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復讐のための旅 2

 村の広場にいたのは、ペースとアカリであった。ペースはアカリに支えられているのを見れば、無理してここまで来たのだろう。アスターはなぜ二人がここにいるのかはわからない。広場を通るのが一番、南の出入り口に到達するのに一番近い道のりになる。それに敵ではない二人の横を抜けるのはわけないことだろう。アスターは自分のために二人がそこにいるとは微塵も思っていなかった。彼女は二人がなぜそこにいるのかという疑問を簡単に忘れるくらいには村を出るという目標の方が大きい。彼女は二人に声をかけることもなく、横を通り過ぎていこうと考えていた。


「姐さん。マジで、この村出るんですか? 何があったのかわかりませんが、うち、寂しいです」


 アスターが二人の横を通り過ぎる前に、ペースが先に声を出して彼女を引き留めていた。彼女は足を止めて、自分に用があることのだとようやく理解していた。こんな時間にわざわざ自分を待っていたということになる。彼女はそこまでの繋がりがあるのかという疑問はあれど、彼女の言葉に返事をした。


「ああ、出るよ。目標を殺しに行く」


「今じゃないと駄目ですか。うちも一緒に行けるくらい強くなるから、待ってて欲しいんです。今は、きっと足手まといだから、姐さんのお荷物にはなりたくないんです」


「待てないな。用がそれだけなら、もう行く」


 アスターはすぐにでも村を出たくて、彼女のことなど少しも考えず、彼女の横を通り過ぎようとしていた。だが、アカリに支えられていた彼女はアカリから離れて、ふらりと体を揺らしながら、彼女のコートの裾を握った。アスターはペースの方を見た。彼女は目に涙を貯めていた。それでも、アスターは既にペースのことなどどうでもよかった。今の彼女にとってバガンドを見つけて殺す以外のことはほとんどどうでもよかった。バンガドさえ殺せれば、自分の命さえも必要ないと考えているほどだ。その思考の中で、他人のことを考える余裕などは少しもなかった。


「邪魔をするな」


 アスターは裾を掴んでいた彼女の手を振り払うと、何事もなかったかのように歩き出した。


「アスターさん。どうして、どうしちゃったんですか。なんか変ですよ。そんな、乱暴な人じゃなかったはずです。アスターさんっ」


 アカリの声を彼女は無視した。聞こえてはいたが、反応するべきあ相手とも思っていなかった。彼女は止まらずに、先に進んでいく。ペースが後ろですすり泣いていることが聞こえているはずだが、アスターはそれでも止まることはなく、先に進んでいく。




「アスターさん。どうしちゃったんでしょう」


「姐さんには、うちらの知らない過去があるんだ、きっと。あの誘拐した二人組が何か言ったいていたのかもしれない。この世界に落ちてくる前のことはお互いに何も知らないから。もっと、姐さんと話していれば過去のことも知れたかもしれないけど」


 震える声でペースは、一人歩くアスターの背を見送る。今の自分が彼女に何を言っても、届かないことはわかっていた。この広場に来る前からそれくらいはわかっていたのだ。それでも、彼女がこの村を出ていく前に、すがってみたかった。それだけだった。彼女との絆は決して、弱いものではないと今でも彼女は信じている。


 彼女は鼻をすすり、涙を拭いて立ち上がる。まだしっかりと立つことが出来ずにふらついた彼女をアカリが支えていた。


「姐さんがまた帰ってきても迎られるように、この村を守ろう。きっと、姐さんがこの村に帰ってくるときはボロボロかもしれないから。すぐに休めるように家も残しておこう。アカリさん、いいでしょ」


「……それでいいんですか? 私は構いませんけど」


 それでいいじゃない。それがいいのだ。彼女の帰る場所は一番、絆の深い自分が守る。ペースはあれだけ無関心なことを言われたのだが、彼女のことをまだ信じていた。それを外から見ていたアカリからすれば、その信頼も異常に見える。だが、彼女が決めたことに反対して、行動を強制するなんて権利は自分にはないことは当然理解している。討伐隊の者たちはお互いにそこまで深い仲ではないはずなのだ。そこまで信頼する理由もわからない。彼女が討伐隊のリーダーを信頼しているのは、同じ世界の出身だからだ。そうでないはずの、二人がそこまで仲が良いというのは信じられなかった。


 アカリはペースを支えながら、討伐隊の拠点に戻っていく。既にアスターの姿は見えない。広場からすたすた、後ろも振り返らずに歩いていったのだから、既に村の出入り口の辺りまで言っているかもしれない。そんなことを思いながら、ペースはアスターと同じくらいに強くなるという決意をしていた。

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