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天下無双の侍、異世界で覇道を拓く  作者: きき
第1章「転生と始まりの村」
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第5話 盗賊襲来、立ちはだかる者

村の朝は、普段と変わらぬ静けさに包まれていた。しかし、その空気には重く張り詰めた緊張感があった。


今日は、盗賊たちが食料を奪いに来る日だ。


村人たちはすでに慣れた様子で、米や干し肉、野菜などを入れた袋を準備し、村の中央に集まっていた。顔には諦めの色が浮かんでいる。


「今日も大人しく差し出して、無事に済ませよう……」

「下手に逆らえば、何をされるか分からん」


誰もが盗賊を恐れ、抵抗する気などなかった。


そんな中、ただ一人、弓を携えた青年リリだけが険しい表情を浮かべ、じっと村の入口を睨みつけていた。


「……もう、こんなのはごめんだ」


リリは拳を握りしめる。彼は以前から、この現状を何とかしたいと考えていた。しかし、他の村人たちは皆、盗賊を恐れ、逆らおうとしなかった。


そんな時、ソウスケがふと彼に声をかけた。


「お前は、戦うつもりか?」


「……あんたには関係ないことだ」


リリは冷たく言い放つ。


「これは、この村の問題だ。俺たちがどうにかしなきゃならない。でも、誰も動こうとしない……だから俺がやる」


「ほう……」


ソウスケは興味深そうにリリを見つめた。


カエデとモミジも不安げな表情を浮かべる。


「リリさん……大丈夫でしょうか?」


カエデが心配そうに問いかけると、リリは自信ありげに笑った。


「大丈夫さ。俺が、君たちを守る」


カエデとモミジは複雑な表情を浮かべながらも、それ以上何も言えなかった。


その時だった。


村の入り口に砂煙が上がり、数頭の馬が姿を現した。


「来た……!」


村人たちは一斉に身を縮め、食料の入った袋を抱えて震え始める。


盗賊たちは馬に乗ったまま村の中央へと進み、先頭に立つ大柄な男――バドーが馬上から村人たちを見下ろしながらにやりと笑った。


「よぉ、お前ら。今日もいい子にしてたか?」


バドーの声に、村人たちは怯えながらも、準備した食料を差し出そうとする。


「ど、どうぞ……これで勘弁してください……」


「はいはい、ご苦労さん。やっぱり、お前らみたいな弱っちい連中は黙って従ってりゃいいんだよ」


バドーは袋を覗き込みながら、満足げに頷いた。


しかし、そこに一人、食料を差し出さずに立ちはだかる者がいた。


リリだった。


「もう……お前たちの言いなりにはならない!」


その言葉に、村人たちは一斉にリリを見た。


「リリ、やめろ!」

「逆らったら、村が滅ぼされるぞ!」


誰もが恐怖に駆られ、リリを止めようとする。しかし、彼は構わず弓を構えた。


「おいおい、本気かよ?」


バドーは呆れたように笑う。


「いいぜ……なら、試してやるよ」


バドーが手を上げると、部下の一人が馬から飛び降り、リリの前に立つ。


「ほう、弓か。そんなもんで、俺に勝てると思ってんのか?」


リリは答えず、矢を番えた。


(……俺は、この村を守る!)


決意を込めて矢を引き絞ると、リリは一気に放った。


矢は一直線に男へと向かう――しかし。


「遅ぇよ」


男はあっさりと矢を避け、そのままリリの懐に踏み込む。


「なっ……!」


次の瞬間、鈍い衝撃音とともにリリの体が宙を舞い、地面に叩きつけられた。


「ぐっ……!」


村人たちは息を飲む。


「おいおい、これで終わりかよ。口ほどにもねぇな」


男はリリの胸ぐらを掴み、持ち上げる。


「がっ……」


リリは抵抗しようとするが、相手の力には全く敵わない。


「くそっ……俺は……こんなところで……!」


「やれやれ……見ていられないな」


その声と同時に、リリを捕らえていた男の腕が何かに弾かれたように吹き飛んだ。


「な、なんだ……!?」


驚く盗賊たちの前に、黒衣の男が立っていた。


ソウスケだった。


「お前……誰だ?」


バドーが目を細める。


ソウスケはゆっくりと腰を落とし、手にしていたものを構えた。


それは――ただの木の枝だった。


「……そんなんで戦うつもりか?」


盗賊たちは馬鹿にしたように笑う。しかし、ソウスケの目は鋭く、まるで獲物を狙う猛禽のように静かに燃えていた。


「十分だろ」


その言葉とともに、ソウスケは地を蹴り、木の枝を握ったまま盗賊の前へと瞬時に間合いを詰めた。


「なっ――!」


木の枝が風を切り、盗賊の頬をかすめた。


その瞬間、空気が変わる。


「……この男、ただ者じゃない!」


盗賊たちの間に緊張が走る。


「さて……少し痛い目を見てもらおうか」


冷静な口調とは裏腹に、彼の目には戦いへの高揚が宿っていた。

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