討伐隊の歓迎 1
「メート、お前の目的はアカリから聞いたが、それを素直に信じられなくてな。そして、今、バイファスコルピオンを討伐してきたというのだ。その強さも半端なものじゃないことはわかったんだが」
リーダーは彼の肩から手を離して、彼を正面に据えた。そして、彼を脅すような雰囲気で、彼に詰め寄る。そして、低い声で言葉を続ける。
「だからこそ、お前はこの村の脅威ともなりえる。そして、討伐隊はそういった奴を見逃すのを許せないんだ。恥ずかしながら、つい最近にそういう悪い奴が出てきてたから余計、そういうのを目の敵にしたくなるんだよ」
メートはただの八つ当たりにも思えたが、特に何も言わないことにする。それどころか、彼はこの状況に覚えがあった。自分がそういう目に遭ったというわけではなく、彼が知っている物語によく出てくる状況だというわけだ。彼は少しワクワクしながら、リーダーに言葉を返す。
「そうですか。なら、どうすれば俺はこの村にいられるんだ? もっと、魔獣を倒すとか?」
「まぁ、結局はそういうことになるな。この魔獣討伐隊は強ければ、気に食わなくても文句を言うやつはいなくなる。仕事さえできればいいみたいなやつがほとんどだからな。で、その討伐対象は、サンドワームだ。村から離れて、砂漠を歩いていれば、巨大なミミズのような魔獣を見つけるだろうから、それを討伐してきてくれ」
彼はこの村に来る途中で、そんな感じの魔獣を倒したことを思い出したが、今それを言っても意味がないことは理解している。おそらく、目の前でそれを倒せるという実力を示さなければいけないというわけだろう。これだけ物分かりがいいとなると、怪しまれる可能性もあるが、それはそれで別の方法で信用してもらうしかないだろう。そもそも、こういう試練があろうとなかろうと、この町で悪いことをしようとは思っているわけではないのだが。
「……」
メートの前に、アカリがきて、小さな端末を差し出してきていた。彼女は憤懣気な顔で、彼にその端末を渡すのを躊躇っているようだった。そして、その端末を引っ込めると、リーダーの方へと向き直った。
「やっぱり、私は反対です。こんなの、この人が悪い人がどうかを判断する材料にはなりません。それに、私たち討伐隊の手に負えないほど強いと証明されたら、この人にどう対処するつもりなんですか? この人が本当に悪人だったら、この村は簡単にこの人のものになるんですよ」
彼女の言葉をそこにいた討伐隊の全員の耳に入っているはずだった。ただ、この中で冷静にそういう思考ができるのは彼女一人だった。他のものは既に、誘拐事件を許してしまった手前、リーダーの言うことに賛同してしまう。メートのことを信頼するしないに関わらず、強いかどうかもわからない奴を認めるつもりはないし、この前の失敗を思えばどうしても彼を何かしらの方法で試さなければ気に入らないというわけだった。それをメートも特に嫌がらないというのも、討伐隊の者たちには気に入らない要因にもなってしまっている。
「アカリ。悪いが、そういうのは甘いというんだ。あの事件から学ばなかったなんて馬鹿なことはないだろ。結局、全部アスターとペースに任せてしまったんだぞ。そして、今はアスターもいない。そうなれば、俺たちがやらなきゃダメなんだ」
リーダーの気迫に押されたのか、アカリはそれ以上何も言えなくなって縮こ待ってしまった。彼女のことを案じたわけではないが、メートは彼女から渡されるであろう端末を手から攫った。
「まぁ、依頼を受ければいいんだろ。そう怒ることじゃないって。明日からやるから、待っててくれよ」
黒い板のような端末で、スマートフォンのような見た目の端末を勝手に手に入れると、彼はそれをもって、建物から出ていった。アカリを含めた全ての討伐隊が、彼の背中に視線を送っていたが、彼は特にそれに対して何か思うことは一つもなかったようだ。そのまま建物を出たのはいいのだが、彼は夜を超えるための宿も見つけていないことに気が付いた。魔獣討伐の依頼を受けたのはいいが、明日になる前に砂漠の夜を超えられない可能性が出てきたことに気が付いた。とはいったものの、すぐに宿が見つかるとも思えない。少しではあるが、この村は穏やかな森の村のように、旅人が頻繁に来ないとなれば宿屋を経営するものは一人もいないだろう。需要がないのだから、そういう職業が生まれることはないのだ。宿屋のような場所がないかと探すために、討伐隊の建物に戻るというのもばつが悪い。ああやって出てきた以上、すぐに戻るのは恥ずかしい。まさか、こんなことで途方に暮れるとは思わなかったが、彼にとっては切実な問題だった。




