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第122話 マンドラゴラ採取依頼③





クラウディは真っ暗な空間に物理的に押しつぶされそうだった。激しくうねる空間に何とか剣の力を発動させて腕を突っ張り耐える。


おそらく化け物の体内だろう。手に纏わりつく粘液は剣の力で強化されているので何ともないがそうでない部分は溶け始めている。


剣の力を発動させているとはいえ、必要な空間もないため充分な力は発揮できず耐えることしかできない。


耐えてはいるが徐々に移動させられており、ついには外から見えた赤黒い口が、発光する剣を通じて見えた。


────今いるここはどこだ?


外から見えたのは赤黒い口だった。取り込むならそこからしかないが、今それが目の前にある。


少女が捉えられている場所は一体どこなのか。


────こいつまさか


レスターという化け物は首がないように見えて実はミラージュドッグのように迷彩で隠しているのではないか?


つまり今いるのは首。だったら斬り落とせば倒せるのだろうか。


────いや


眼前に迫る口が一層大きく開き鋭利な刃物を何本も並べたような歯が現れた。そんなものに入れられてはひとたまりも無い。


余計なことを考えている場合ではない。


少女は喉の内側をなんとかめいいっぱい腕を突っ張って開き、剣を逆手に持ち替えると足を剣の背にかけた。


そしてえいやっと思い切り足に力を入れる。光る刃は内側にめり込んで、なおも力を込めるとバツンと外に突き出た。


痛みに呻いた化け物が激しくのたうち回る。クラウディは開いた傷口にもう一方のシミターを滑り込ませると切り開くようにして外に出た。


思ったより地面と距離があったがなんとか着地する。顔を上げるとおびただしい量の緑の血が降りかかった。


慌てて避けるが、そこで剣の力が解けて脱力する。


────まずい!


追撃を喰らえば終わっていたが、電気の弾ける音がしたかと思えば大きな衝撃が化け物を襲い肉を抉った。


アイラが話に聞いていた『ライアク』を使ったらしい。電撃を纏った彼女の姿を見るにそうなのだろう。


逆立った髪やその纏わりつく電気の荒々しさが強者の風貌を表している。


レスターは敵わないと思ったか、これ以上傷つくのが嫌だったのか一度低く呻くとのそのそとどこかへ消えていった。


動けないクラウディの元に他の2人が駆け寄ってくる。


「大丈夫かよクロ────?!」


少女の姿を見て慌ててアイラはカイザックを離れた所に押しやり、また側まできた。怪我は大したことない旨を伝えるが視線が泳いでいる。


「?」


「……服が溶けてる」


アイラがそっと耳打ちする。少女はレスターの溶解液で衣服の面積の大部分を失っていた。仮面とベルトのある腰布、靴は無事だが他は裸同然だった。


多少は布の切れ端が引っ掛かっているが意味をなさない。胸のサポーターは背中の部分が溶け、やがてぼとりと下に落ちた。


全身緑と赤の血液で汚れており、ぱっと見はどうなってるのかわからないのが唯一の救いだ。


アイラは布なんか持って来ておらず残ったマンドラゴラを持ってくると少女の胸に押し当てた。


「仕方ねー。これで隠してくれ、バレてねーとは思うけど」


クラウディはマンドラゴラを抱えたが剣の力を使ったので起き上がれない。その旨を伝えるとアイラは背中に背負った。


その際に少し離れた所にいるカイザックと目が合った。その表情は無表情ではあるが目はしっかりと見開いて凝視していた。


────え、バレてないよな?

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