎするクラウディを見てすぐに出発しようと提案した。


「そうだな、臭うし」


「うっ……」


カイザックも鼻をひくつかせて眉間に皺を寄せた。何も言えず黙っていると、彼が御者を務め出発した。


アイラがその間カイザックとのやりとりを愚痴る。


カイザックは『レスター』というモンスターの事を知っていたらしい。ただ出くわすとは思ってもみなかったとか。あの『魂喰らい』と同格のモンスターで進んで狩猟する冒険者はほとんどいない。


生態としてはマンドラゴラを特に好物としており外見どおり目や耳はない。故に恐怖効果も受けず美味しく食べれるわけだ。ちなみに振動感知の能力が異常に発達しておりかなり遠くのマンドラゴラの悲鳴の振動を感知できるという。


カイザックが動かないように言ったのはそういう知識があったためであった。本人曰く基本マンドラゴラにしか興味がないので危害を加えない限りは大人しくしていれば何もされないはずだった。


しかしアイラが攻撃してしまったのであんな事になってしまったという。


「だってせっかくのマンドラゴラが全部取られる所だったんだぜ?」


彼女は口を尖らせた。


「それにクローもクローだぜ。私は喰われても頑丈だから大丈夫なのに」


「悪い……身体が勝手に」


アイラは俯く少女を見てニンマリと笑った。


「冗談だって!助かったサンキューな!じゃないと今頃私がそうなってたし」


服から見える肌が所々血液が固まってガリガリになっているのを見て声を上げて笑うアイラ。


その後荷馬車を1時間ほど走らせると下り坂となり、川が見つかった。


カイザックは野営をすると言い馬を止め、荷を解いた。


アイラは野営の準備をする間水浴びをしてくるよう少女に提案しする。


「カイザックは野営を手伝わせるって。行ってこいよ!臭うぜ」


しかしカイザックの視線が気になるのでどうしようかと迷っていたらそう言ってくれたので、荷物を持って河原に沿って少し奥の方へ移動した。


10分ほど歩いて辺りを見渡すとインベントリからスライムを出して地面に落とした。


自身の姿を模倣するよう指示し、何かあれば戻って主人の元へ来るよう指示した。スライムは光ながらクラウディの姿を真似、指示に頷くと森の方へ視線を向けてその場に座った。


『プリムスライム』はまだ複雑な命令は出来ないが、異常があった時に知らせるくらいはできた。おそらくまだ与える餌が足りないのだろう。


クラウディはそのスライムからさらに少し離れた所から川へ入る事にした。


服を脱ぐと内側がたくさんの赤い血液が固まっているのが確認できた。ついでに洗おうと裏返して持っていった。


川の水はヒンヤリと冷たい。川魚もいるので後で捕まえて食べることもできる。


クラウディは川の時には使わないが今回ばかりは臭いが気になったので石鹸を使って身体を洗った。


何度も髪までしっかり洗うとすっかりキレイになり臭いもしなくなった。


そうだと思い出し仮面も取りに行き洗う。表裏の汚れを落とすと白く輝いて見えた。が、所々綻んでいるのも確認出来た。もし壊れた時のことを考えて似たようなのが欲しいと思う少女であった。


変声機能はキチンと使えるので雫を拭き取ると装着し新品の旅人の服に着替えた。僅かにフロレンスの家の香りがし、懐かしい気分になる。


────元気に過ごしているだろうか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ