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行方不明の先 4

「がっ」


 相手は天井から落下して、床に落下していた。そして、相手の口からそんな音が聞こえる。背中から落ちたようには見えなかったが、そんな音が聞こえた。相手の姿を見れば、なぜそんな音を出したのかはすぐにわかった。


 相手は綺麗に着地していた。足の裏を床につけて、片ひざを折り片膝を立てて、本人に衝撃が来ないように着地することが出来ていた。しかし、立てた膝が自身の顎の辺りに勢いよく当たり、そのせいで口からそんな音ができのだ。そして、天井付近から落下して着地した衝撃の一部を顎で受けた相手の脳はその衝撃に揺れて、焦点が合わなくなる。何とか立ち上がろうとするも、相手はうまく立ち上がるとことができない。


 リーダーは相手がこんな自滅みたいな形で決着がつくとは思っていなかったため、今の状況に面食らっていた。だが、アスターはただ冷静にレーザーモードのマジックガンの銃口を相手の額に合わせていた。その状態で彼に近づいていく。相手はすぐには立ち直れず、ずっと立てないままでもがいていた。そんな相手の視界にも彼女が近づいてくることくらいは理解できていた。ふらふらしている体のまま、アスターに届くように声を上げた。


「俺を殺してみろ! いいか、俺の後ろについているボスが出てくるぞ! お前らは知らないかもしれないが、俺たちのボスがこの世界に落ちてきてるはずなんだよ! 俺たちもボスに会ったんだ! 俺が死ねば、ボスがお前らを襲いに来るはずなんだよ! いいか、ここで俺を見逃せば、ボスに口利きしてやってもいいって言ってるんだ。馬鹿じゃないならわかるだろっ?」


 自身が死にそうになっていることくらいは理解できているようで、必死に近くにいる彼女に殺さないでと懇願している。アスターには相手を見逃すという選択肢は既にない。しかし、相手の言うボスという人物を聞き逃すことはできなかった。


「ボス?」


「あ、ああ、そうだボスだ、ボス! なぁ、この町は俺の縄張りにして守ってやるからよ、ボスの脅威からよ、いいだろ? 俺を生かしておけばそれだけ得にしてやるからよ!」


「だから何だ。お前らのボスなんて大した能力もないのだろう。お前たちより少し強いくらいの奴に怯えるわけがない」


「何言ってんだ。俺たちよりも強いんだよっ! そうだ、なぁ、落ちてきたならバガンドって名前知らないか? その人なんだよ、俺たちのボス。俺たちよりも指名手配の金額がでかいんだ。な、バガンドって知らなくてもクロウ盗賊団って有名な盗賊団のボスなんだよ。知ってるならわかるだろ?」


「ああ、よく知ってるよ」


「なら――」


 彼女は相手の言葉の続きを言わせずに、その額をレーザーで打ち抜いた。その距離で歪んだ視界でその攻撃を回避できるはずもなく、相手の体の疲労もある中で、その至近距離の攻撃は確実に相手の額を捕らえていた。


「そいつの名ならよく知ってる。絶対に許せないクズだからな」


 その呟きは相手が生きていれば聞き取れただろうが、絶命した相手にはその言葉は聞こえていないだろう。他の者にもその言葉が聞こえているはずもない。彼女はレーザーモードだったマジックガンを元に戻していた。目の前に転がる相手の死体の顔面に蹴りをかまして、体を真横にした。恨みを込めた一撃。死んでいる相手に抵抗する力などあるはずもなく、地面に転がり軽く弾んで地面に横たわっていた。


「これで終わり、でいいのか?」


 相手が死んでから、リーダーが彼女の肩に手を乗せてそう訊いてきた。アスターはそれに軽く頷いていた。彼女はマジックガンを太もものホルスターにしまって拠点内の椅子に座り込んだ。今日で何度目かの深いため息が出ていく。おそらく、これでこの町で誘拐事件もこの町では怒らなくなるだろう。誘拐されていたものも報告されている一人の子供だけだった。リーダーが子供を元の家に送り届けている間は拠点の中も静かだった。アカリがいつの間にはペースとアカリを守っていた半透明の球体はなくなっていて、アカリはペースの様子を見て端末を操作していた。おそらく、ペースはもう大丈夫だろう。


 最後に相手が言っていたことが、どうしても頭の中から消えない。あの男はバガンド、クロウ盗賊団のバガンドと言っていた。彼女がその名をよく知る理由も簡単だ。彼女が戦闘奴隷として命令を受けていたのが、バガンドなのだから。商人の小隊を襲ったり、町で金を持つ人間を殺したり、彼女が戦闘奴隷の間の命令は全て、その男から受けていたものだ。だから、知らないはずがない。そして、命令を果たせなかった戦闘奴隷は殺されていた。暴力の果てにバガンドに飽きられて殺処分。戦闘奴隷の他の仲間もバガンドに何人も殺されたのだ。それを許せるはずがない。何とか逃げ出したのは、バガンドを殺すためだ。その相手が今、この世界にいるというのだ。復讐がこの世界で果たせるというのなら、今行動しなければいけないだろう。この村の近くにいるのか、それとも別の場所にいるのか。だが、バガンドはこういった隠れにくい場所にはいない気がする。つまりは、隠れやすい場所を探さなければいけないだろう。この町を置いても、彼女は旅に出るべきだと考えていた。

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