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第???話 黒と白







≪闇≫は両の眼を生成し眼を開いた。


『アストロ』世界に、長く長く鎮座していた≪闇≫ は遥か遠くより鳴動を再び感じていた。この数百年、いや下手したら1000年は感じていなかった鳴動だ。


鳴動といってもいいし、胸騒ぎといってもいい。長い闇の中で久しく忘れていた時間の流れを感じるくらいハッキリとしたものだった。


────2()()も得るとはな


それは日に日に徐々に近づいてきて、やがて上から降ってきた。白く発光する塊として。


塊はこの世界では異質な存在であり、やがて高台にある地面に降り立つと身体を広げて吠えた。


────勇者というには不釣り合いな姿だ


≪闇≫は何度か定形の者を見たことがあった。ただの板切れと戯言を振り回す愚かな者だ。


しかし現在現れた者は面は細く、身体も細長い。長い尻尾は2本ありそれぞれ鋭利で細長いものを持っていた。どこかの世界で見た≪狐≫によく似ている。


ただその面には目がいくつもありギョロギョロと辺りを忙しなく観察していた。


────あの眼は熱視覚か……


障害物をハッキリとらえて顔を向ける姿を見てそう判断する≪闇≫。この広大な闇の前では大いに役に立つだろう。なにせ外からは僅かな光さえも通らないのだから。


そして漂う異様な強者の気配。この気配はごく最近身近に体験していたのでわかった。


おそらく『アストロ』の理から外れた者だ。


やがてその化け物に向かって他の≪闇≫たちが向かって行く。突然現れた異質な存在を排除しようというのだ。


────無理だな


迎撃しようと蠢く闇たちはいくつもの手足を伸ばした。


化け物はそれを見て2つの尾で斬り裂いた。退けると再び辺りを見渡して、何か脅威を察知したのか輝く半透明の円盤を(くう)へ出現させる。


『アマツ』


そして高出力の波動砲を辺り数キロ一面に撒き散らす。


地面は抉れ、障害物など無かったかのように跡形も消し去る。


挿絵(By みてみん)


他の闇たちも軒並み消滅したが再び別の闇たちが辺りを埋め尽くす。この脅威に続々と集まっているのだろう。一丸となって化け物へと向かって行く。


だが、化け物は円盤を今度は糸のように細長くすると斬撃をいくつも飛ばし、併用してもう一つ円盤を出現させて破壊の限りを尽くしていく。


このままではこの闇そのものが破壊されかねない、それほどまでに苛烈な光景だった。


────やれやれ……


闇の序列1位の≪闇≫は重い腰を上げなんとかしようと姿を纏った。


しかしその側を別の≪闇≫が目にも留まらぬ速さで通り抜ける。


『序列2位か……』


≪闇≫は声を生成し呟いた。先程通り抜けた闇の塊は姿を黒い翼の生えた化け物へと姿を変え、暴れる化け物と衝突した。


そのまま激しい戦闘となり、辺りをさらに激しく破壊していく。


1500年以上前の戦争を抱負っとさせる、それほどのものだった。


2匹は続けて空中で何度も激突し、きりもみ状態で落下したと思えば方向転換し上へと上昇していった。


そしてそのまま振動と共に闇を突き抜けて消えて行く。


他の闇たちはしばらくその場に固まっていたが、やがて脅威が去ったと判断したのか散り散りになっていった。


『行ったか……』


≪闇≫は再び姿を不定形にし、ゆっくりと鎮座した。あの序列2位は以前から何か気にかけていた様子だった。おそらく先程の化け物が該当する相手だったのだ。故に勝手な行動を取ったのだろう。


他の物好きな≪闇≫たち同様、帰ってこないのを見るにそうに違いなかった。


このまま帰ってこなければまた長い長い平穏が訪れるだろう。破壊された世界も他の闇がなんとかするはずだ。


≪闇≫は生成していた両の眼を閉じた。

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