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第12話 外へ②







あれからさらに3日。見覚えのある道に出た。


────ここは


元男が最初に目が覚めたところだった。死体はなく綺麗になっている。なぜか土も慣らされた跡がある。


ゴブリンとかに持ってかれたのかと思い少し辺りを散策したが特に何も見つからなかった。


あの時は余裕がなくてわからなかったが、脇に小道があり崖となっていたが、遥か遠くまで見渡すことができた。地平線近くでようやく森が途切れている。出口が見えた事で少女は安堵し、さらに先へ進んだ。


途中グレムリンが数体とミラージュドッグ、動く植物に出くわしたが、持ち前の剣術でなんなくたたき伏せた。


結局出口が目と鼻の先に見えたのはさらに4日後であった。


出口が数キロ先に見えた時に人が何人かモンスターと戦っているのが見えた。


剣と盾を構えた優男に女の魔法使いと僧侶、それに辺りをすばしっこく動く盗賊のような格好の男だった。モンスターは深い緑色の大柄な二足歩行のトカゲだった。数は5匹、各々が槍やら斧やらを振り回している。


「ユーリ!そっちに行ったぞ!!」


「わかってる!」


ユーリと呼ばれた優男は大トカゲの横から入る槍を盾で弾いた。その隙に別の1匹が体当たりし優男は吹き飛ぶ。


魔法使いは火の玉を飛ばし、僧侶はシールドのようなもので攻撃を防ぎつつ後退し始めていた。大トカゲは意外とすばしっこくなかなか魔法が当たらず、それでも時折命中するも大してダメージは入っていない。


盗賊はヘイトを取ろうとしているのか動きながら弓で矢を放っている。いくらか刺さっているが止まる気配がない。


状況を理解したクラウディは加勢しようと咄嗟に飛び出し、僧侶の息の根を止めていたであろう斧を弾き、大トカゲの上がった腕を斬り落とした。


「っ?!」


驚くトカゲの開いた口に剣を滑り込ませて倒し、動きの止まった近くのもう一体に近づき頭部を斬りつけた。武器でガードされるが、反対の手でナイフを取り出し顎下から突き刺す。


────あと3体……


大トカゲたちが危険を察してか他の人間はそっちのけで突然現れた少女に向かって固まって突進してくる。少女はもう片方にも剣を握り、左右の剣を別々に動かした。


先頭の一体の剣を左で捌いて上腕の関節を砕いて蹴飛ばし、同時に突いてくる槍の切先を右で弾いて脇腹を切り裂いた。


そして残る1匹の攻撃を屈んで躱すと心臓を突き刺す。


「危ない!!」


優男は立ち直った大トカゲが少女の背後に突進するのが目に入り叫んだ。しかし彼女は予期していたのかひょいと横移動して躱し、足を引っ掛けて転ばすとそのまま背中から心臓へトドメを刺した。







「助かったよ、君、名前は?」


血で汚れたシミターの刀身を拭っていると優男が少女に話しかけた。


さらりとした金髪を持ち、優しい顔つきをした男である。細腕には似合わないがっしりとした鎧を装備していた。


クラウディはチラリと彼を見て、続けて他のメンバーを見た。僧侶が魔法使いの手当てをしている。視線は少女の方を向いているが不安が見て取れる。


少女は武器を納めると無言で立ち去ろうとしたが、優男が横についてくる。


「ちょ、ちょっと!君強いね!どうかな助けてもらったお礼もしたいし休憩がてら少し話をしないか?」


────面倒だな


「急いでるんだ」


出来るだけ低い声で答え足早に離れようとしたが、なおも男は側をくっついて来た。


「急ぐってどこへ?もしかしてローランドルかい?僕らもそこから来たんだ。ちょうど帰るところだし一緒に行かないかい?お礼もするからさ」


────しつこいな……まあ道案内くらいにはなるか


クラウディはため息をつき、じゃあ案内を頼むというとユーリは満面の笑みを浮かべた。








「冒険者?」


一行は戦闘があった場所より離れたところで一息ついていた。


「ああ。僕らはBランクパーティの『神速夜行』って名前なんだけど」


────なんだその名前……


彼らは聞いてもないのに順番に自己紹介し始めた。剣と盾を持つアタッカー兼タンク『パラディン』職のユーリ。攻撃魔法を得意とする女魔法使いラントル。回復魔法を得意とする僧侶のマネネ。そしてオールラウンダーのシーフのライン。ということだった。


紹介が終わると視線がクラウディに集まる。面倒くさいなと思いながらも魔法使いをチラリと見る。


男装をしているが、どうしても声が高くなる。『生命石』で変声を使いたかったが、魔法使いがいる時は使うなとフロレンスが言っていたため低い声で口を開いた。


「あー……クローだ」


クラウディはもっている身分証の名前を名乗った。


「男の子かい?女の子かと思ったよ」


「確かにな、俺も女だと思ったぜ」


シーフが同調すると、クラウディはギクリとし、渡された飲み物に口をつけた。


「まあユーリも見方によっては女に見えるぜ?」


「冗談やめてくれよ……」


ユーリたちが笑うと緊張が解けたのか他の女性2人もクスクスと笑った。


話題が逸れて元男はほっとした。







一行が出発したのは小一時間経ってからだった。クラウディはさっさと行きたかったが迷うよりはいいかと仕方なく彼らに合わせた。


「ねぇあなたいくつなの?」


道すがら興味津々となった魔法使いのラントルが側まで来る。紺色のローブを着ており、赤いウェーブのかかった髪は肩に流している。顔のそばかすが特徴的だった。


「……16……ぐらい」


確かそのぐらいに見えるとフロレンスから言われその数を答えた。


「ぐらいって……あはは!自分の年齢わかんないの?変な人!私は17!私の方がお姉さんね。ラトお姉ちゃんって呼んでもいいんだよ」


「いや遠慮しとく……」


そう答えるとまた笑い、情報共有しに他の仲間の所へ行った。


少しすると今度はシーフが雑な気配消しで側まできた。バレバレだが、本人は消えたつもりだろうか。


「お前の職業はなんだ?あんな芸当は見た事ないが」


シーフであるというラインは黒髪は短く逆立っており、浅黒い肌が特徴的。顔立ちはやや目つきが鋭く、唇にリングが付いていた。格好は男であるが露出が多く胸元と腹部の肌が見えた。


「…………」


「……教える気はないか。まあいいけどな……で、お前本当に男か?」


ギクリとなり僅かに顔を背けると今度はシーフが背けた側に回り込む。


「男にしてはいい匂いがするぜ?」


吐息が耳にかかるくらいの距離で囁かれ、元男は悪寒が走り思わず腕を振り回した。


「おっと!こわいこわい。機嫌悪くしたなら悪かったな、冗談だよ冗談」


素早く身を引いて拳をよけると彼は高らかに笑いながらどこかに姿を消した。


────あれ、当たったと思ったんだが


首を傾げたが、後々(のちのち)次の休憩ではシーフのラインは僧侶から頬の手当てを受けていた。





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