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復讐のための旅 4

 メートが空中に柱造り続けていれば、村につくのが先だろうが、アスターのマジックガンの狙いの方が正確で、メートの足場の真下を銃弾が爆破した。彼は砂の柱の足場がなくなって落下していた。彼は地面に落下する前に砂の柱を伸ばして自身の落下の衝撃を零にして地面に降り立つ。それと同時に既にアスターが近くにいて、彼の胴体を正確に狙って射撃してくる。彼は砂の壁を作り出して、魔法の銃弾を全て防いでいた。


 アスターは射撃しながら、彼に近づいてきていて、彼の作り出した砂の壁も簡単に超えてくる。そして、上からマジックガンを振り下ろしてきた。銃を射撃以外の使い方をされて、彼は驚いて反応が遅れる。何とか片手で銃を弾いて、後ろに跳んで砂の壁を動かして、彼女の体を押しつぶすように倒した。だが、彼女はコートを脱ぎ捨てて、砂の中から抜け出していた。今度は銃ではなく、勢いの乗った蹴りが彼に向かっていく。メートはその打撃を回避しながら、片手に小さな盾を作り出す。どこから出てきたのかわからないが、それでも彼女のやることは変わらない。いや、どんな状況であっても、彼女はできることなど一つしかないのだ。この世界に来る前から、それだけは決まっていた。


 彼女は蹴りと同時に拳銃を振るって、彼に連撃を繰り出す。彼は盾で全てを防いでいた。彼からの反撃は一つもなく、彼女は少し苛ついていた。反撃もせずに、無力化して戦闘を終わらせようとしているのが、どうしても甘い奴だと感じてしまう。


「なぜ、攻撃してこない。襲われているんだぞ。この殺気がわからないのか」


「いや、そりゃ、これだけ本気で攻撃されればわかるけど、俺にはお前を殺す理由がないんだ。殺したくもないしな」


 アスターの殺気と攻撃を浴びなあらも、平然と彼はそう答える。殺さなければ殺されると分かっていると言っているのに、本当に自身を無力化するだけで戦闘を終わらせようとしているのだ。その様子に余計にいら立つ。この世界に落ちてくるものの境遇は同じであるはずがないが、彼と自分とでここまで違うものかと思ってしまい、それが彼を攻撃するためのエネルギーになってしまっている。要するに、ただの八つ当たりという面も含まれた攻撃である。彼はそれを理解しているのか、いないのか、ただただ攻撃を防ぐだけで反撃する様子もない。


「いい加減、戦うのもやめてほしいんだけど。それも無理そうだよね」


 彼の言葉には返答もせず、アスターは攻撃を続ける。下から攻めても、上から攻めても、盾のうちがわにはいりこもうとしても、完全に防がれている。彼女も目の前の男よりも自分が弱いことを理解し始めていた。戦闘奴隷としての経験値が、明らかにメートと名乗る男に勝てないと告げているのだ。これだけせめても全く攻撃が通じない場合にはどうしても逃げるという選択を取っていたのだ。死ぬと思えるほどの罰を受けていたが、死んではいない。死ぬよりも生きることを選択し続けていた彼女には、メートが相当な強者で、逃げるべきだと経験と本能が告げてきていた。


 そんな心の警戒音を無視して戦い続けるというのは相当な負担になる。アスターは攻撃を一旦やめて、メートから離れた。メートは反撃するわけでもなく、魔法を使って追撃してくるわけでもなく、ただそこに立っているだけだった。彼女はマジックガンの銃口を彼に向けたまま睨む。


「なんだよ。そんなに睨むなよ。攻撃されたから、対処してただけだ」


 そんな理由で睨んでいたわけではない。目の前の彼の力を借りることが出来れば、バガンドが率いるクロウ盗賊団とも戦いやすくなるだろう。アスターの目的はバガンドを殺すことであり、クロウ盗賊団の全員に止めを刺すことではない。露払いを彼に頼むのは最良の手になるだろう。そうは考えるものの、彼に協力してもらえる理由はないだろう。やはり、彼女にとってここでの最良の手は逃げることだった。彼女は舌打ちしながら、砂に埋もれたコートを拾うと、彼の進む方向とは反対方向に走って逃げていく。


「あ、おいっ!」


 背後から彼の呼び止める声が聞こえてきたが、彼女はそのまま逃げることにした。砂に足を取られながら、コートを着て彼のいる場所からできる限り離れようと全力で走る。そして、しばらくの間ランニングのような速度で走り、はぁと息を吐いて息を整える。まさか、自分が逃げるようなことになる存在がこの世界にいるとは思わなかった。再び会える可能性は低いかもしれないが、次に会った時にはクロウ盗賊団の壊滅を手伝ってもらえるように話してみようと考えるも、その手段は一つも思いつかない。結局は、彼女にできることは戦闘だけなのだから。

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