メート、黄砂の村へ4
ララルトが何も言わなかったため、ガドが先に話し始めた。
「なぁ、少し戦ってみないか? 村の中じゃ無理だけど、砂漠に出れば大丈夫だからさ。俺だって手加減するし、大怪我しないようにするしさ、駄目か?」
「ガド、少し黙っていて。それに、この人と戦っても、あなたが勝てるとは思えませんね。ガドは乱暴で力だけです」
「そ、そんなのやってみねぇとわかんないだろ……」
ララルトは少し威圧するように彼にいうと、彼の話す言葉はしりすぼみになって、ついには肩を落として、落ち込んでしまった。それを見るだけで、二人の力関係も7直ぐにわかった。メートは特にそのバランスについては関心はなく、自分が彼女に連れてこられた理由を話すのを待つことにした。
「話がそれましたが、あなたに頼みたいことは一つだけです。あなたが強いのか弱いのかわかりませんが、ララたちの隊を手伝ってほしいのです」
ララルトがメートをここに案内しているのだから、背丈が低くとも、二人はこの魔獣討伐隊のメンバーなのだろう。どうやらこの二人で組んでいるようだ。その中に自分も混ざってくれというお願いというわけだと彼は考えた。
「まぁ、それは構わないけど。ずっと二人でやってきたんじゃないのか」
「それは沿うんですけど……。二人じゃ、スウェースエナ一匹でも大変なんです。だから、メートさんがこの村にいる間だけでも、一緒に魔獣の討伐をしてほしいんですよ」
「ん-、わかった。特にやることもないし、とりあえずは仕事をしないといけないし」
「ほんとですか! ありがとうございます。じゃあ、さっそく仕事に出たいのですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫。あと、そんな丁寧に話さなくてもいいよ。戦闘の時には時間がかかるし」
「そう? わかったわ。こんな感じで話すことにするわ」
話し方が変わると、態度も多少変わった。それが彼女の気を遣わない態度なのだろう。メートもその方が、共に行動しやすいと思った。多少フランクである方が、話もしやすいし、心の距離も多少は縮まっているだろう。
そして、二人と共に行動することをアカリに伝えて、建物から出た。アカリにその話をしているときには、ララルトが他に何か話しているようだったが、その会話もすぐに終わって、彼女も建物の外に出てきた。
「じゃあ、いきましょ」
ガドではなく、ララルトを先頭にして、村の出口に向かっていく。村の広場を中心と考えると、その北側の出口から砂漠に踏み入る。その位置から見える砂漠の上には魔獣の一体もいない。それに付いてララルトに訊けば、既に他の魔獣討伐隊が毎日、そこら辺の魔獣を討伐しているため、村の周りにはほとんど魔獣が出現することはないようだ。村から少し離れなければ、魔獣は見えないらしい。とはいっても、彼がこの砂漠で見たことがあるのは、巨大な蛇というか、大きな口を持ったミミズのようなものだけだ。それ以外の魔獣もおそらくいるのかもしれない。
三人は会話もなく、砂漠を進んでいく。なぜか、魔法使いのララルトが戦闘を歩いて、その後ろにガドが付いていき、その横にメートがいた。メートも歩きながら辺りを見回していたが、魔獣はまだ見つけられていない。ガドもララルトも周りを警戒しているようだが、その先に魔獣は見つけていないのだろう。その証拠に緊張感だけが高まって、未だに戦闘は始まっていない。
さらに砂漠を進んでいき、後ろを振り返っても村が小さくなってきていた。村が見えなくなれば、この砂漠では方向もわからなくなりそうだが、二人は大丈夫なのだろうか。そんな疑問が浮かぶが、そういうときには二人を頼らざるを得ないだろう。
「止まって」
先頭を行くララルトが、三人の正面を指さしていた。彼女が示すその先には何かがいた。彼の目では何かがいるというようにしか見えないが、二人はそれが何か見えているようだ。二人の反応からするに、それはおそらく魔獣なのだろう。ララルトを後ろにしてガドが前に出る。ガドは、身長の二倍以上ある剣を鞘から抜いて、背中に背負っていた彼の体の全てが隠れそうなほどの大きい盾も装備する。正面から見れば、ガドの半身も見えないくらいのもので、かなり重そうに見える。ララルトはその後ろで待機する。そんな二人をメートは見るだけ見て、自分が何をすればいいのかなんてことは一つもわからなかった。そうしている間にも、正面にいた何かが、三人に近づいてきているのが見えた。その離れた距離でも相手がこちらを発見していることに驚いていたが、二人にとってはいつものことらしく、落ち着いていた。とりあえず、メートもガドの後ろに移動して、その戦闘を見守ることにした。




