メート、黄砂の村へ 2
背丈の小さな女性についていき、案内された先には建物があった。ドアも大きく、一人が済むような家ではなく、何かの施設に見える。
「ここよ」
彼女はメートの方に振り返って、そう言った。彼女はそのままドアを開けて中に入っていく。彼もドアを押して、中に入った。中に入ると、彼はそこが冒険者ギルドのような見た目であることに驚いた。穏やかな森の村には、そういうものは一つもなかったのだ。ファンタジー物語での代名詞の一つとも思えるようなギルドの中を見ることが出来て、彼は目を輝かせて建物の中を見渡していた。
彼がそうしている間に、女性は建物の中にいた一人に声をかけていた。タブレットのような現代的な端末を持った女性であった。その女性に事情を説明している声が多少聞こえてくるが、あまりいい印象は持たれていないらしい。それも当然なことかもしれないと思いながら、楽観的に考えていた。
「お前、ララルトと一緒に入ってきたよな。何者なんだ?」
彼がギルドの中を珍しそうに見ていると、かれの横から背丈の低い男が声をかけてきた。その男性はメートに好奇の視線を向けている。どうにもその視線を受け続けるのはあまりいい気分ではないだろう。しかし、メートは特に彼を引き離すようなこともなく、彼の方へと視線を移した。
「俺は旅人だよ。この狭間を見て回ろうと思ってるんだよ」
「へぇ、じゃあ、それなりに強いってことだよな? ガドと戦ってよ」
目の前の男性は少年のように目を輝かせて、腰に下げている剣に手をかけた。彼の背丈には見合わないほどの剣で、剣の鞘が地面につかないように、地面と平行になるように止めてある。そして、背中にはその剣とセットであろうというほどの大きな盾も背負っている。もし、どちらも同時に使って戦闘するというのなら、 かなり動きにくいだろうという印象は受けるが、それでも戦えているのだから、それが彼の戦闘スタイルということになるのだろう。メートはそんな彼が戦う姿を見てみたいと思ったが、ここで戦いを引き受けて後で問題になると困るのは自分だと思い、戦いを断ろうとしたところで、近くにメートをこの場所に連れてきた女性が戻ってきた。彼女の後ろには端末を持った女性もいる。
「ガド、話すはいいけど、直ぐ戦いを挑まないの。それにガドが戦って勝てる相手じゃないよ、多分」
「すみません。旅人とのことでしたが、少し話をさせてください。少しここ最近色々ありまして……。ああ、私はアカリと言います。では、こちらに」
背の低い女性がガトと呼ばれた背丈の小さな男性の肩に手を当てて引き下がらせていた。そして、メートの前には端末を持った女性、アカリと名乗る人物が話しかけていた。彼女の話しぶりからするに、どうやらこの村に来るタイミングが悪かったらしい。少し話を、と言われて長時間拘束される可能性もある。ここで彼女の言うことを聞かずに、この町を出ることもできるだろうが、彼はそこまで余裕のない人間ではなかった。灯りは素直に、アカリの後ろについていく。建物の奥にある部屋の一つに案内された。その部屋には壁際にロッカーのようなものが並んでいる。その部屋の中央には休憩所のような机とテーブルだけが置かれていた。メートは奥側に座らされて、彼女が入り口に近い方に座った。彼にとっては座る場所など気にもしていなかったが、彼を逃がさないように奥に座らせたのだ。
「では、あなたは旅人だと言いましたが、旅の目的はありますか」
「旅の目的……。この狭間を守りたくて、悪い奴がいないかどうかを見て回ろうと思って旅してるんだ。何もなければそれでいいし、と思ってね」
「そうですか」
アカリはメートの言葉を聞くとそれだけ言葉を返して、端末を操作していた。メートからは端末で何をしているのかは見えないが、この会話を記録しているのか、メモをしているのかと考えていた。
「この狭間で何か悪いことが起きようとしているようなことを感知している、ということですか?」
「ああ、まぁそういうことになるのかな。俺は穏やかな森の村って村の近くに落ちたんだが、そこで巨大な魔獣と戦ったんだ。その巨大な魔獣を呼び寄せたやつがいて、そいつが悪い奴だと思うんだけど。で、そいつの手掛かりを探しているのが現状だな」
「妙に具体的ですね……」
アカリは再び、端末を操作する。アカリの言葉にはどこか、メートを疑っているようなニュアンスを感じていた。そうは思ったが、ここでそんなことを言って心証が悪くなるのを避けるために、特に何も言わずに次の質問を待っていた。




