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アストロ・ノーツ────異世界転生?女になって弱くなってるんだが……  作者: oleocan
第6章 娯楽と快楽の街ベルフルーシュ
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第109話 リーグット族のティリオ







翌朝クラウディは目覚めるとまだ眠るアイラを揺すって起こした。まだ眠そうであったが、支度を手伝うと終わる頃には完全に覚醒していた。


「まずはギルドに行くんだったよな?」


「ああ、アーベルも冒険者ギルドがあるだろう。そこに行くまでにも路銀を稼ぎたいからな。依頼がないか見に行く」


2人は空の荷物袋を各々持ち冒険者ギルドへと向かった。ベルフルーシュの喧騒のなかを横切って行くが、ところどころでアイラがギャンブルやゲームに捕まって本当なら30分で着くところを2時間かかってしまう。


「悪りぃ悪りぃ、つい!」


「まあ今のうちに遊んでおかないとな……この先は賭博もないだろう」


「へへ……そか」


そう言われてアイラは歯にかみながら笑った。この先ストレスで爆発しなければ良いが、と一抹の不安が()ぎるクラウディ。


ギルドに向かうと本来なら早朝で出発したのですんなりと受け付けに行けただろうが、来るまでに時間が掛かってしまったのである程度人が並んでいた。


アイラに並んでくれるよう頼み、クラウディは掲示板の方を見に行った。


いつもは受け付けから依頼を斡旋してもらっているので掲示板の依頼書を見るのは初めてだった。


クラウディの他にも何人か見ており、どうするのか横目で見ながら依頼を探した。


依頼書は受け付けで貰うものと変わらない書式で、他と重ならないよう貼られていた。街も大きいので隙間なくびっしりと並べられている。


ただ、ランクごとに並んでいるわけではなく探すのが大変そうだった。


「なにか?」


「いや別に……」


背の高い女魔法使いが横にいてどうするのか見ていたクラウディは顔を正面に向けた。本来なら視線だけ向ければ良かったのだが。仮面を被ると視界が狭まるので余計に顔を向けないと行けなかった。


女性が去った後彼女の行動を視線で追った。


外した依頼書は受け付けとは違う、また別のカウンターに持っていく。小さな箱が2つ置いてあり、左の箱に何やら依頼書でギルドカードを包んで入れていた。すると音がして右の箱の方から先程の物が出て来る。


────あんなのがあったのか


そう言えば気付かなかったと今度はアイラの方に視線を向けた。まだ列の中程で10分くらいかかりそうだった。少女はまた顔を正面に戻した。


何か金になりそうな依頼がないか探すが、アーベルまでにどんなモンスターが出るか分からないし時間がかかるのでやはり斡旋して貰おうとアイラの元へ戻った。


少し待つと順番が回ってきて受け付け嬢のルルーシが呼んだ。


軽く挨拶してアーベルまでに出現するモンスターや途中にある村などの依頼がないか探して貰う。


「んー……あんまり無いですね。同じように考える人も多いですからね……これくらいですかね」


クラウディは渡された依頼書を眺めた。全部で3枚だ。


オーガの素材回収依頼────

依頼者 アーベル鍛冶屋『オルスト』

依頼内容 オーガの討伐。及び素材回収 ※牙と前腕橈骨、尺骨は必須。

報酬 5万ユーン~ 

推奨ランク B パーティ推奨

適切ランク B-A


マンドラゴラ採集────

依頼書 アーベル魔法商店『ルーベニア』

依頼内容 湖周辺に生えるマンドラゴラの採集 

報酬 1株5万~

推奨ランク B

適正ランク B-A


地下洞窟の調査────

ギルドクエスト

依頼内容 南東の『静寂の森』付近にて拠点あり。詳細はそこで

報酬 10万~

推奨ランク A パーティ推奨

適正ランク A


上二つはともかく最後のものはかなり怪しい。ローレッタの依頼のようなものだったら大変である。


クラウディはアイラにも意見は聞いたが『なんでも行ける』と笑うだけで参考にもならなかった。


「これらはアーベルに向かう途中で達成可能か?」


「オーガはアーベルにいく途中に通る森林に生息しています。ただ絶対ではありません。マンドラゴラは誰かが過度に収穫していなければ大丈夫でしょう」


ルルーシはクラウディに地図を持ってるか聞き、少女がカウンターに置くと該当の場所にいくつか印をつけた。


「それとギルドクエストの調査依頼ですが、こちらから早馬を飛ばして現地の拠点に待機してもらいます。3週間以内には到着するよう心がけて下さいね」


それと────と心配そうな表情をする。


「『静寂の森』ではエルフが住んでいます。どうか争いは起こさないようお願いします。調査も無理そうならキャンセルして構いませんので」


────エルフか


小説なんかで出て来る、耳が長くて長命な種族。その美貌は恐ろしいものと聞く。


クラウディは興味が湧き、可能なら姿を見たいと思ったので、少し迷ったが受けておいて損はないと判断して3つ全て受けた。


「どうか神の導きが在らんことを」


ルルーシは呟くように言い、依頼書の手続きをした。






「で、次は雑貨屋に行くんだっけか?」


ギルドを出た後2人はアイラの行きつけの雑貨へと向かっていた。


「ああ、テントを買いに行く」


アイラが案内した雑貨屋は狭い路地の中にポツンと小さく構えており、中には子供らしき者が運営しているようだった。


「げ、アイラかよ店ぶっ壊すなよ?」


声が高いが男の子だろうか、身なりは小綺麗で大人びている。彼はアイラを見ると嫌そうな顔をした。


「あ?あれは悪党から守ってやったんだろうが」


「店の修理費と道具の破壊でトントンというかマイナスだよあれ……本来なら衛兵に突き出してやるところだ」


「げ、いや悪かったって……ちょくちょく来てるだろ?ほら今日はいっぱい買うから、こいつが」


手を合わして謝ると彼女はクラウディを前に出した。子供はやれやれと肩をすくめた。


「最近はめっぽう来てないじゃないか」


子供に話を聞くところによると以前悪さをする悪党がここらにおり目をつれられたのだそう。たまたまアイラが襲われる店を見て退治して衛兵に突き出したらしいが、その時の被害が悪党よりアイラの方が多かったという。


「悪いクロー、この雑貨屋で出来るだけ揃えていこうぜ?ちょっと割高かもしんねーけどものはいいからさ」


「それはいいが……子供が1人でやってるのは危なくないのか?」


「は?おいおいヒューマンさぁ、俺はれっきとした大人だぜ?どこに目をつけてんだ?」


言われてクラウディはまじまじと子供を見つめた。髪は薄茶色の短髪で童顔。やや耳は尖ってはいるがそういう人間もいるのだろう、おかしくはない。身長は120cmあるかないかだろう。頭身は5頭身あるかないかくらいだ。


────いや子供だろ


「見たことねーのかクロー。こいつはリーグットっていう種族だよ。まあもっとも性格がこんなんだからはみ出しものだったらしいけどな」


「うっせえ余計だっつの!」


リーグット族────

尖った耳に童顔。身長100~130cmと小柄だが平均寿命は100年という人の倍は生きる種族。人懐こい性格で好奇心旺盛。手癖が悪い。


雑貨屋のリーグットの名前はティリオというらしく、もう40年は生きているらしい。クラウディはそんなに生きているのが信じられないと目を疑った。


「まあ話が逸れたが何が欲しいんだ?アイラの連れってんだからアンタも相当の実力なんだろ。贔屓にしといて損はないから少しまけてやるぜ?」


「それは助かる」


アイラはありがとなっ、と彼の首に腕を回して胸をつついた。彼はやめろとすぐに離れる。


クラウディはテントとその他日用品や火打石、アーベルまでの地図や回復ポーション(初級)を15本中級を9本、ナイフを10本などなどを注文するとリーグット族のティリオはテキパキと用意した。


「────占めて50万ユーンになりま~す……てそんなに金あるのか?」


結構な量を買い込む2人にリーグットは心配そうな表情をした。しかしそれは杞憂でクラウディが硬貨袋から金貨を50枚数えてカウンターに置くと顔を輝かせた。


「まいどあり!助かったぜしばらく苦労せずに暮らせる」


「そんなに儲かってないのか?」


「ここは町外れだからなぁ。せいぜいその日暮らしってとこだ」


街中(まちなか)は行かないのか?」


「馬鹿言え、ショバ代が高くてこんな雑貨屋じゃ売り上げ追いつかねーよ」


「街中は等地が高くなるから借りるだけでも持ってかれるらしいぜ?」


アイラが袋に物品を詰めながら口を挟んだ。リーグットは頷き肩をすくめた。


「これからどこに行くんだアイラ?こんな買い込むんなら離れるんだろ?」


「ああ、私たちはアーベルに行くんだ」


「げ、ダンジョンに潜んのかよ。やっぱ冒険者だなぁ」


「当然だろ?てことで世話になったなティリオ。なんなら一緒に来ても良いぜ?()()()()だったんだろ?」


「いやもう良いかな。はは、まあ不安の種が減ってせいせいするよ」


言われたアイラは笑いながら彼の頭をくしゃくしゃにした。リーグットはやめろと跳ね除けるが髪は乱れてぼざぼさになった。


クラウディとアイラは大荷物を背負うと店を出た。


「じゃあな、また近くに来たら寄ってくれよ」


「分かったよ。大金稼いでくっから」


2人は宿に向かって歩き出した。リーグット族のティリオは少し寂しそうに見送っていたが、やがてため息をつくと店の中に戻っていった。

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