メート、黄砂の村へ 1
自身の話も聞かない女性との戦闘の後、女性は颯爽と去っていたが、このまま真っすぐ北上すれば、村があるという情報だけは得ていたため、メートは黄色い砂の砂漠を歩いていく。彼の背後にあった砂の柱も、込められた魔気がなくなって砂漠の中に戻っていく。彼はそんなことも構わずに、北上していく。
しばらく、歩いていくと彼の視界の中に建物がいくつかある場所が見えてきた。砂漠の中にある水が溜まっている場所がどうやら中心になっているということが村の外からも見えていた。オアシスと言えばいいのだろうか。彼はそのまま村の方へと進んでいく。村に近づけば、周りには魔獣がいないことに気が付いていた。この村でも何かしらの対策をしているのかもしれない。彼は特に警戒することもなく、村の中に入っていった。村の外側では特に人が出ているような様子がないが、村の中央の辺りからはかなりにぎわっている声が聞こえてきた。穏やかな森の村とは違い、かなり活気のある様子が村の入り口からでも感じ取れた。
村の広場の方へと移動すれば、そこはオアシスを中心に物を売っている者たちがそこにいた。旅人の彼が村の中に入って生きても、注目することもなかった。彼は巻いていた布も必要ないだろうと袋の中に戻した。まずは飲み水の確保と思い、彼は水を売っている店を探す。その店はすぐに見つかり、そこで水を買おうと思ったのだが、まず金銭は少しももっていないことに気が付いた。そもそも、穏やかな森の村では、金銭を使った売買は行われていなかったのだ。この場所では商人がいて、その売買の方法もまだ知らない。何か金と同じような用途の物があるのかもわからないが、これだけ露店が出ていれば、物々交換だとは思えなかった。そして、露店を見て回れば、客は何か石でできカードのようなものを出していた。彼はそんなものは持っていないため、買い物はできないのだろう。どこかで買い物ができるように、この村で金銭になっている物をもらわなくてはいけないだろう。おそらく、労働の対価になるのだろうが、旅人に仕事を任せてもらえるかどうかはわからない。どこで稼げばいいのか、わからず彼は村の中をうろうろと回っていた。
「お前、この村の者じゃないですね。誰ですか」
彼の目の前に出てきたのは、水色の髪を腰のあたりまで伸ばした少女に見えた。髪の色と同じ色のローブを着ている。彼が少女だと思ったのは、彼女の背丈が彼の半分より少しだけ大きいくらいだったからだ。もし、人間以外の種族がいるとすれば、彼女も大人なのかもしれないとも考えていた。
「じろじろ見てどうしたんですか? 背が小さいって思ってます?」
「ああ、いや、そういう種族なのかなって思って」
「ララはこれでも、立派な人間の大人の女性です。文句がありますか?」
少し圧を感じるものの、明らかに小さな背丈に、話し方は明らかに少女のようであった。彼は何も考えずに思ったことを口にしてしまったことを失敗したと思った。
「いや、そういうんじゃないんだ。もしかしたら別種族の人に会えたかもって思っただけだから。君が小さいことを馬鹿にしているわけじゃないんだよ」
「……へぇー、それならそれでいいですけど。それはそれとして、お兄さん、この村に何の用できたんです?」
細かい話は分からないが、外から来た者に対してかなり警戒しているような雰囲気を感じていた。この村はよそ者には厳しい村なのかもしれない。穏やかな村のように、何か自分がここにいてもいいと思ってもらえるような利点がなければ、この村からはすぐに追い出されそうだ。
「いやぁ、この世界を旅してみようと思って、穏やかな森の村から出てきたんだ。草原の近くに砂漠あったからここまで来てみたんだけど」
「そうですか。それはわかりました。ですが、あなたが怪しいことにはかわりありません。ですので、連行させてもらいます。抵抗するなら、ララにも強硬手段を使わざるを得ないので、素直についてきてほしいです」
「もちろん、抵抗する気なんてないよ。それにここで逃げれば、怪しまれ続けるだけだろ? 素直についていくから、手荒にはしないでほしいかな」
相手が成人女性であっても、背丈のせいで、どうしてもクリスのような子供を相手にしているような気分になってしまって、どうにも目の前の相手に対して強くは出れない。そもそも、この村で暴れようということは考えていないが、目の前の女性が小さくなければ、彼はその場からすぐに逃げ出していただろう。長時間、拘束されるかもしれないと思えば、逃げて村から出た方が旅も先に進めると考えられる。
彼は大人しく、先を歩く背丈の小さい女性の後ろを素直についていった。




